コンプレックス/ぜんぶ雪のせいだ。/ちきん

大学受験のとき、雪で電車が止まって、ホテルのロビーで偶然出会った秋田県出身21歳男性と一緒に、半日くらいかけて会場まで歩いたことをおもいだしてしまった。

 

夏は毎朝4時にポーションと豆乳でカフェオレを作って、勉強机とベッドしかない部屋の中の段差に座って飲んで、4時からスタートする1日は長~くて、笑っちゃって、駅のホームでinvitationを聞いて、ふしぎな気持ち。

冬は自動販売機で温かいコーヒーを買って、コピー機の横の真っ赤なソファで手を温めた。寮の管理人のおじさんに、なんで友達を作らないとだめなの?って聞きたかった。なんで医学部だと親の敷いたレールなの?なんで自分の意志で自分らしく、自分の道を進まなくちゃいけないの?恋をすることだって、そんなに簡単じゃない。

 

プリクラに写った女の子。そんなんで変なプライドも妬みもコンプレックスも、漏らさずに生きていけるのか。自分もそこにいるくせに無意識のうちに周囲を見下していることに、たまに気付いて自己嫌悪に陥ったりしないのか。いい子なのかな。

 

大きな窓があって、そこから車が走っているのが見えるホーム。白いファーのポンポンでポニーテールにした、声が高くて可愛い女の子。サングラスの跡で崩れたファンデーション。指輪。何も恐れずに毎週毎週、同じ志望校の名前を書かされて、何も怖くなかったのに。

たどり着いた場所は、街全体を見渡せるすっごくいいところで、冷たい空気が気持ちよくて、厚底の靴を履いたまま、思わず走り出した。しかもだいすきな先生の生まれ育った場所だ。って言葉だけが脳内をよぎって、別に先生なんて私の中の何でもないし、私は彼女の中に存在してすらいないのに、もうゴミ屑みたいな端緒から誰かに縋って、心の軸を作らないと死にそうで。数日前、母親と電話口で話したのも本当は全部戯言で、洗脳しても洗脳しても、すり抜けてしまっているのが分かるのに、それでも何でもない顔をして。どうしようもなくなったとき、私はそんな風にしかなれないのか。それが大人だって言うのか。怒って泣いて逃げたりできないの。まじめだからじゃなくてチキンだから。

ただ部屋が一人で過ごすには広過ぎて、誰も私のことを知らないんだなあって、思わず冷蔵庫を開けてしまった。

 

好きに生きていいはずなのになんど言い聞かせても忘れちゃう。ここに来てみんなと出会えてよかった理由だって、全部嘘だよ。いつも、そこに飛び込んでしまった時点で、その後もうすごく新しい気持ちにはなれない。この部屋だって、自分らしいお気に入りの空間を作ろうと、好きなものをいっぱい置いたのに、ある程度揃ってきたらもう、何の魅力も持たなくなる。

状況は1年も待たずにコロコロ変わっていくし、自分の身の振りよりも大切な誰かとの出会いなんてない。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「コンプレックス/ぜんぶ雪のせいだ。/ちきん」への2件のフィードバック

  1. ?とか反語とか、すごくわかる気がするんだけど、わかるんだけど「分からない」っていうほうが合っているように思う。いや正解とかないけど。
    何度も読み返さなきゃ、読み返したいと思う文章でした。それはもちろん私がちきんさんに興味があるからなのだけれど、純粋に人を惹き付ける文章だからだとも思います。

  2. 歌の歌詞みたいに、読みました。
    個々のエピソードは、ちきんさんのもの(?)
    で、自分は体験していないはずなのに、そこから汲み取れる思いとか気持ちは自分のものみたいに思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。