集中講義/杏仁

ダンサーインザダーク

全体的な印象としては、あまりスッキリするものではなかった。それは、セルマがかわいそうで見ていられない、というわけではなく純粋に何もうまくいかないもどかしさと残酷さを感じたからだ。
あまりセルマに同情はしなかった。視力を失い、会社もクビになり、信頼していた友達からも裏切られて結局死刑になる。かわいそうだ。かわいそうだけれど、セルマ自身からその状況を抜け出そうとする気持ちが感じられなかった。どんなにうまく行っていなくても周りの人たちはセルマに優しくしてくれる。もっと優しさに甘えればいいのに、もっともがけばいいのに、そんなことを思ってしまった。息子を助けるためなら他に何もいらない、真実を黙ったまま自分は死んでも構わない、そんな強い母としての気持ちからの行動だったのだろうが、イライラしてしまった。
セルマ自身が、「可哀想な私」を作り出して悲劇の舞台のヒロインを演じているという見方もできるように感じた。

また、この映画をミュージカル映画と呼ぶのかということについては疑問が残る。私は個人的に気分が暗くなるような映画は好きではない。しかし、この映画は気分悪くなることなく最後まで見ることができた。それは所々にあったセルマの空想ミュージカルシーンのおかげだったと思う。救いのないと言われるこの映画のストーリーの中で、セルマの現実逃避の楽しいミュージカルのシーンがあったことで私自身もセルマと同じように暗い現実から一旦逃避していたように感じた。

この映画を見ている時、セルマの頭の中をずっとのぞいている感覚だった。客観的に描かれているというよりは、セルマの頭の中の独り舞台という感じだったから、詳しい事情が説明されていなかったり、息子の出番が少なかったり、他の登場人物の心情があまり詳しく描写されていなかったりしたのではないかとも思った。基本的にずっとセルマの視点の、セルマだけの世界だという印象だ。

最後に、集中講義でみんなで映画を見たことで、自分では全く思いつかないような考えがたくさん知れて新鮮だった。私が映画に関して無知すぎるというのもあるが、カメラの使い方やその監督の撮り方の特徴、他の映画との比較など、知らないことだらけだった。そういう知識を持ってこの映画を見る人と、全く何も知らない状態で見る人は、全然見え方が違ってくるのだろうなあ、という感じだった。ネット上のレビューを見る限り、この映画を見終わった後二度と見たくないと酷評する人も結構いたようだが、結末を知った上でもう一回ダンサーインザダークを見たいと思ったというのが素直な私の感想だ。

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