アウトレットモールの下りエスカレーターにて/共作/みくじ

緊張のあまりお腹がキリキリ痛み、背中を丸めるたびに彼女に肘で小突かれた。そのたび僕は肩にかけたトートバッグの中に手を入れて、手になじまない金属の塊を握りしめた。

下りエスカレーターでいつもより低くなった彼女を見下ろす。彼女のさっき買ったばかりのマフラーは輪っかになっていて厳密にはマフラーではないらしいのだが、いま僕の首を覆っているネックウォーマーよりはマフラーに近い見た目をしている。

ネックウォーマーと言えば、家を出る時これは彼女の首にあった。ださい、毛玉だらけだと文句を言いながら頭から被り、ちょっと迷ってから中にきゅっと入ってしまった長い髪を腕で払った。その仕草がなんだかむず痒かった。

彼女は僕とそんなに変わらない背丈で、彼女がのっぽなのか僕がチビなのかで言うとどっちもどっちと言った感じだ。だから彼女を見下ろすという経験は稀だし、下を向いたことで鼻が埋まったネックウォーマーからはほのかにシャンプーの香りがしたことは新たな発見だった。

シャンプーの香りの中で深呼吸しているとじろりと彼女に睨まれたが、さっきより腹部の痛みは和らいだように思える。手が冷えるからあまり金属を触りたくなかったので、このリラックス方法は有用性がある、と気づいたのが金属の塊に体温が移ってからだったのが悔やまれた。

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