年々歳々花相似/ぜんぶ雪のせいだ。/ノルニル

     モノクロの景色のなかに、あなたの面影が浮かぶ。目が合わせられなくて、視線を落とすとコートを着ているわたし、認識した途端にコンビニにはおでんや肉まんが並び、乾いて澄んだ空気がひんやりと肌を刺す。どうやらここはまだ冬のままらしい。

     思い通りにできるのならと、あなたの隣では雪が降る、なんて特別な思い出にしようとしてみる。一面が雪に覆われた公園で、ふたりぶんの足跡だけが水気の多い、べちゃべちゃとした灰色の染みをつくる。
     息が白いね、とつぶやいて、返事がないことはわかっていた。先を行くあなたの背中へ手を伸ばしても届かないことも、もうわたしは知っているから、それはせずにただほうと息を吐く。結局、わたしは何も言えないままだったのだ。

 

     それは終わらない冬の夢だった。いちばん好きなあなたがいた。いちばん嫌いなわたしがいた。そうであってほしかった。そうでなければいけなかった。
     目を覚ますと季節は夏で、雨だから映画館に行こうと決めた。わたしはだんだんと遠ざかっていく思い出を懐かしむばかりなのに、窓辺では紫陽花が去年のそれと変わらず雨露に濡れてひかって、そうして毎年同じ季節ばかりが巡る。変わるのは、それを見る人のほうだ。
    昨日の続きが今日だとしても、あの日と今はどこが繋がるのだろうか。今日の続きが明日だとしたら、わたしたちの世界もいつか重なるのかな。

     心の中に、伝えられなかった言葉ばかりが降り積もる。それをぜんぶ雪に埋めた。もし、万が一でも春が来たらまた会えるように。あなたに届かなくても、いつか心のふちから溢れて、誰かに届きますようにと祈る。これはきっとわたしの中で融け残っている光だと、そう信じたかった。冷たく湿った空気で澱んだ梅雨の曇り空は、どこか夢で見た、くすんだ雪の色にも似ていた。

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