当然のように/台風/みかん

 

テレビをつけながら、朝ごはんを食べていた。そろそろ選挙が近く、候補者の演説が映し出されている。原発問題や少子高齢化など、問題とされているらしいことをつらつらと話している。それが終わると、女性のニュースキャスターが台風のために事前投票をするよう呼び掛けていた。そうか、確か来週は台風が直撃するんだっけ。投票率の低下が叫ばれている中、自然現象によって阻まれるのは不幸なことだ。かと言って政治についての関心は一切なかった。選挙も行く気はない。支持している政党は無いし、政治についてどういった動きがあるのかも分からない。分かるのは、なにか色々とあるらしい、ということだけだ。そもそもないのかもしれないが、別に何でもいい。僕の世界にその世界は一切関与していない。無知な僕が首をつっこんでもあちらの世界に迷惑なだけだ。

朝ごはんを食べ終わり、リモコンでテレビを消した。スーツに着替える前に、ベランダに行って煙草に火をつける。台風で投票率が下がるのはどうでもいいとしても、美咲に会えないのは残念だ。

仕事を終えて、加奈子の家に足を運んだ。夕食の準備はされていて、既に食べていたことは言えなかった。

「来週は台風らしいじゃない」

「らしいね」

無理矢理ご飯を口に運ぶ。

「仕事がちょうど忙しい時期なのに、更に台風だなんてついてないわね」

「そうだね」

加奈子は既に食べ終わっていて、リモコンでテレビのチャンネルを変えている。僕はお腹がいっぱいになりながらもご飯を食べ続ける。加奈子の作る食事は比較的美味しい。しかし、いつでも美味しく感じるわけではない。当たり前の話だ。

「それじゃあ、来週会うのはやっぱり厳しそうね。折角私は少し暇になったところなのに」

「しょうがないよ。全部が全部上手くいく訳じゃないんだ」

「確かにそうね」

加奈子はこっちを見ずにそう言って風呂場に向かった。僕はまだ夕食を食べ続けている。

寝る準備を終えて、一緒に布団に入ると僕たちは事を始めようとする。ずっとしていなかったからか、加奈子の息はとても荒かった。

僕はすぐに射精した。

加奈子と僕はそろそろ結婚する。付き合って一年も経ってないが、僕たちはいずれ結婚するんだろうなとお互いに思っていたのか、特別な出来事もなく、すんなりプロポーズをして、すんなり結婚の約束をしたのだ。互いの両親には報告していて、了承も得ている。僕の両親は加奈子のことをとても歓迎していて、新しく娘が出来たみたいだと騒いでいた。結婚するといっても正直実感が湧かない。結婚すると僕たちの関係性に綻びが出来るとは思わないが、しかしもっと別の、より温かいものになるとも思えない。彼女のことは確かに愛している。僕たちはずっとこの先も一緒にいるのだろうなと確信している。しかし、何だろうか。はっきり言って、何も分からないのだ。

予報通り、台風は直撃した。朝、窓に吹き当たる暴風の音で目を覚ました。外を見ると、風と雨だらけだった。今日は美咲に会う日だというのに。しかしこれは些細なことで、特に気にも留めていない。周りの世界について、現象について、僕たちは文句を言わずに受け入れなくてはならない。

仕事を終えて十時になっても雨風は止まなかった。しかし、僕は気にしないで美咲を待ち合わせしているホテルに向かった。

美咲はバーで偶然知り合った。彼女は一人で飲んでいて、僕も一人だった。何の気もなく話しかけてみたらと、美咲は愛想のってきれくれた。話はとても弾んだ。すぐに距離は縮まった。そしてなにより、彼女はとても美人だった。それから僕と美咲の関係は続いている。加奈子にプロポーズしてからもずっと。

僕たちはすぐに事にとりかかる。美咲はセックスがとても上手だ。

僕はすぐに射精した。

事を終えると、二人で煙草を吸った。

「あなたとのセックスってつまらないわ」

「どうして」

「感じているのが顔に出ないから」

「そうかな」

「そうよ」

美咲は既に三本目の煙草に火をつけようとしている。

「セックスはつまらないけど、あなたは私のことをどうも思っていないから落ち着くわ。あなたの顔を見ていて安心する」

美咲は煙を吐きながらそう言った。美咲はそう言うが、僕は美咲のことはとても気に入っていた。それは加奈子と同じくらいに。しかし、美咲のことを愛しているというとそれも違う気がした。加奈子は愛している。といっても、これは相対的な気がする。世界の文法に当てはめて、ありきたりを演出している。しかしそれは悪いことではない。演出していること自体に僕はずっと前から自覚している。悪いことではない。

僕は再び彼女の上に乗っかった。考えていることは何もなかった。

僕はまた射精した。

すぐに射精した。

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