氷から逃げて/あったかい/ふとん

「北海道出身なんだ!じゃあ寒いの平気なんじゃない?」

こっちに来てから1億回された質問。「全然平気じゃないしとてもとても寒い」という回答を与えるのも1億回やった。仲良しじゃない人との会話なんて、お互い偏見がなくてもあるふりをして提供し合わないと続かないし、考えずに返せるこういう質問はむしろ楽だと思うからこの中身のないやりとりに文句はない。

何億回でも同じ答えが出るくらい、冬のわたしは寒がりだ。家にいたら暇さえあれば電気ケトルのスイッチを入れる。はじめはココアや紅茶にしょうがを入れたのを飲むけど、10杯近くなると全ての味に飽きてお湯をそのまま飲む。毎日お風呂を沸かすせいでガス代水道代がひどい。暖房は設定温度を下げて付けっぱなしで家を出るから電気代もすごい。学校で耐えきれなくてすぐ自販機のあったか〜いに課金する。熱量が欲しいのか、夏は食べない甘いチョコレートやクッキーを摂取しないと落ち着かない。

特に足先と指先は氷になる。昔は、隣に寝ていたお母さんのあったかい足にくっつけてあっためようとしたけど、毎回あまりの冷たさにビクッとして逃げられた。彼氏と眠るとき、彼のふくらはぎに足の甲を当てると、ヒャーと悲鳴が上がる。いまは我慢してあたためてくれるけど、いつかもっと寒い日に、足をくっつけるのを拒否される未来が見えていやだ。

 


 

授業中、ペンを持つことがつらくなるくらい指先が冷たくなったから、自分の首に指先を当ててみた。あったかい私の首は指先の冷たさをどんどん吸収して、冷たい指先は首のあったかさを奪っていく。

これはなんだろう。わたしが、わたしを使ってわたしをあたためているのと同時に、わたしが、わたしを使ってわたしを冷やしている。ふしぎな行為だと思った。結局あたためてるのか冷やしてるのか、それとも、何もしていないのと同じなのか。

小学生のとき、チャレンジに毎月付いてきた読みものが大好きで何回も読んだ。だから、「夏暑いときは、太い血管が通っている首や手首に濡れタオルや保冷剤を当てて冷やすと、冷えた血液が全身に回ってすずしくなるんだよ!」って書いてあったのも覚えている。そうだとしたら、わたしは自らの指先で太い血管を冷やすことで、指先を含む全身の血液を冷やしていることになるね。

すごい発見だ。濡れタオルや保冷剤という外部からの援護なしに、わたしはわたしを冷やすことができる。これを永久機関というのか。首を指先で包み込んで冷やしたら、そのうち体温は0℃より下がって、凍死してしまうんだろう。死体は首を締めるようなポーズになるから、自殺したと思われてしまうかもしれない。

もう絶対に、指先を首であたためようなんて思わない。うっかりやってしまわないよう、気をつけないといけない。わたしは日差しの当たっているあったかいおふとんの上で死にたいから。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「氷から逃げて/あったかい/ふとん」への2件のフィードバック

  1. 前半部分がとても共感できる内容でした。後半の考察(?)の部分は独特な視点で面白かったです。

  2. 北海道出身なのは1億回も本当に聞かれましたか?本当はそんなに聞かれてないと思いますよ!

    後半部分、なんか、共感できました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。