いち高校教諭の苦心/大作戦/いせ

「さて、センター試験プレテストがいよいよ来週に迫っています!俺から言われるまでもなくちゃんと勉強してると思うが、気ぃ抜くなよ。ここまできたらやるしかないぞ。自分と教科担の先生を信じて、作戦立ててがんばれよ。」

クラス全体に声を届かせる。気を抜いてると心配と不安で顔がこわばるから、いかにも真剣そうな顔を作って言う。

もう11月後半、そろそろセンター本番まで50日をきろうとしている。担任している生徒は、目に見えて焦っているやつ、目が燃えてるやつ、目が死んでるやつ…それぞれが頑張っている。なかには俺の激励なんぞなんの腹の足しにもならんという風に、教科書を無心にめくっているやつもいる。                                                                 まぁ、なんだ。

「今日、放課後が面談最終日な。事前に決めた順番通り職員室来いよ。」

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「失礼しました…」

前の順番の子がなんとも頼りない表情で職員室から出てきた。大丈夫?と思わず声をかけたくなる。ま、あたしも人の心配する余裕なんて少しもないんだけどさ。

ガラリ。「失礼します。」

3年ってやたら面談が多い、プレテスト近いっつってたのに。目の前には若くて頼りない 担任の先生。いかにも真剣そうな顔をして彼は言う。

「お、お前で最後だな。どうですか!調子は。」

ええ、そりゃもうずっとローテンションです。これまでの面談であんた知ってんでしょ。でも、流石にもうこの時期だしそんなこと言うわけにゃいかないでしょうが。

「はい、まずまずです。モチベーションにも変化ありません。」

「う〜ん。ま、お前の場合あとは数学だよな。たぶん教科担の先生にも言われてるだろうけど、時間配分をちゃんと自分で決めて、出来そうな問からうんたらかんたら。」

もう耳タコですよ、その戦法。                                              なんとなく上からなこの先生に、あたしの本当の現状を伝えたところで何も変わらないことはもう分かっちゃってんだ、なんとなく。                                              最後に家の机でまともに勉強したのはいつだっけ。

来年の4月にあたしちゃんと生きてんのかな。

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「失礼しました…」ぴしゃり。

最後の面談のやつもまた、何か腑に落ちないような、頼りない面持ちで職員室を後にしていった。                                                                                              あいつ相槌はうってはいたが、俺の話はまるで聞く気がないみたいだ。いや、クラス全体の雰囲気がそうなってる。前々から生徒からあまり尊敬されていないのを感じてる。隣のクラスをもってる先生は生徒からかなり慕われてるのに。

俺が受験生のときはどうだったか…これを言うとまた母校自慢って言われるんだよな…。

「がんばれ」は、すでにこの教室では意味を持たない。何かやつらのためにできる話はないだろうか。田舎育ちで落ちる受験なんて初めてのあいつらにかけてやれる言葉は何だ。

俺に、今できることは―

 

 

….イカン。俺まで不安で胃が痛くなってきた。

 

 

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「いち高校教諭の苦心/大作戦/いせ」への3件のフィードバック

  1. 主観が2人なので、視点切り替えは1回しか使わない方がいいでしょう。現状だと教師→生徒→教師、の3パートになってしまっているので。映画だとカットバックが使えますが、最初のパートは生徒目線でも作れると思います。
    そもそも視点切り替えをうまく演出するには、どうすればいいのか。今回みたいな場合だと、教師には生徒が考えていることがわからない。ならばそのまま主観を出さず、日記や手紙という形で主観を導入するのはどうかと思い立ちました。お節介だったらすみません。

  2. うーん、教師は絶対になりたくないですね!受験生にかける言葉なんて「やるしかねえ」くらいしかないですからね、なんかPTAにキレられそうじゃないですか?もう少し労ったらどうか、とか言って。うっせー!子供の心のケアは親の仕事だろ!って思うんですけどね。教師の負担が重すぎる気がするんですよねえ。
    それはさておき、○○side的な、あの一昔前の携帯小説の十八番だった視点置き換えですが、やりすぎると読者に想像の余地を与えなくなり、退屈な文章になってしまいます。携帯小説でよくあったのは、彼氏と彼女それぞれの目線から出来事を語るみたいなやつ。もうね、馬鹿かと。あえてどちらかの心情を隠すことで「この時の彼氏(彼女)はこういう気持ちやったんやろかー!」と想像できて楽しいのに!それに対して、私が好きな湊かなえはそういう視線切り替えの話が多いのですが、すごく魅せ方が上手なので、程よく想像の余地を与えてくれています。何が言いたいのかって、A視点とB視点で物語を書くに至っては、あえて全てを語らずに、ほんのり謎を残すのが肝だと個人的には思います。

  3. いるんですよね、こういう空回りしちゃってる先生。生徒のことは本当に思っているのに。多分こういう人は生徒に慕われたいという欲が見えちゃってるんですよね。生徒もバカじゃないからそういう部分が見えてしまうとなんだかシラけてしまうと思うんですよ。そういった欲の部分をもう少し前面に押し出せたら空回りしてる感じがもっとうまく出ると思います。

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