私のせいじゃない/ぜんぶ雪のせいだ。/味噌の

まさに陸の孤島。

珍しく盆地の我が故郷に大雪が降って、そこそこのダメージをもたらした。なんせ普段雪なんてそんなに積もらない。山に囲まれたこの場所は、きっと立ち入ることも出ることも困難だったに違いない。
その日はバレンタインデーかその近く、学校が1番チョコで溢れるような日だった。なのに学校は早終わり。
部活のときに先輩にチョコ渡すんだ〜なんて言っていた女子たちは、こぞって10分休みに2、3年生の教室へ向かう。私も波に入って女の先輩と男の先輩、1人ずつに会いに行く。女子高生のバレンタインだ。

バレンタイン。賑やかなその日は、去年までの私にとってはずっと特別な日だった。好きだった幼馴染に義理だと、恒例行事なのだと適当な理由をつけて毎年お菓子をあげていた。それができなくなったのは、中学の卒業と同時に彼に振られたから。
彼は私より性格が悪くて、私よりブスで、私より馬鹿な女と付き合っていた。それを知ったのはその時で、彼がその子と別れたと聞いたのは、私が振られて3週間も経たないくらいだった。

別に引きずってなんかいない。
もう彼に恋愛感情は持っていない。
たまたま、この日だから思い出しただけだ。
川辺の桜並木の帰り道は真っ白で垂れ下がった枝は凍りついている。静かで、聞こえるのは私の足音と川の流れる音だけだ。
まるで映画のワンシーンのようだった。
友だちに貰ったチョコの袋が音を立てる。
なんとドキドキしないバレンタインだろうか。考えないようにしたって、思考するしかやることのないこの状況では嫌でも頭の中に去年の私が雪崩れ込んでくる。かき消すように、温かいものを買おうと途中のコンビニにふらりと立ち寄った。

なんというか、貴重なものを目にした。
棚には何も入っていなくて、この雪でしばらく商品の入荷もできないらしい。
何1つ物のないコンビニ棚なんて初めて見た。寂しくて、でもなんでだか、心だけは落ち着いていた。

家に着くころにはもう雪はすっかり降り積もっていて、アスファルトも家も真っ白に姿を変えていた。

それは突然だった。相変わらず音のしなかった世界に、私じゃないもう1つの足音が追加される。
心当たりはある。
だけど、今は。今日だけは会いたくない。会ってしまったら、あの暖かくて苦しい時間の終わりに凍りづけた私が溶けだしてしまう。
雪のせいで、足をとられて走れないのだ。
雪のせいで、寒くて何も考えられないのだ。
雪のせいで、少し懐かしさに襲われているだけだ。

だから今私が動けないのは、私が弱いわけじゃない。
少し後ろで足音が消える。
音の聞こえない世界が戻ってきた。

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