ある雪の日のおとこのこたち/ぜんぶ雪のせいだ。/ヒロ

「……寒い」
雪が鉛色の空からしんしんと降っていた。
どうやら昨日の夜からずっと降り続いているらしく、屋根や道路にかなりの量の雪が積もっている。
少し外の様子を見に玄関から出る。ただでさえ寒かったのに、さらに寒くなる。
これだけの量の雪が積もるのはこの地方だとだいぶ珍しいことだった。このぶんだと今日も学校や会社に行かなければならないような人は大変そうだ。
「まあ俺も一介の学生なわけで。この中を学校まで行かなきゃいけないんだよな」
思わずため息が出る。白い雪に白い息、本当に嫌になってしまうような天気だ。舞い降りる雪が視界をチラついてどうにも気になってしまう。
「ほら、そろそろ学校行く準備しなきゃ遅刻するわよ。って寒っ! この天気だと今日は自転車使えそうにないんだから。歩いて行くんでしょう?」
母さんがわざわざ玄関の扉を開けてそう言って、やっぱり寒かったのかすぐに家の中に戻った。
何ともサボりたい日だけども、高校受験を間近に控えた身ではそんなことは言ってられないのが悲しいところだ。
「しょーがない。さっさと行きますか」

いつになく厚着をして中学に向かう。歩き始めてすぐに靴の中に水が浸み込んできて、ただでさえ悪かった気分がさらに悪くなる。
さらに天気予報でこのまま一日中雪が降り続くだろうと聞いたのだからもうどうしようもない。今からでも家に戻りたくてたまらなかった。
「はぁ、これも何もかも雪のせいだよ。そうさ、俺が受験に落ちたとしても全部雪が悪い。俺のモチベーションを最悪まで下げた雪が悪い」
そんな風にぼやきながら歩いている俺に後ろからやけに明るい声がかかってきた。
「おはよう! 何だよそんな暗い顔して、めったにふらない大雪なんだぜ。もっと楽しんで行こうぜッ!」
声をかけてきたのは近所に住んでいる保育園からの腐れ縁だった。こいつのせいでこれまで散々な目に会ってきて、このまま第一志望に受かればまた三年付き合いが伸びるかもしれないと密かに俺が危惧しているような、そんなやつである。
「……しょうがないだろう。こんなに寒い中、わざわざ歩いて学校まで行かなきゃいけないんだぞ。それなのに明るくなれるわけないだろうが」
「ええー、俺は雪が降ってるってだけでもう楽しくて楽しくて仕方ないってのに暗いやつだな」
こんなのなのに志望校判定はA判定なのがこいつのさらに腹の立つところだった。
「そうだ、雪合戦しようぜ! 楽しいし、動いたら温かくなるしで一石二鳥だ。これはもう合戦するしかねえな」
「しねえよ。なんで朝っぱらからそんな疲れるようなことしなきゃなんないんだ」
「お前は本当につまんねえやつだなぁ」
はー、とため息をついて言われる。ため息をつきたいのはこっちの方だよ、と思いながら無視して雪の中を歩く。その後も同じことを何回も言われたが無視して歩みを進める。
「なんだよ、ホントに雪合戦しねえのかよ。あっ、そうか。さてはまた俺に顔面に雪玉を当てられて泣くのが恥ずかしいんだな?」
その言葉に思わず反応して振り向く。にやにやと俺を挑発するように笑っている憎たらしい顔がそこにはあった。
「お前もう六年以上も前のこと引っ張り出して何言ってやがる! あれはな……、あれは雪が目に入っただけで泣いてなんてなかったんだよ」
「本当かー? あのとき痛いよー痛いよー、って泣いてたのは俺の気のせいだったっけかー?」
「この野郎!」
我慢の限界だった。後から思い返すとたぶん受験勉強によるストレスとか、雪の中を歩くことへの嫌気とか、恥ずかしい過去をからかわれた腹いせとか、原因は色々あったのだと思う。
とにかく俺は苛立った気持ちを全部込めてにやにやしている腐れ縁に雪玉を投げつけた。
「あっ、てめえやったな」
怒り口調で、だけども口元を大きく緩ませながら相手も俺に雪玉を投げつけてきた。こうなるともう抑えられなくて、近くを歩いていた他の友人も誘いながら雪がたらふく積もっている大きな駐車場へと駆け出して行った。
そう、俺も実は雪で遊びたかった。だってここまで雪が積もるなんて生まれてきて初めてというぐらいだったのだ。これで雪で遊びたくないなんて言うやつは男子中学生じゃないと言っても過言じゃなかった。

結局俺たちは学校のことも忘れてはしゃぎまわって盛大に遅刻した。そして、なんで遅刻したのか聞かれて口をそろえて答えた。「ぜんぶ雪のせいです」と。

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「ある雪の日のおとこのこたち/ぜんぶ雪のせいだ。/ヒロ」への1件のフィードバック

  1. ラノベ系の文化なのかは分からないのですが、ふつうの小説を読む感じで読むと台詞が独白調で説明的。それを口に出していると考えると違和感があるので、鉤括弧をとって地の文にしてしまっていい気がします。氷菓のほうたろうとかそんな感じですよね。
    あとは、腐れ縁の親友にどんな目に遭わされたのか気になります。エッセンスとしていれたのなら膨らませてお話に絡めてもよかったのでは。でも、膨らませたら多分文字数が凄いことになりそうですので、これらの欠点は策の一環かな?

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