ユーレイと雪/ぜんぶ雪のせいだ/きりん

ワガハイハユーレイデアル。名前は覚えてない。
今はとある眼鏡の青年に憑いています。
自分はユーレイにしては珍しく死んだ自覚があるほうで、そのせいで、というか自意識がいったん断絶しちゃっているから、生前のどんな縁でその人に憑いているのか自分ではもう思い出せない。私が憑いていても別に元気に過ごしているみたいだし、ちょっと申し訳ないけれど、まぁ自分の家みたいなものだと思ってる。ね?おうちさん。

今日、おうちさんはスキー場へやってきた。おうちさんが普段暮らしているあたたかな海沿いではなかなか雪が降らないから、私も久しぶりに雪をみる。憑いた人からはあんまり離れられないし、洋服もあんまり複雑なつくりは想像できないから結局いつも白いワンピース。ユーレイもなかなか不便なのだ。

生前はたぶん雪遊びにきたことがあった……気がする。コース半ばでお友達とはしゃぐおうちさんを頭の上から眺めていると、なんとなくもっふもふの雪の感触がよみがえってくる。ちょっと離れたところで、一人まっさらな雪の上にダイブしてみる。実体のない私のカラダは、何の跡ものこさずに雪の上へふわりと落ちた。そのままごろごろと転がってみる。雪へ沈み込む重さがないのはさみしいけれど、半分埋もれて見上げる雪空はいつかの記憶のままで、なんだか胸の奥が火を灯したみたいにあたたかくなった。

ちょっと離れすぎたみたいだから、一度おうちさんたちのところへ戻った。少しくだった端のほうで雪のかけあいっこしてる。ああ、おうちさんやお友達たちと雪合戦をしたり、カマクラをつくったりしたら楽しいだろうなぁ。普段なら彼らに干渉しようなんてぜったい思わないのに。なんだか体のまんなかがあったまって、逆にひんやりとした手足の感覚がもどってきちゃった感じ。
そうだ、ユーレイの必殺技「ポルターガイスト」!!あれを使えば、雪玉ぐらいはつくれるかもしれない。ちょっと不気味がられてもいいや!とにかく、雪をかき集めてぎゅっと固めていけばいいはず。おうちさんの傍らを陣どってふかふかの雪に意識を集中させる。うわ、全然動かない。片手ですくう感じをイメージして……。
なんとか片手分の雪を浮かせたときだった。わっ、と周りが騒がしくなった気がして、顔をあげた。
おうちさんがいない。
急いであたりを探しまわると、すぐ近くの崖を降りたコース外で見つけた。血は見えないけど、倒れて動かない。どうしよう、落ちてしまったのか。もしかして私の念の余波かな。浮かれてたから、暴発しちゃったのかな。せめてお友達のいる崖の上まで体を運んであげたいけど、手はすり抜けちゃうし、念では彼のうでぐらいしか動かせない。

どうしよう。
ぜんぶ雪のせいだ。

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