人間及第点/自分大好き/θn

メロスは激怒まではしなかった。

かの邪智暴虐の王をテレビで見ながら、「こういう人間は除かれればいいのになぁ」とまでは思ったが、激怒するには至らなかった。メロスには政治がわからぬ。メロスは都心部の住人である。そして邪悪に対しては、酷く鈍くあることを望み、その一方でそれが怠惰から来る欲求であることも認識していた。

「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と私は結局いい放つことをやめました。これは二人でゲームをしている際、Kが私に向って使った言葉です。
私はKが理想と現実の間に彷徨してふらふらしているのを発見しました。しかし私はKの前に横たわる恋の行手を塞ぐ勇気を最後まで持たなかったのです。

その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。そして玄関には
『RESTAURANT(西洋料理店)WILDCAT HOUSE(山猫軒)』
という札がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「いや、知らない店はちょっと……」
二人の紳士は、山を降りて麓のガストに入りました。

***

何がいいたいかというと私がいると物語が進まないということだ。

メロスは走らない、Kは死なない。山猫は料理を始めない。
勇気とか度胸とかそういうものと縁遠い人生を送ってきました。
主人公って大変だなぁ。モブはモブらしく生きよ。卑屈は便利だし結局嫌いになれない。自己防衛はこれだからやめらんねぇ。

***

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。焦燥と言おうか、嫌悪と言おうか……。

肺尖カタルでも神経衰弱でもない、まして背を焼くような借金など一生しないと思う。なんといっても私はビビリだった。日々募るぼんやりとした不安で死ぬこともない。私は玉川にはいかない。

それでも、その檸檬の冷たさはたとえようもなくよかった。黄金色に輝く爆弾であればいいと感じる、考える。非日常が起きればいいと願っている。全部檸檬が木っ端微塵にしてくれるやもしれない。そういう期待で生きている。

私は安い人間だった。その日その日が不幸でなければいい。自殺もしない。極力人にも迷惑をかけないようにしようと思う。イライラすることもあるけど、頭のなかで一発殴って平和協定。そのあと関係は続けない。

雨にも風にも負けるけど、晴れの日にはちょっと幸せ。それでいい。卑屈でも言い訳でもいい、自分が好きだから自己防衛してたいんだ、わかるだろ。大きな夢、理想。小さい現実。そこの折り合いをつけられないで、死ぬなんて馬鹿だ。

モブでいい。そこそこ頑張って生きてたい。そういう人に私はなりたい。

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「人間及第点/自分大好き/θn」への2件のフィードバック

  1. 導入は凄い面白いと思うのですが「得体の知れない〜」からよくわからないです。筆者は今の生き方に納得しているがどこかでドラマを望んでいるという感じであっているでしょうか。心情の距離感が掴みづらいので接続詞がもっと欲しいと思いました。

  2. 平和に生きることは大事だと思います。波風立てずに生きるのがいちばんいいと思いました。とても共感しました。

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