タチが悪いヤツ/ぜんぶ雪のせいだ。/Gioru

雪のタチが悪いところは雨と違って降っても音が鳴らないこと。

朝起きた時にざーざー音が聞こえれば、あぁ雨が降っているな、と身構えることができる。ある程度覚悟を決めて布団の中から這い出ることができる(気分が良くなるとは言っていない)。

それときて雪の場合はどうだろうか。真夜中に音もなくヤツは忍び寄ってくる。

朝起きて何気なくカーテンを開けると、そこは一面の銀世界。

なんと素晴らしい光景だろうか! そこはまるで御伽噺の世界のように煌びやかで私たちを覆いつくす。昨日とは色が全く違う世界に胸躍らせることができるだろう。

問題はその後だ。

その日に外出する予定なんかあると最悪だ。ヤツは降り始めは特に柔らかいことが多く、歩くだけで通常時のニ・三倍は疲れる。水っぽい場合はとにかく靴に染みる。靴の中は凍えるくらい冷たい水でびちゃびちゃ。ぬっちゃぬっちゃと、絶えず口を開けたまま咀嚼する人がいる気分に浸ることができる。電車は止まるかもしれないし、車はみんなタラタラ走っているからイライラする。坂道は特に注意しなければならない。少しでも足を置く角度を間違えればあっという間に景色が変わる。何とか耐えようと踏ん張って手足をジタバタさせて、つるんとあっけなく終わる。焦った時点でもうだめなのである。その光景を誰にも見られないことを祈る。

 

雪というものを見て純粋に興奮し続けられなくなったのはいつからだったか。少なくとも、この前降った雪を朝見た時は最初の数十秒で興奮が冷めた。もし動画でその光景を取れていたらさぞ面白かっただろう。キラキラ輝いていた瞳は見る見るうちに泥沼のように澱むのだ。小さな子供が見たら泣きそう。

 

特別な時に雪が降るから、人は興奮するのであって、興奮し続けられるのだ。

クリスマスに雪が降れば、何故かは知らないがハッピーになれるらしい。スキーやスノボをするには雪が降ってくれないといけない(人口雪ってかなりザラザラして気持ち悪いんです)。そこに友達がいてわいわい楽しめる時間と場所があるから雪合戦とかできる。

 

雨と違って雪は固体で降るからか、はたまた、決まった時期にしか降らない物珍しさからか、人々はその雪に特別さを見出すような気がする。雪が当たり前の世界ならこんなにワクワクしたりイライラしたりしないのだろうか。

物静かかと思えば、目に入った途端の自己アピールの強い雪。役立つときはすごく役立つが、それ以外の時はどうしようもなく邪魔に思える。無視しきれない影響力を持っているのが憎たらしい。

この前は誰も雪合戦してくれなかったし、スキーに行きたくなったし、雪綺麗だねって言い合える恋人もいないし。あ、最後はこの前も、か。

 

世界はヤツに包まれ私もヤツに包まれる。逃れることは叶わず、たとえ直接触れずとも認識した途端、私はヤツに包まれ、染まる。

 

結論を言おう。ぜんぶ雪のせいだ。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

「タチが悪いヤツ/ぜんぶ雪のせいだ。/Gioru」への3件のフィードバック

  1. オチがきれい、オチまでの流れがきれい。めっちゃ雪と向き合ってるかんじする。どうしても特別視してしまう雪。日常を書き起こすってこういうことなのかなと思いました。
    ちと長いかなというか、前半の構成がふらついてるような気もしました。

  2. 雪について真っ直ぐに書いている人が少ないように思えたのでかえって新鮮で面白かったです。雪や雪に伴う現象に対しての表現にしっくりくるものが多かったです。雪道を歩くときの「ぬちゃぬちゃ」とか。

  3. 雪で直球勝負しながらも、微妙に滲み出る厨二病感がよかった。何か思い切った方向に絞ると、もっと読ませるものになる気がする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。