ゴムと水とボール/片付け/みくじ

ぶに。

癒しグッズとやらを貰ったので、握ってみた。

手のひらに収まるくらいのそれは、透明なゴムの皮の中に、水と黄色い小さなスーパーボールが入っていた。

殻のない卵みたいだ。

握ると、そこにあった水が飛び出してゴムを押し風船のように伸びる。

ブーッ、ブーッ。

ローテーブルの上のスマートフォンが振動して、授業中にサイレントにしたままだったのを思い出した。

生卵のような柔らかいそれをスマートフォンの隣に置き、スマートフォンを手に取り通話ボタンを押す。

「もしもし」

電話口で勢い良く飛び出す言葉が左の耳に抜けていく。というより右耳に入っていないかもしれない。

「うん。そうだね。」

辛うじて相づちを打つけど、何を言われているのか聞こえない。聞き取れない。
そこで話されているのはよく知った言葉なのに、まるで昼休み後の英語のリスニングのように何を言っているのか分からない。

頭がぐらぐらするので寝そべってみた。

机でぐったりしていた卵をつまみ上げ、右目の上にのせる。ゴム越しにやんわり冷たさが伝わる。

それをやっぱりつまみ上げ、電気に翳す。
透明な白身では電気の眩しさから目を守りきれない。

ゆらり。

摘んだまま揺らす。柔らかい白身と黄身は混ざらずに振り回される。
時折電気の中心に黄身がかかって眩しさが軽減されるけど、次の瞬間には真っ白な光が目に突き刺さる。

ゆら、ゆら。

気がつくと耳元の声がどんどん大きくなっていて、耳が痛くて右手を耳から少し遠ざける。

ゆーら、ゆーらゆら。

もしこれがブランコなら乗っている子どもは怪我をするくらいの勢いになっている。揺らす度に遠心力で黄身が外側に飛んでいく。
手を大きく動かしている訳では無いけど、意図して揺らしてはいるのだ。フラフープのように。

バチッ。ビシャッ。

顔が濡れて、破裂音が。黄色いスーパーボールはラグの上で跳ねることはなかった。
手元を見ると透明なゴムがビロビロに破れ。

「ごめん、ちょっとコップ倒しちゃたから切るね。」

そう言って通話を切って、起き上がるとタオルと雑巾をしまった棚に手を掛けた。

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「ゴムと水とボール/片付け/みくじ」への2件のフィードバック

  1. 日常を切り取った感じがしていいですね。こんななんでもない日常をよくここまで広げて書けるなあと思います。

  2. 全く同じもの持ってて、しかも遊んでたら壊しちゃったところまで同じで笑いました。あれ無限に触ってられますよね。
    細かい改行と擬音などの描写のおかげで、日常4コマみたいにすらすら読める感じがいいと思います。

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