箒/片付け/なべしま

うるさい出て行け、の怒号と共に箒で戸外へ掃き出された私は何を隠そうタマシイである。どこの決まりか知らないが、箒というものは霊の類いを外に追いやる力があるらしい。そんなことしらん、と思うが事実その摩訶不思議な力により掃き出されてしまったのが運の尽きであった。何も祟ろう縊り殺そう、そんなことは思ってはいないが心というものは伝わらぬもの。げに言葉とは難しい霊になってさえも。この家に時代錯誤な箒なんぞが未だ文明の利器として栄華を極めていたことが運の尽きで、喧しさにうんざりしていた掃除機が恋しい。奴になら勝てた。

常に霊というものは人間には見つからぬもの、そして動物に感づかれるのは定型句であるが多聞に漏れず、私も一匹の猫に存在を許されていた。常時鼻先を路傍の石に擦り付け尋常でなく痒がるために、仮にノミと名付けて行動を共にすることにした。ノミの行動は広いものの、現在ある家に出入りしようと画策していた。家はじゃぎじゃぎ尖った鉄柵が巡らされ明らかに招かれざる闖入者に対し多分の警戒を露わにしていたが、ノミは五分の魂、蟷螂の斧、果敢にその家への干渉を諦めようとはしなかった。だが家人による実力行使、叩き出されてしまったのであった。

無情な人間どもだと扉を睨めつけると意外、見覚えのある戸板。よくよく観察してみればそれは我が家のよう。懐かしさのあまり窓から覗くと我が娘が低いぷうぷう笛のついた椅子に座り、おやつを食べている。何の因果で霊に成り果てたか、はたと気づいた。全治一ヶ月、入院中の我が身から娘愛しさに離れてしまったのであろう。くだらぬ理由だが娘は可愛い。ともあれ毎日院内を徘徊するのには飽き飽きしていた。許されたし。ノミはやれやれだと言いたげに踵を返して夜陰に姿を晦ました。ありがとうと敬礼するが、ノミは単に邪魔者をどうにかしたかったのかもしれない。

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「箒/片付け/なべしま」への2件のフィードバック

  1. 文章で気になるところがあるとすれば、最初の一文がちょっと詰め込みすぎ感があるところくらいでしょう。体言止めの使い方がうまくてリズムがいいです。
    言葉のレパートリーも、使い方も素晴らしいと思います。かなわないです。ただ一つ、「全治1ヶ月」というのは文字通りなのか、はたまた死ぬまでの期間なのか。僕は後者だと思い込みますが、それはそれで「死」があっけなさすぎる気がします。霊になるくらいであることを考えると尚更です。

  2. やっぱり言葉のセンスはさすがだなあ、と言わざるを得ません。私の辞書の中に存在しない表現があちこちにあってどうしたものか、読むのに手こずってしまったくらいです、それは確実に私の実力不足。
    入院している主人公から抜け出した魂ということは、冒頭部分は病院にて行われた一連ということでよろしいでしょうか?箒が時代錯誤と言われているということは、現代に近い時代ということでよろしいでしょうか?そういう細かい部分に疑問が残ってしまいました。うるさい出て行け、って何にいったのだろう、主人公に近づいた何か?もしかしてノミ?読解力本当にないもので、申し訳ないです。

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