海底にて/片付け/あおいろ

透き通るようなコバルトブルーの海を見上げながら、ぼくはぼんやりときらきら降ってくるおひさまの光を浴びていた。

 

なんてお天気のいい日。こんな日は、どんな作業でもすいすいこなせる気がするなぁ。だから、いつもつい後回しにしてしまっていたことを、終わらせてしまおう……!
たとえば、庭のわかめのお手入れとか。たとえば、遠くの友達にお手紙を書くとか。

……そうだ、おうちの片づけなんてどうかな。最近、少しちらかってきたし。おうちがすっきりしたら、庭を手入れしたりお手紙かいたりするのも楽しくなっちゃうと思うんだ。
そうだそうだ、そうしよう。

ぼくはううーーーーーんと伸びをすると、さっそく片付けに取りかかることにした。 

 

 

さてと。どこから手をつけようかな。なんだかたくさん物が落ちている。

とりあえず、ぺっとぼとるとかびにーる袋とか、いつも落ちているものをどかし始める。
片づけはちょっとめんどうだけど、嫌いじゃないんだ。きらきら光るガラスのかけらとか、おしゃれなデザインの空きびんとか、素敵なものもたくさん見つかるからね。

うへぇ。でも最近さぼってたから、いつもより量が多いなぁ……。

 

 

そんな中で、ちょっといつもと違うものを見つけた。

なんだろう。黒くて小さくて四角い、板みたいなもの。だけどただの板じゃなくて、ボタンがついてたりして、何かできそうな感じに見える。

ぼくが考えをめぐらしていたら、ちょうど物知りのうみがめさんが通りかかった。

「あっ、うみがめさーん?」

「おや、くじらくん。片付けかい?えらいねぇ」

「そうなんです。それで……これって、なんですか?」

「あぁ」

うみがめさんは目を細めた。

「……それはスマホっていうものだよ。」

「すまほ?」

「海の上では、それで友達と繋がるらしい」

「つながる……?」

「声を聞いたり、文字でお喋りしたり」

「ふうん……」

「それだけじゃない。カメラみたいに写真を撮ったり音楽や動画を流したり、インターネットっていうもので世界中の人とそれらを共有したりお話したりして、繋がることもできるんだ。」

「……???…………ふうん?」

ぼくは、そのスマホを気がすむまで眺めたり振ったりたたいたりした。スマホはうんともすんとも言わなかった。

 

「…………じゃあ」

ぼくは、うみがめさんの方を見る。

「これはぼくには要らないものですね」

「ああ、そうかい」

「ぼくには、楽しいこととか悲しいこととかを共有したい友達がいるんですけど」

「いるかくん、かい?」

そうです!とぼくはにっこり笑う。

「もしぼくがいるかくんとお話したいと思ったら、直接会いに行けばいいし。文字のやりとりなら、お手紙書けばいい。
それと、綺麗な景色はその場で一緒に見たいって思っちゃう。歌も、一緒に歌っておどった方が、何十倍も楽しくないですか?」

「海の上のニンゲンは、我々ほど自由には動くことができないんだよ。みんな、時間と場所に縛られてるんだ」

「なんだか大変そうだなぁ」

「それがニンゲンってものさ」

ふうん、とぼくは海を見上げる。

 

ぼくは海の上は見たこと無いけれど、そんなにきゅうくつなのかな。
同じ地球に生きてるのに。 同じ世界に生きてるのに。

 

 

「……なんだかぼく、いるかくんに会いたくなってきちゃいました」

「はっはっは。そうかいそうかい」

「今からいるかくんに会いに行ってきますね」

「いってらっしゃい…………おや?」

うみうがめさんの見た方向に目を向けると、ちょっと大きな魚みたいな生き物がこっちへやってくるのが見えた。


「……おーい!おーい!」

「あっ、いるかくんだ!!おーい!!!」

 

ぼくは持っていたスマホを放り出すと、いるかくんのもとへ全力で泳ぎ始めた。

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「海底にて/片付け/あおいろ」への4件のフィードバック

  1. 個人的に、物知りキャラがうみがめさんなのが好きです。ほんわかした雰囲気の文章なのに読んでいてけっこう刺さりました。人間の世界は本当に窮屈ですよね。内容的にもまとまった文章で、読みやすかったです。

  2. 海の中に話を持ってったのはいいなぁと思いました。のんびりしてていいですね。強いていうならくじらくんの使うカタカナとひらがなの言葉の線引きがいまいちわからなかったのですが何か意図があったのでしょうか…?

  3. 役の精神年齢と文体が一致してない気がする。どちらかと言えば児童文学みたいに映るから、それならば全てが平仮名でも大丈夫。でも全てが平仮名の文章でやるなら、それでも人を飽きさせないだけの表現力やそれなりの扱う言葉を選ぶ必要が。

    大変だー

  4. 児童文学の印象を受けた。
    児童文学なら、ばたこさんのおっしゃるように、ひらがなでも大丈夫!と思うのだが、…の多さが気になった。なんとなーく、絵本って…ではない表現を好む気がする。「、」をうまく使うというか。
    ほんわかしたひらがなの世界は、飽きてしまいがちなので、緩急をつけていけるといいかなあ。

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