ひとりよがれ/大作戦/奴川

>>再来週誕生日だね、空いてる? どっか行こうよ。

 

 

プレゼント選びは億劫だし難しい。贈る相手がよく知らない人なら尚更である。しかし、仲のいい友達にプレゼントを選ぶときは楽しい。相手の趣味や身につけるものをよく知っているから選びやすいし、万が一選択を誤ってしまっても「ごめんごめん」で済ませて話のネタに出来る気楽さがある。

彼女にプレゼントを選ぶのは久々だった。中学生の時は、毎年お互いの誕生日を祝っていたのだけど、高校に上がるタイミングで中止となった。中止された理由は単純で、彼女が父親の出張にともなって引っ越してしまったからだ。そんな彼女が大学進学を機にこちらに帰ってきて初めての冬。再来週は彼女の誕生日だった。

 

予算は3000円くらいで良いだろうか。多分今年の夏に彼女が私に贈ったバスセットもそのくらいの値段だと思うし。あの日はスイーツ食べ放題じゃなくて、少し背伸びして雑誌に載っていたカフェに行ったんだっけ。そんなことを思い出しながら、私はまず買い物かごに石鹸を放り込んだ。バーアイスの形をした、ネタ系の石鹸だ。

彼女は食べ物の形をした小物が好きだった。プレッツェルの形をしたイヤリングを贈った時にとても喜んでくれたのを思い出して、私は心のなかでほほえんだ。980円。まだまだ買える。

 

次に見つけたのは、パッケージに彼女のお気に入りだったキャラクターのプリントがされた入浴剤だった。真っ青な瞳の白いウサギ。ここ数年ですっかり人気になったキャラクターだ。

中学生の時にはそこまでの人気はなかったから、彼女はよくグッズの少なさを嘆いていたものだった。何にしろ話のタネにはなるだろう、とかごに突っ込んだ。これで合計1880円。予算的には、もうひとつくらい何か買いたい。

 

最後のひとつがなかなか決まらなかった。寒くなってきたしハンドクリームでもとか、例のキャラクターのマグカップを、とか右往左往してしまって、結論が出せない。しかし嫌な時間ではなかった。好きな人のことを考える時間が嫌なはずもない。

結局、ハンドタオルを買った。彼女好みのシンプルなボーダー柄のタオルだ。今回買ったのは消耗品ばかりだったし、ひとつくらい手元に残るものがあってもいいだろう。これで3020円。よし、予算通りだ。私はレジに向かった。ちょうどその時ポケットの中の携帯電話が震えた。彼女からの返信だろうか。買い終わってから確認しようっと。

 

 

>>ごめん、当日はサークルで祝ってもらうんだ!今度でいい?

 

 

「今度っていつなんだろう……」
彼女の誕生日当日、私はヒーターの前で丸くなりながら、何度読み直したか分からないメッセージを読んでいた。何度読み直したところで、その文面が変わることなんて無いのに。

なんで私は彼女が私と同じくらい暇な人間だなんて妄想を抱いていたんだろう。彼女の人生は前進していて、私だけが未だに中学生だ。私は部屋の隅を睨んだ。そこには私の馬鹿げた作戦の痕が包装紙にくるまれた状態で転がっていた。ああ、部屋が寒い。ヒーターもそろそろ買い替えの時期だ。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「ひとりよがれ/大作戦/奴川」への2件のフィードバック

  1. サークルなあ…自分も、ここまでお金を無駄にしたわけではないけどこんな感じの経験はよくしてるので、こういう時の嫉妬に似た何か黒い感情が芽生える感じはわかる気がします。にしても何も確認せずにとりあえず買っちゃうなんて、とんだ早とちりですね。思い返せば、勝手に買い始めただけじゃん、ってなってしまうので、何かこう、主人公を勘違いさせてしまうようなきっかけとかがあるともっといいかもしれません。

  2. 一方通行なおもいとか、嫉妬とか、よくわかります。最後はとてもいいと思うのですが、それまでが少し長い気がしました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。