お米を食べよう/大作戦/ヒロ

「それではこれより大規模な稲作をする戦闘集団の会、略して『大作戦』の定例集会を始める」
 首領閣下のその言葉に集会に出席している俺を含めた下っ端戦闘員たちが一斉に「エーッ」と声を上げた。今日も上手く声を合わせることができた。思わずにやけてしまいそうな口元を引き締めながら首領閣下を見上げる。
「我々が国の減反政策に苦しめられてからどれほどの月日が経っただろうか。君たちの父も祖父もあの忌まわしい政策に稲作の量を減らされ、例えようもない悔しさを、屈辱を、これまで延々と受けてきた。だが、我らの雌伏の時ももう終わりだ!
 これより我々は憎むべき怨敵、パン。そしてそれを喜んで食すあの非国民どもに天誅を下すのだ。さあ、立てよ我が戦闘員たち。米が食卓に帰ってくるのだ!」
「ジークライス! ジークライス! ジークライス!」
 俺たちは涙を流しながら叫んだ。叫ばずにはいられなかった。今、俺たちの心は一つになっていたのだ。

「お疲れ様」
「あ、お疲れ様です」
 集会も終わり、控室で全身タイツの戦闘服から普通の服に着替えていると後ろから声をかけられる。同じ戦闘員のなかでも同期の北郷さんだった。
「どうだい、今日これから一杯?」
 そう言いながら手でくいっと酒を飲む動作をしてくる。
「いいですね。あー、けどすいません。今日はこれからちょっと用事がありまして」
「そうなのかい?」
「はい。すいません。先に失礼します」
 もう一度北郷さんに謝ってから秘密基地から家に帰る。本当に今日はすることがあるのだ。

 家に帰ると少し大きめの段ボールが届いていた。
「やっぱり届いてたか」
 段ボールを開けるとそこには一本のベルトが入っていた。このベルトは「大作戦」に対抗するための武器である。
 俺は大作戦の裏切り者だ。大作戦に感じてる仲間意識も嘘ではない。それでも俺は自分の本当の心を偽ることができなかった。
「俺は本当は、うどんが好きなんだ……。米も好きだけど、俺はうどんの方がいい」
 このことを大作戦に知られるわけにはいかない。俺は食卓の自由のために戦うのだ。

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「お米を食べよう/大作戦/ヒロ」への1件のフィードバック

  1. こんな発想もあるのか!と思いました。面白いです。おっさん達を想像しましたがなぜかみんな可愛いです。

    一人称の文だったので最後の裏切り方は少し急すぎる気がしました、文の量からみてもそれとなく不穏な空気を混ぜこんでみるのも良いと思います。あと個人的にはうどん愛をもっと聞きたいです。

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