風/あったかい/猫背脱却物語

ジョイナスに出入りするとこにある、風がすごい勢いで出るやつが好きだ。あそこにずっといたい。なんの為に出ているかはわからないけれど、暖房にしてはあらゆる水分を奪いすぎであろう勢いで、温風がブババババと出ている。絶え間ないあったかい突風。暖房であっためられた部屋全体の暖かさではない、吹き抜ける強さがある。そこにずっとたっていたいと思う。

そこでなら私は「ほげえー」と言いながらブババババと全身に当たってくる温風に身を任せていればいい。いや、その間も社会的な立場とかやらなきゃいけない課題とかたまっている洗濯物とかは前後の自分と何も変わらないんだけど。なにより風に当たっているから、風以外にかまってられないわ、っていう感じで、頭からそれ以外のことが吹き飛ばされる。今は風に集中したいんです。ジョイナスからちょっと進んだらいる居酒屋のキャッチにもここでなら「あ、すいません風に当たってるんで」って言える。私から見さえすればだが、温風と戯れている私は無敵だと思う。

一度あそこで立ち止まってしまうと、なかなかに動き出せない。温風とじゃれつく時間を少しでも長めに感じてしまうと、もう終わって欲しくなくなる。とはいえ出口でずっと止まっているわけにはいかない。一歩足を出し、風が届くゾーンから離れる。これまで向かってきた風はフッとやみ、取り囲んでいた温風たちが少しずつ退いていく。楽しいーとか思っていた時間がおわる。ずっと動いていたものが止まる。マグロだったら死んでいる。

風が収まってしまった時のもの静けさは、当たっていた時のわいわい感の裏返しで余計に色濃い。祭りの後の静けさ。祭りが始まる前も同じくらい静かだったはずだのに、振り返っても、以前の静けさの姿が見えない。そのくらいにあの風の存在は大きい。さっきと同じ気温のままなのに横浜駅はどこか寒いのだ。あったかい風のせいで寒さが際立ってたら元も子もない。

それでもジョイナスに入ったくらいで、もう出口の温風のでるところを気にし始めている自分がいる。風にさえ寂しくなってたらキリないわ、と立ち止まることなく出口に向かう。それでも温風はそんな私に優しい。一瞬だけブババ、と暖かさをもらいながら、やんなきゃいけないことを考える。今は立ち止まっている暇はないのだ。いつか少し肩の荷が下りたら、無限にあの温風に当たりに行くのも悪くないとか思いながら。

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「風/あったかい/猫背脱却物語」への2件のフィードバック

  1. 一読目は「へぇ、そんな風出るところがジョイナス入口にあったのか」とか思いながら読みましたが、ニ読目でどうやらその風だけに焦点を当てて書かれているわけでは無いらしいことをようやく感じ、三読目にしてなんとなく自分の中で消化しました。
    読むごとに受ける印象が変わるようでした。

  2. わかる。けど、あたたかいで思いつくのがあの風って、どうでもよ過ぎてすごい。そのどうでもよさと、現状や心理描写みたいなもののバランスがいいと思った。というか、風は出ているけどあまりあたたかいものではなかった気がするのだけど、もしかして違う場所のことかな?夏は少しだけ涼しくなれるから好きだけど、冬は一瞬ぬるい風が当たったところで気休めにもならないので、ただ髪がぐちゃぐちゃになってあまり好きじゃない。

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