すずめちゃんが死ぬことになったら/遺書/やきさば

遺書って書いたことないから、どうすればいいかわかんないです。はは。なんか恥ずかしいというか、こんなことするためにわたし死のうとしてるわけじゃないっていうか。そもそも何も言いたくないから、何も残したくないから、投げ出そうとしてるわけで、死のうとしてるわけで、そんな状況で言葉綴ろうなんて考えおかしいですよね?

 

 

みぞみぞしてきました。なんで死のうと思ったとかそういうのを書くつもりは全然ないんですけど、みぞみぞしてきました。見下ろすと車がびゅんびゅんびゅんびゅん、まるで滝を落ちていくかのように走ってる、気持ちいいです。ここは風当たりがいい。いつもの牛乳も美味しい。

 

 

人を騙したんです私。ある人から頼まれて、写真を見せられて。そこに映る女の人と友達になってくれって。お金は渡すから、そして最後は裏切ってくれって。私その時お金に困ってたから、怪しかったけどお金受け取りました。そんなことで大金がもらえるならいいかなと思って。それで、その女の人と共同生活を始めました。彼女とはすぐに仲良くなれました。5歳くらい年上の、ヴァイオリン奏者なんですけど、あ、わたしはチェロ奏者で、一緒にコンビ組もうって。楽しいでしょ。すごい声が小さくて、聞き取るのがむずかしいくらいの人なんですけど、いつでもわたしに優しかったです。ショートカットで、年上のくせにチャーミングで、演奏前はいつも不安になるんですけど、弾き始めたらびっくりするくらい美しい演奏をするんです。彼女はわたしが彼女を騙してるなんて1ミリも疑わなかった。すごく音楽性が合って、一緒に演奏にしていて本当に幸せでした。

 

 

やだなぁ、またみぞみぞしてきました。このみぞみぞは嫌です。死にたくなくなってしまう。

 

そういえば好きな人にも気持ち伝えてなかったです。その人はわたしが騙していた彼女のことが好きなんです。そしてわたしはその人にとって別の男性が好きだという設定になってる。だからずっと伝えられなかったんです。その人は表情が顔に出なくて。いつも細い目と細い唇でたくさんしゃべってました。

 

好きだったなぁ。夜2人でコンビニに行ったことがあったんです。寒い寒い冬の夜で。ダウン着て、その下にもいっぱい着込んで。コンビニ行きました。2人で歩いて。彼が行くって言うからついて行きました。はじめは明日の朝ごはんのパンを買うっていう予定だったんですけど、そしたら彼、ベンチで待ってるわたしにアイス買ってきて。え、なんで?こんなに寒いのに?って。聞いたら、冬のアイスっていいじゃないですか、って。僕は好きです、なんて言うから、そんなこと言われたら、わたしも好きです、しか言えなくて。2人で寒い中、コンビニの前の外のベンチで並んで食べました。蓋とか上にかぶさってるビニールとかのゴミを彼は自分の分と一緒に捨てに行ってくれました。だからわたしも食べ終わりのゴミは捨ててあげました。そんな夜でした。それだけでした。でもそのときでした。好きになったのは。

 

 

好きだったなぁ。彼も彼女も。大好きでした。だからごめんなさいをしなくてはいけません。わたしの大好きなこの牛乳、買ってきてくれたとき嬉しかったです。どこでも寝てしまうわたしを、いつも机の下で寝ていたわたしを、起こしてくれるのが嬉しかったです。さようなら。

 

 

 

※「カルテット」というドラマに登場するすずめちゃんという架空の女性がもし遺書を書いたら、という設定でかきました。わからない人はごめんなさい。

0 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 50 votes, average: 0.00 out of 5 (0 投票, 平均点: 0.00,  総合点:0  |  
投票する為にはユーザ登録する必要があります。
Loading...

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。