サラサラ/共作(添削)/フチ子

「はよ、あと15分で出るよ」
「あなたが起きなかったんでしょう」
「とにかくあと20分で出るよ」

彼は、ラーメンが食べたいらしい。ごっついラーメン。油っぽい野菜がドバーッと乗っかっていて、分厚い肉の塊と、小麦粉の匂いがブワッとくる太い麺のラーメン。俗にいう二郎系。デブ専用みたいなやつ。彼女と食べるものじゃないと思うけど、容赦無く誘ってくる。彼がラーメンを食べたいと言い始めたら、わたしがパスタがいいな、なんて言える隙はなく、ラーメンと決まる。電車で20分くらいのお気に入りのラーメン屋に連れて行かれる。

「12時過ぎると急に人が増える、はやく」

何度起こしても起きてくれなかった彼は、やっとこさ起きた瞬間にちゃちゃっと準備は済ませていた。結局、二時間前には起きていたのに、わたしがせかされる側に回った。お風呂も入りたいし、歯も磨きたい。もちろんお化粧もする。彼より早くに起きて準備をしておけばよかったのに、布団が気持ちよすぎて、ごろごろしてしまっていた。同罪だ。

「髪、乾かすんでしょ」
「乾かす」
「ぼく、トリマーだから髪乾かすよ」
「トリマー?」
「みさきは、猫顔だけど忠犬ハチ公みたいな性格だね」

そう言ってドライヤーを持つ。さーっとわたしの髪をほぐしながら温かい風を当てる。サラサラとしていて心地がいい。

「髪、伸びたね」
「伸びた」

彼の手が、どこかぎこちない。髪の毛なんて死んだ細胞なのに、壊れないように力加減を調整しているかのようでおもしろい。普段憎まれ口を叩かれてるのに、丁寧におそるおそる髪を撫でられている。

「あれ、いつもみたいな内巻きにならない」
「ドライヤーだけじゃ厳しいね、コテがないと」

くるっと内巻きにはならないまでも、サラサラとしてきた。本当はデートの日はちゃんとしたストレートか、内巻きにしたいのだけど、今日はサラサラとしてさえすればいい気がしてきた。ラーメンだし、あなたお手製だし。

「よし、完成です」
「ありがとうございます」
「顔のほうは?」
「まもなく完成です」

ちゃちゃっとビューラーでまつげをあげて、チークを塗る。よし、ラーメンに食らいつきに行くぞ、と心に決めて、外に出た。

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「サラサラ/共作(添削)/フチ子」への2件のフィードバック

  1. ノンフィクションかな、と思って読み進めていたら「みさき」という名前が出て来て少々驚いた。フチ子さんの中で小説とエッセイ、そして自分の書く文章の形態の違いはどこにあるのか、聞いてみたい。
    校正を入れるという課題だったようだが、いつものフチ子さんとあまり変わらないように見受けられた。校正をするにあたってどの点を注意し、またどんなものが校正対象となるような読者設定にしたのか、ちょっと気になる。

  2. きりんさんのタイトルで察しましたが、共通のテーマを設けず互いに添削するだけという形でしょうか。せっかくなので、二人の文章の間にももう少し繋がりがあるとなお良かった気がします。
    上のコメントにいつものフチ子さんの文章とありますが、今回はフリーテーマだからわかるとしても、どんなテーマでも「いつものフチ子さん」が書けるのは才能だと思います。単純にすごい。いつもどうやってテーマに寄せているのか、気になりました。

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