酒とつまみとおやくそく/じゃんけん/ヒロ&やきさば&あおいろ

「あれ? 酒もうなくなったぞ。けちって少しだけしか買わねぇからこうなるんだ」
春樹が空になったビンを持ち上げて言った。
「何言ってんの。春樹ばっかり飲んでたからでしょう? また買ってくるならあなたが多く出しなさいよね」
知世がせっかく美味しかったお酒だったのに、と文句を言いながらテーブルの上を片付けている。
「それならまた買い出しに行く? それならとっておきのおつまみ出しちゃうけど」
僕も正直なところまだまだ飲み足りなかったので、そう言い添える。まあこの三人では春樹が最初に飲み過ぎるのはいつもの流れだからいつも通りではあるのだけど。
「おっ、そんじゃあいつもみたいにやるか!」
顔を真っ赤にした春樹がにっと笑っていつものセリフを口にする。
「やりますか」
「やろうか」
僕と知世も顔を合わせて笑って言う。示し合わせることもなくいつものようにする。
「「「最初はグー、じゃんけん、ぽん!」」」

ゲームサークル「じゃんけん」。それが僕が今所属しているサークルだ。
メンバーは僕、握汰(アクタ)と知世(チヨ)、春樹(ハルキ)の三人。僕たち三人は小学生からの付き合いだった。サークル名の由来はもちろん僕たちの名前だ。この三人の集まりを僕たちは昔からじゃんけんと呼んでいた。
サークルは僕たち三人だけで新しく誰かを入れることもない。これではサークルとは呼べないのだろうが、誰かに説明するときに困るのでそういうことになっていた。
運動が得意な春樹、勉強が得意な知世、社交力や根回しなんかの人間関係が得意だったのが僕。
好きなものも嫌いなものも何もかもが違う僕たちだったけれど、逆にそれが良かったのか僕たち三人が共に過ごす時間はとても楽しかった。
多分僕たち三人は二人だけだったら上手くいくことはなかったと思う。三人の内一人でも欠けていたらこれほどに仲良くなることはなかったはずだ。
僕は二人のことが大好きだった。だからこそ、この心地よい時間がもっと続いてほしいと心から願っていた。

「ただいまー」
結局今回負けたのは僕だった。すぐ近くのコンビニで二人が好きな酒を買って帰る。
「おかえりー。ほらほら早くつまみ出してくれよ。俺お前の作ってくれるつまみ大好きなんだよ」
春樹が強引に肩を組みながら言ってくる。酒が回るととべたべたとしてくるのが春樹のいつもの酔い方だった。
「お帰りなさい。私はワインを早く出してほしいな。あっくんのおつまみ、お酒との相性が最高だからねー」
知世は酔うと少し甘えた口調になるタイプだ。
「はいはい。今から出すからちょっと待ってて」
笑って二人に答える。二人のためになることが嬉しかった。
そう、僕は二人のことが大好きなのだ。愛している。もちろんそういう意味でだ。
「二人とも」
うん? と知世と春樹がこっちを向く。にっこりと笑顔で言う。
「大好きだよ」
二人の顔が酒を飲んでいるときにも増して赤くなる。
それを見て僕は台所に向かった。そして、先ほど言った、とっておきのつまみを取り出す。
今日も楽しく三人で飲もう。この時間がいつまでも続くことを願って。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。