ホワイト/夢の対決/奴川

2010年7月。キティ・ホワイトは困惑していた。毎年社内で行われているキャラクター大賞(つまりはAKBの総選挙のようなものである)において、10年以上守り続けてきた1位の座を奪われてしまったからである。自分は世界で最も愛らしい存在のはずだった。絶対王者であった彼女は、自分のライバル足り得る存在はアメリカ産の黒いネズミやら電撃を放つ黄色いネズミくらいだと思っていた。

 

しかしキティ・ホワイトは自分の所属する会社のキャラクターに敗北した。そもそもあの女は誰だ。いや、名前くらいは知っていた。メロディとかいう女だ。世間ではマイメロなんて言われているらしい。キティ・ホワイトほどでは無いにしろ古株の彼女。あのぼんやりとした女が自分に勝つなんて、そんなことが有り得るのだろうか? キティ・ホワイトは首をかしげた。あの女が私に勝っているところなんてあるのかしら?

 

キティ・ホワイトは自分のプロポーションに絶対的な自信を持っていた。彼女の身長はりんご5個分、体重はりんご3個分である。よく分かりにくいと言われる(これも彼女の計算のうちなのだが)のでメートル法に置き換えて言うと、身長100cm・体重3kgほどである。BMIは3、今までコラボしてきたどんなモデルよりも低い自信がある。さてあの女の身長体重はどうなのか。キティ・ホワイトはグーグルを駆使して彼女の身体データを探そうとした。しかし、一向に見つからない。どうも設定されていないらしい。キティ・ホワイトは思った。デブなんだろうな、かわいそうに。

 

それに、自分のほうがずっと長い間トップを走ってきたのだ。キティ・ホワイトには長いこと会社を牽引してきた自負があった。正直なところデビューした年は1年しか変わらないが、会社や社会に対する貢献度は段違いだ。あの女は納豆の入った藁の中に閉じ込められたことがあるのか?キティ・ホワイトはあの屈辱の撮影を思い出した。世界のどこに、納豆にぶちこまれて喜ぶ女がいるだろう?

 

全国に自らの存在をアピールするため、そして地域振興のため、キティ・ホワイトは全国の様々な名産品にその身を埋めなければならなかった。ここまでプライドを捨てなければキャラクター業界では生き残れないのだ。あの女にその覚悟はない。あの女は意識の高いアパレルブランドとコラボして小銭を稼ぐくらいのことしか出来ていない。売れない期間が長かったあの女は、かわいい、だけではいずれ飽きられて捨てられるということを知らないのだ。

 

よく考えたら自分が負けてるところなんてないじゃないか。キティ・ホワイトは安心した。彼女の勝利は所詮一過性のブームであり、キャラとしての地力は自分の圧勝だ。キティ・ホワイトは外出の支度を始めた。今日はダニエルとのデートなのだ。そういえばあの女に彼氏はいなかった気がする。こんなところでも勝ってしまう自分が憎い。たまには哀れな日陰者に王位を明け渡すのもいいだろう。

 

これはキティ・ホワイトが初めてメロディを意識した瞬間であった。しかし彼女はまだ知らない。この先メロディとの王座争奪戦が5年にも及び繰り広げられることも、ついに2016年にはぐでたまを始めとする新興キャラに押され、マイメロ共々5位にまで転落してしまうことも。

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「ホワイト/夢の対決/奴川」への2件のフィードバック

  1. 面白かったです。日本語も整っていて無駄がないので読みやすいし女の人の感性の良さがにじみ出ていて素敵でした、

    個人的な好みを言えば少し淡白な気もしました。なんでしょうキティホワイトの人間味というか、心情吐露の臨場感というかがもっと出ていてもいいかもしれません。

  2. キティのお高く止まってる感じがキャラ立ってて面白かったです。テンポも良くて読みやすいし、具体的なデータがしっかりあってメリハリが出ていると思います。

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