酔 vs 素/夢の対決/猫背脱却物語

飲んで本音を語ろうという。大事な話なら素面でして欲しいという。この二つが、どうも上手くいかないでぶつかり合う。どうも大事な話には本音が必要になってくるのだ。

 

お酒は理性を外すためにあると思っていた。だから眠いやつは寝るし喋りたいやつは喋るんだろう。そんな、拘束具から本音の自分をを放つための鍵。日頃から言いたいことは我慢しない私は、やはりお酒が入るとさらに我慢しなくなった。言いたいこともずっと言える。そして感情にもより素直になる。お酒を飲んでる時に自分の気持ちに初めて気づくこともあった。素面の自分が言い訳して隠していた本音を見つけることができたのは、酔っていたからだった。

だが、酔っているときに言っていることが全てとは言いたくない。どこか人と話していて言葉が上滑りする感覚が生まれる。素面では考えもしなかったこともポンポン出てくるようになって、普段なら少しも共感できない話に「そういう気持ち、分かるなあ」と言って感傷的になってしまう。

場に乗せられている、というと言い訳になる。でも素面の時に思い返すと、あの時の私の中の人、誰なんだろうあれという不審感に苛まれ、私と認めることができない。酒は飲んでも飲まれるなというが、じゃあ誰に飲まれてるんだよと聞きたくなる。それでも私の口から出た言葉は私の言葉で、あんなこと言うつもりがなかったとしても、私が言ったことになる。

 

素面でいる間はそこに何者かわからない言葉は混ざってこない。そりゃもう真剣に物事に向きあうことができる。なまじ真剣だから、100%私由来の気持ちを、ぽわぽわしていない頭で誠心誠意考え抜いて、その頭で言葉を選んで話そうとできる。飲みに行こう以外にお茶しようという言葉があることに妙に納得してしまった。あれって昼と夜どうこうではないんだ。酔ってしまってたらちゃんと話したと言えないことがあって、そんなぞんざいな扱いじゃ話したくない内容や話相手だから素面で話すんだ。

でも、考えごとはしっかりしていくのがいいばかりではない。自分の気持ちを理解し伝えるべく真面目に考えていくと、他のものにぶち当たっていく。自分の気持ちを話したいと思っても、聞く人の気持ちを考え出して天秤にかけだす。嫌な気持ちに、迷惑に思わないだろうか。

素面で自分の本音をよりシャープにしようと、研磨していく。でもどこかでその歯止めがきかずに、色々な事を気にかけて延々と研磨していくと、気持ちは細く弱くなり、最後には消えて見えなくなってしまう。

だから、大事な話なら素面でして欲しいってそんなん出来たら苦労はしないのである。素面では、その大事な話は消えてしまうのだ。酔わなきゃ見つからなかった気持ちは、酔って考えの研磨の手を止めてから伝えることしかできないのだ。

 

飲み会の席で、僕は彼女の事が好きなんだと気付いた。素面では理性が言い訳して気付けなかった気持ちに気付けたのは酔っていたからだった。彼女のことを考え続けた時は、素面だった。そのまま気持ちを伝えたいと思っていたけど、結局自分に正直になれずにいて、考え続けた気持ちを告白できたのは缶チューハイ1本空けた後だった。

そんな彼女に振られた。お酒に酔ってた時の姿や言葉がダメだったみたいだ。別れ話を聞く僕は素面で、酔っていた僕の贖罪はできなかった。

 

酔ってて初めて気づいた気持ちって、素面で言っていいのだろうか。
素面で考えたけど言えなかったことって、酔って言えても言っちゃダメだったんだろうか。
酔った僕と素面の僕、どっちを大事にすべきなんだろうか。

 

酔えるようになった以上、この二人の自分の葛藤に振り回され続けていく。僕の体が一つだから、酔った自分と素面の自分はリアルタイムで戦えない。分裂してじっくりと対決してくれたなら。審判も僕がやって、解説も僕がやって、この試合を僕の今後に活かして、幸せになれるだろう。そんなの夢のまた夢で、本当は素面の時の意気地なしをなんとかすりゃいいとか、酔っても周りに流されないように自分を強く持てばとか、そもそも飲む量をどうこうすれば、なんてわかっているんだけど。強い二人を備えた僕は弱くて戦えない。だからお前らガチンコで戦ってくれよ、僕の代わりに。

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「酔 vs 素/夢の対決/猫背脱却物語」への5件のフィードバック

  1. いくら酔ってないと言えないことがあるといっても、制御できるのは素面の自分だけ。結局酔った姿で失敗するのが嫌なのであれば、素面で言えるよう強くなるしかないような気がします。

  2. 全体通して長かったかもです。フラれた件最初に持ってきて何個か要らない段落あったんじゃないかなって思います。はい。
    僕0か100かみたいな飲み方しかしないんで酔っ払ったときは大体記憶がないというか、記憶がある状態の自分は飲んでても素面みたいな。飲み会って雰囲気の問題もあるかなという月並みなコメントをしておきます。はい。

  3. 身近だけどおもしろいし、決着のつかない対立である気がした。
    私もすごく酔うと自分で何を言っているのか分からなくなるときがあって(記憶がないわけではない)、でも何を言っているのかよく整理して話す能力も奪われているので、残された理性によって、とりあえず口を噤む。自分でもよく分からないのに口をつく言葉は、無意識のようなものか隠れた本音か、寝ているときに見る夢みたいに、欲望ではないけれど、頭の片隅にあるもののような気もする。
    でもとりあえず、酔ったときに考えたこと、発言したことが本音であったとしても、それに基づいて大きな決断や行動を起こしてしまっては、その後素面の自分を困らせることになる可能性が高いので(生きている間素面の時間の方が圧倒的に長いから)、とりあえず自分だけがあとで確認できる場所に書き留め、冷静になってもう一度考えるようにしている(笑)。

  4. お酒飲んだ時と飲んでないときってなんであんなにかわるんですかね。アルコール怖い。個人的にはお酒の有無ってより誰となにを話すかによって酔い方も自分の向き合い方も違うから関係ないかなって思いました。でも酒の勢いってあるよなぁ。確かに抑圧されてるなにかな気もする。ううん、

  5. チューハイ1杯飲まないと告れないんだ、と思って振りたくなる気持ちはわかります。あと酔ってる姿が痛いとやっぱり冷める。
    それでも自分に本気で向き合ってくれてるなら付き合ってもいいと感じるけど、本気は酔ってるときではないと思うから酒なしで頑張って欲しい。

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