私と片付けと完璧主義者。/片付け/いせ

『自分の部屋くらいちゃんときれいにしてろよ!!』

 …突拍子もなくヤツの怒声が私の部屋に響く。びっくりするなぁもう。

でもおかしいな、ここのどこが問題なんだ?布団はたたんでちゃんと押し入れに収納されてるし、今まさに洗濯物を終えてくつろがんとしているのに。その思いを率直に伝えてみる。

『んんー?わりと片付いてるよ?』

私のいかにもめんどくさそうな物言いが気にくわなかったのだろう、彼はわざとらしくため息をついてから口を開いた。

 

『・・・きたねぇよ。見えるだろ?ホラ、髪の毛いっぱい落ちてるし、角にホコリがたまってこの部屋の不快感を増長させてる。ああ、それにここも―』

 

彼の説教はまだまだ続きそうだ。まぁ、いつものことだけれど。適当に聞き流そう。ああでも、そうか。また一つあることに気がついた。今、彼と私の意見が食い違ってる理由。

私が言う〈きれい〉は、とりあえずみてくれに問題が無いことだ。だから、さっき『片付いてる。』と言ったのは私の基準から見れば、決して嘘ではないのだ。

でも彼は違う。彼は片付けというよりは掃除のことを言っている。整理整頓は当たり前で、空気とか、菌とか、なんだかもっとミクロで細かい部分の〈きれい〉を言っているのだ。

…いやいや高度すぎる。私(たち)にはまだ早いって。

 

だから、

 

『いやぁ、そんなこと言われてももう疲れたよ。いいんじゃない?この辺で。布団や洗濯物の整頓でさえ、あなたのここ最近の催促でやっとまともにするようになったんだから。今日は許してあげてよ。』

 

私がこう言うと、話を遮られた彼は不満げな顔をしながらも、もやに巻かれて消えていく。これもいつも通り。

 

そりゃそうだ。最近は専らこの体の与党は私なのだ。

 

彼と私は二極対立、でも一心同体。外界からの影響をともに受けながら互いに干渉し合い、作用し合って同じ体(脳?)に存在している。

私たちには明確な線引きと名前はない。私が感情とか本能っていうなら、彼は理性とか意思。私が不完璧主義なら、彼は完璧主義。あくまで、〈寄り〉ってことだけど。

私たちはそれぞれがシーソーのイスに座って揺れながら、また何かに揺らされながら、この体を動かしている。

 

基本的に彼が口に出すことは社会的に正しいとされていることが多い。たとえば、さっきの『ちゃんと掃除しろー!』とか、他には『課題やれー!』とか。そりゃもう日常的に。彼にすべてこの体を任せたら、それはそれは真っ当な素晴らしい人間になれるんだろうな、って思ったこともあった。

 

でも、実際には彼は何でも〈すぎる〉きらいがある。・・・完璧主義者だから際限が無いのだ。彼の完璧な理想は、不完璧な人間の体ではいつまでたっても達成されない。それでも理想への欲求はじわりじわりと自分自身を追い詰め、その思いは罪悪感や不安感となって確実に私たちの大事な体力を奪っていく。やがて心と体のエネルギーが枯渇し、気づいたときには生きるってハードルがびっくりするくらい高くなってた・・・。なーんて、よくある話。

 

だから、私が必要だ。怠惰で完璧にはできないけれど、これからも生きていくために理想と現実のバランスをとってる。つまり、自分を許して、楽しいと感じる方へ持ってく。

 

そんなわけで、今は比較的私がのびのび権力を行使している。

・・・けれど、どちらにせよやっぱり一党独裁はまずいかな、と思い始める。うん。そろそろ彼の意見を採用しなきゃ別ベクトルで駄目になるね。よぉし、さあ重い腰を上げて。

 

「掃除機でもかけるかなぁ。」

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「私と片付けと完璧主義者。/片付け/いせ」への3件のフィードバック

  1. 恋人ってこういうときでも断らずに付き合い続けるのでしょうかね?気になります。
    難しい言葉をうまく使おうと努力しているような感じが見受けられます。「一党独裁」とかは好きです。ただ、全体的にちょっと硬くて不自然かなって思う部分もあります。そこらへんの兼ね合いは実践しかないと思うので、回数重ねる中で改善できればいいんじゃないかと思います。

  2. 両極端な部分ってありますよね。あるいはそんなこと知ってるけどやっていない、という感覚。未だ折り合いをつけられずにいます。もしかして家族の誰か、潔癖でしたか?
    そんなこと全部知ってる知ってるけど知ってるから、という思いは得てしてマイナスな方向に働きがちですがうまく消化しているなぁと感じられました。
    個人的に小説が好きなので物語要素が強めの今回は楽しく読みました。エッセイの時から文章うまいですよね。

  3. 二重人格??と思ったら前のコメントで恋人という表記があったので、そっちもあるのか、と思ったんですけど、やっぱ同じ脳に住んでるし、二重人格という論で私は行きますね。あ、でも誰にでもある二面性(多面性)をキャラ化したというのもありえそう。
    与党とか、雰囲気に合ってない言葉が多い印象を受けました。前コメントと被りましたが。難しい言葉は、やはりそれに合う雰囲気で使うべきかな、と。今回のように全体的に和やかな、日常的シーンにはそぐわないと思います。とはいえ私もたまに背伸びをしたくなって難しい言葉羅列してやるぜ精神になる時があるので、気持ちは分からなくもないです!

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