酒飲み音頭/好きなこと/眉墨

 

三度の飯よりも酒が好きだ。
二十歳を越え、合法的に酒が飲めるようになってから、私に休肝日はほぼなかった。365日、24時間のうち必ず、おちょこ一杯分以上は酒を呑んでいる。

しかし諸君、私をただのアルコール依存症患者と思われては困る。
確かに、一時期メンタルの体調不良により、お医者様から飲むとアタマがふわふわするふしぎなお薬を処方されていた時期はあった。酒に対して大変申し訳ないことをしたと思っている。酒を逃げ場にした己を心から恥じているので、全国酒飲み協会の皆様には告げ口せず、私とあなただけの内緒の話にしてほしい。

酒は、酒飲みにとって日常からの逃げ場ではない。
我々にとっては、酒こそが日常である。

土曜または日曜、何の予定もない17時。
私は必ずといっていいほど、大衆居酒屋のカウンターにいる。
17時の開店したてに滑り込むのは、酒の安くなるハッピーアワー狙い&カウンターを確保するためだ。

頼むのはもちろん、〈ビール〉。
「とりあえず」ではない。飲みたいから〈ビール〉だ。
開会式に何を飲むかに迷ってはいけない。日々酒を呑むのなら、自分がどのようにアップをすればよいかを熟知しておくべきだ。
私が開会式に〈ビール〉を採用しているのは、飲食店店員的視点からすれば最も提供が楽ですぐ出てくる、かつ飲みなれているため、自分の体調がどのような状態かを把握しやすいからだ。

キンキンに冷えた〈ビール 〉を喉を鳴らして半分ほど飲む。
食道のちょうどど真ん中を綺麗に炭酸が滑り落ちていくと、全身の細胞が開会式なのに沸き立つ。最高の快感だ。プハーッ、この一杯のために生きてる!

さて、アップがキマったら次は食事を頼む。
基本的に第一投は、〈すぐ出るさっぱりしたもの〉だ。同時に揚げ物も頼む。余念はない。
美味しい肴を美味しく食べ続けるためには、何よりもそれを口に運んだ時の新鮮な感動を失わないことが大切だ。
ビールは万能なのでこの世のほぼすべての料理に合い、その炭酸と独特の苦みによって先ほど口に運んだ食事の美味さを一瞬でさっぱり流してくれるため、つい甘えがちであるが(私は考えなしにビールを飲み続ける人間を許さない。ビールに失礼では?)、それはビールへの冒涜だ。ビールへの甘えが過ぎる。
それぞれの肴の新鮮さを保つための役割をビールだけに託すのではなく、何にでも対応してくれるビールに感謝しつつ、シャキシャキしたお新香と濃厚な味わいのカキフライを交互に食べる。

ビールの炭酸で程よく腹が膨れた。次に何を飲むかが重要だ。
この時期、白子や牡蠣、カニみそなど特徴的で深い味わいの肴が増えてくる。
となると、必然的に傍に置きたくなるのは日本酒。それも、熱燗だ。
肴が温かいか冷たいか、日本酒の種類は何か、しっかり見極めながら慎重にその掛け合わせを決める。
ほんの少し舌の上にのせただけで破顔する濃い肴が、猪口を傾け流れ込んでくる日本酒と相まって、更に深い味わいになる。
日本酒の米の甘さ、凝縮された海鮮の旨味、それが合わさった第三の次元。心地よい酩酊へ誘われる。

さて、一件目で軽くひっかけた私は、住民の引っ越しが多いために(特に福沢さんは転勤族だし滅多に帰ってこない)寂しがり屋の財布と相談して、二件目を決める。
たいていは一年ほど通っているバーだが、たまに冒険して新規開拓を試みる。
今週の日曜も、17時以降はガラ空きだ。
冬の夕暮れ、美味い酒が飲みたくなったら私に電話をかけてほしい。

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