血塗れ美人/フェチ/眉墨

顔をくしゃくしゃにしながら校舎を飛び出し、マシンガンを抱えた美人教師から逃げ惑う、返り血塗れのトリンドル玲奈。
先に棘付きの鉄球・ゴーゴーボールのついた鎖を振り回し、日本刀を持ったユマ・サーマンを追い詰める栗山千明。
サイコパスの凶悪殺人犯・二階堂ふみに手術台に縛り付けられ、ナイフで胸の谷間を真っすぐに裂かれる精神科医の松雪泰子。

私は、血まみれの美人を見ると身体が熱くなる。
もっと正確に言えば、虐げられ追い詰められたうつくしいものを見ると、なんとも言い難い精神的な快感を得る。

別にサディストというわけではないのだ。
いくら夜間のアルバイトをしているからって、革製のボンテージを着て鞭を振るいたいと思ったことは一度も無いし、よくあるエロ漫画のような陳腐な言葉責めも興味が無い。

私は、カワイイものを見ると衝動的にそのカワイイもののグロテスクな中身を全部暴いてやりたくなるのだ。

以前、劇団・柿食う客の『傷は浅いぞ』を観た。落ち目のアイドル・矢衾愛弓が、悪名高い敏腕プロデューサー・太刀花鞘花の手掛けるアイドル公開処刑番組「電波ガールズ」で再起をかけて奮闘する話だ。この「電波ガールズ」の売りはアイドルのグロいリアル。視聴者が見たいのはアイドルのゲロ、血、涙!グロいリアルだ!とプロデューサーの太刀花は熱弁する。まさにその通りだ。実際に在ったら放送コードで即打ち切りになるだろうが、私はただカワイイだけの一般人とそう変わらないC級アイドルが、追い詰められて泣きわめく様をビール片手に鑑賞したい。

思い返せば、幼少期の時分から、自分が心から愛しいと思うものへちょうどいい愛情を注げなかった。
今は目にするのですらおぞましいけれど、保育園に通っていた、心がまだまだまっすぐだったころの私はダンゴムシを集めるのが好きだった。
たくさん集めて、両掌の上へのせて、転がす。たまに私が何もしないと勘違いした一匹が、起き上がって数十本の脚をサワサワ揺らして歩き出す。
瞬間、私は掌に乗っていた沢山のダンゴムシを水たまりへ落とす。びっくりして泥水から這い上がろうとする虫たちを、飽きもせずずっと眺めていた。

未だに、当時のザンコクな享楽が忘れられない。
私にすべてを明け渡して甘えてくる犬猫や、何の曇りもない目で此方をのぞき込むまだお乳のにおいのする赤ちゃん。美しく優しく素直な女の子。純粋できらきらしたものや、完璧なまでに美しい愛の対象へ、心の全てがひきつけられると、どうしてもそれらが血まみれになるところを妄想してしまう。
全身の毛穴からダクダク汗を流して、血液を噴射させ、痛みと苦痛でドバドバに出たアドレナリンに任せて絶叫するカワイイものたちの姿。
妄想の地獄絵図に緩みそうな頬の筋肉を、歯を食いしばって真顔に止める。

以前、帰省した際、愛犬を愛でていた父が、奥歯を噛み締めていることに気が付いた。

幼少期の頃父の抱擁が怖かったことを思い出した。まだ骨が柔らかく、筋肉もたいして無いぶよぶよの小さな私を、あばらをへし折りそうなほどの力で締め上げる、タバコと汗の匂いのする大きな男の人。父が、無慈悲にビルを蹴倒す大きな怪獣のように見えて恐ろしかった。
この危険なフェティシズムは、どうやら遺伝らしい。

得体のしれないこんな愛を、不器用な愛と嗤って良い流して良いものかどうか、延々と悩み続けている。

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