暖冬/あったかい/峠野颯太

外は今にも雪が降りそうなくらい寒くて。
寒い〜なんて言いながら、2人でスーパーに行って。
あたしは、人参が大好きだから、人参を多めに買おうとするんだけど。
彼はあまり好きじゃないから頑なに拒む。
その代わりに、闇鍋をしようと変わり種のものばかり選んでくる。
今日は普通に鍋するって決めたやろ、とか何とか言って、彼がカゴに入れた大福やらなんやらを一つ一つ棚に戻す。
人参一袋でいいから、君の好きなもの選んでよ、って言うと、少し目を輝かせて、肉をたくさん抱えてきて。
そんなに食べきれんでしょ〜とか言いつつも、明日に回したりすればなんとかなるだろうな、と思い全部カゴに入れる。
あとは適当にアイスとか、お酒とかも買って。



彼は3袋に分かれた袋を全部持とうとする。
そんな全部持たんでよ、あたしも持つから、手繋いで帰ろうよ、とか何とか言って。
結局彼が2袋、あたしが一袋持って、手を繋いで家まで帰る。
寒くて死にそう、とか、今日はこんなことがあってね、とかそんななんの意味もない会話をしながら。



家に着いて、すぐに鍋作りに取り掛かることはせず。
まずは2人とも炬燵に入って体をあっためる。
向かい合って入ってたはずなのに、そのうち隣同志に座って。
そのまま寝転がって、鍋作るのめんどくせえなあ、このまま寝てたいなあ、とか彼が言うから。
えー、せっかく具材買ったやん、鍋作ろ?って返すんだけど、あたしも面倒くさがりなので、そのまま動かず。
30分くらい経って、お腹すいたからさっさと作って食べようって話になり、結局2人してどっこいしょと体を起こす。


具材を切るのがあたしで、盛り付けるのが彼。
最初こそプロレベルの鍋作ろうぜ、と張り切るんだけど、2人とも飽きちゃって、形を型でくりぬいてた人参も輪切りに変更、綺麗に並べていた具材も、もうどんどん上に積み上げるようになった。


ようやく盛り付けが終わって、プロとは程遠い見栄えのものになったけど、そんなの全然気にならなくて。
そのまま炬燵の上のコンロに乗せる。グツグツ煮えて食べ頃になって、じゃあいただきまーすと2人同時に箸を伸ばす。
食べてる最中、あたしの女子力見せてやろう、と張り切って盛り付けようとするけど、そういう時に限ってぶっこぼすもんだから、慣れないことするからと揶揄われて。


鍋の力でぽかぽかにあったまった体を、食後のアイスでひんやりとさせる。
炬燵でアイスは最高やなー、と2人して満足気に平らげて。
残った鍋は明日の朝に食べようね、と彼に提案するけど、どうせ朝起きられないから昼だろうなあ、とか言われて。
そうやろうな、起きられる自信が皆無だわ、と笑って返す。



明日が来て欲しいけど、でも、このまま2人で炬燵で温まってもいたい。
それくらい、今が幸せで。






ーーーーああ、いつになったら、こんな冬が訪れてくれるのだろう。
いつまでも、あたしの冬は、寒いままだ…

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「暖冬/あったかい/峠野颯太」への3件のフィードバック

  1. 鍋を食べる、ってどうしても一人で食べる印象がなくて、誰かと一緒に食べるイメージが私にはあります。あったかいものを誰かと笑いあって食べられたら、それはもうポカポカしそうですよね。
    人の温もり、でいいなら友達と鍋パすると、擬似的にあたたかい冬になりそうです。それがダメならつまりそういうことですよね。。
    状況説明だけをしていた意味が最後に一気に解決される書き方は良くできていると思います。

  2. さっきから何度もどうコメントしたものか、と悩んでいる。下手なことを言えないな、という気持ちだ。コメントに何を書いていいかわからなくてこんなに心臓が痛くなったことがないから、どうしていいかわからない。
    文末表現が酷な程に女性的で、自分の好みとしてはとても苦手な部類に入るのだけれども、それは多分溢れてくる何かを無理やりせき止めている感じがダイレクトに伝わってくるからだと思わされる文章だった。人間の感情怖い。下手したら刺されそうな気がしている。
    もう本当にこの文章に関しては何を言って良くて何を言ってはいけないのか分からないから、とりあえず「凄い!怖い!しんどい!」を進呈しようと思う。

  3. 辛いです。心がぎゅーっと締め付けられました。キラキラしすぎてて、だけど純粋に憧れます。最後の最後で共感に変わりました。

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