バタフライ・エフェクト/jboy

時空間を可塑的に取り扱うこうした「タイムワープもの」とでも呼ぶべきカテゴリーは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ドラえもん』、『時をかける少女』はじめ最近では『君の名は。』など、もはや一大ジャンルを築くに至っている。時間を巻き戻す、あるいは時間を進めて未来を眺めるというのは人類の大きな夢だ。タイムトラベル系の話というのは神話や民話にも多く見られ、それらが科学技術と結びつきSF作品として語られる場合、時空間は神のもとを離れていく。

エヴァンの父が言ったように、こうした時間、空間を可変化する力は本来神のもので人間が持つべきものではない。これが意味するのは、決定論への反発、懐疑である。すべての出来事はすでにその運命が決められており、その筋書きに沿ってしかあらゆる出来事は起こらないとするこの立場は、キリスト教的世界観のもとで神の権威付けに利用され、人間は神の定めた運命に従って生きるほかなく、神により救済される者とされない者とはすでに決定されているというカルヴァンの予定説に援用された。タイムトラベルが用いられるのは、専ら現在何か都合が悪いことが起こっていて、過去に遡ってその原因に変化を加えることにより、現在の出来事の在り方を変えようというものだが、エヴァンは自らに都合の悪いことが起こるたびにゲームをリセットして、セーブポイントまで戻ってやり直しを行っていた。エヴァンと世界とのつながりはすでに断たれ、もはや自閉した内的世界の妄想にふけっているだけである。あれもこれもと自分の周りの人間をすべて救い出そうとしたエヴァンだったが、最後のシーンで彼はケイシーとの出会いの場面に戻り、その後二人は全く接点を持たないように図ったが、なんとも都合の良い自己犠牲のナルシシズムを感じざるを得ない。ケイシーはエヴァンのことを知らず、エヴァンは一方的にケイシーのことを眼差すことができる。

我々は、すでに起こった出来事は自分の手元を離れ、全く干渉できないところに行ってしまうと思うが、アドラーは現在を変えてゆくことでその過去に起こった出来事の意味を変えることができると説いた。妄想に浸るか、現実に逃避するか……。いずれにせよ我々の未来は暗い。

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