じんましん/ぜんぶ雪のせいだ/フチ子

「赤くなってる」
「あ、ほんとだ」

じんましんに悩まされたのはいつからだろうか。たしか、すごくすごく寒くて、しもやけになるくらいに、足先が冷たかったあのとき。

もういいや、と思えた、あの日。

こんな無意味で、搾取されるだけの関係やめたい、この日常から救い出してくれる人いないかな、たらたらと考え続けていた。年齢だけが進んでいって、自分の価値がただただ下落する。この人よりもいい人なんて、沢山いる、いたはずだ。

たいした快楽もない。本当に相性がいいの、私もこの人じゃないと満足できないから、仕方ないのよね、と友達には説明しているけれど、ちがう。虚しさと、期待を持ちながらのセックスなんて汚い。気持ち良いとさえ思えないならば、自分が惨めで、耐えられない。

3年間。お相手には彼女ができたり別れたりしていた。その過程を私はぜんぶ、知っている。それは脈ありだとか、脈なしだとかそんな話をしていた。別れるたびに、次こそは私かと期待をしなかったわけではなかったけれど、そのたびに丁寧に期待をへし折ってくれた。「真紀とはこのままがいいね、居心地が最高」そうやって私の元に甘えられると、もうだめだった。

「真紀はいい人いないの」
「さあ、いたり、いなかったり」

勘違いさせないために、一定の距離を取るために、律儀にこの質問を繰り返す。いてもいなくても彼にとって私は重荷だ。いたらいたで、彼から私が離れたら離れたで、彼は責任を負わなくてもいい楽ちんな女を失うし、いなかったらいなかったで、罪悪感を覚える、存在が重たい。どちらとも取れないような返答で濁すことで、この関係性に責任を取らずに続行可能の許可を出す。

寒かったのだ。凍える足を温めたかったのだ。しもやけの足で、一人だけの家に帰りたくなかったのだ。

「ぷっくりしてる、痒いの?」
「ちょっとだけね、薬を飲めば治る」

本当は、すごく痒い。あの日のじんましんは慢性で、毎日薬を飲んで抑えている。少しでも油断して、薬を飲み忘れたら、途端に痒くなって、赤くなって、悲鳴をあげる。油断してはだめだ、治ってると勘違いして、飲み忘れてはだめだ、ポツポツと赤く膨れ上がって、なおさらに醜く、汚い自分になってしまう。

「あ、薬の殻、持ち帰ってね」

わかってる。証拠隠滅も、何年やってると思ってるの。一度だってミス、したことがないでしょう。ミスしなかったらあなたのそばに居られるのだから、ミスするはずが、ないでしょう。

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「じんましん/ぜんぶ雪のせいだ/フチ子」への2件のフィードバック

  1. 私の読解力がお粗末なだけなのですが、数回読んでようやく視点人物の女の子とお相手の関係が察することが出来ました。
    ひたすら女の子がつらそうで苦しかったです。誰かなんとかしてあげてと思いました。

  2. きっついなぁ…と思いました。救われて欲しいですね…。閉塞感がよくでてていい意味でしんどかったです。

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