バタフライエフェクト/やきさば

この映画を見たのは久しぶりだった。過去に見たことがあったはずだが、初めて見た感覚を覚えた。それは、この映画のストーリー展開の仕方にあるだろう。始まった当初からスピード感よく、さくさく物語が進んでいく。特に、主人公の成長過程は、ある一つのモノを媒体としてシーンが切り替わり、その演出方法になんだかニヤッとしてしまう。そして何より、主人公のビジュアルはかっこよくて見飽きない。彼を中心として何度もタイムスリップするストーリーである以上、彼のビジュアルはとても重要になってくる。主人公を演じたアシュトン・カッチャーは、その条件を完璧にクリアしていた。それもこの映画が大成した理由の一つだろう。

さて、この映画、注目したいのはそのはじめのシーンだ。暗闇の中ブラインド越しに光る懐中電灯の明かり。おそらくカメラが追われる存在だということがわかる。映画を見ているとき、わたしたち観客は、映画を見るとき、主人公の他にもう一つ、同一視するものがある。それは、 カメラだ。カメラに同一視するのだ。わたしたちはカメラの動きがまるで自分かのように、カメラの映し出す世界に自分が入り込んだかのような錯覚を抱いて映画を見る。むしろそうならなければ映画を見る、という行為は達成されない。そんなカメラが懐中電灯の明かりを怯えるように、避けるように動く。それは、見てるだけの私たちにまでゾクゾクした感情を起こさせる。なにがなんだかわからないが切迫した雰囲気。この映画がどういう内容なのか、これからどうなっていくのか、予兆する印象的なシーンである。

 

そんなシーンから始まりを迎えたこの映画は、主人公エヴァンが、幼馴染の恋人を救うために、何度も何度もタイムスリップし、人生を部分的に生き直す。この生き直すという行為。誰もがやってみたいと思ったことが一度はあるはずだ。いわゆる過去の黒歴史とやらを消去するために、もう一度人生をやり直す。なんて魅力的だろう。未来ではなく、過去にしか幸せはあり得ない、と教え込ませる大学の講義を受けていると、もっと幸せを謳歌するために、そしてもしかしたら未来を幸せにできるかもしれないという期待を込めて、過去をやり直したいと思う。けれど、現実はそううまくいかない。何度タイムスリップしても、誰かが不幸なままだ。最終的に幼馴染の恋人を含めた皆が幸せになるには、彼女を自分から切り離すしかなかった。ワクワクドキドキするSF映画かと思ったらなんて悲しいラブストーリーなのだろう。ってこんなオチだが、いまいちそれが気に食わなかった。なんだ一気に陳腐になってしまったよ、とそんな感じ。わたしがみたかったのはプュアで切ないラブストーリーではなく、心がスカッとするフィクションだらけの、作り物らしい物語だ。最後の最後である意味ありがちで、リアルっぽいよくあるシーンが垣間見えたのには幻滅してしまった。男が被害者面するのはどうも都合が悪い。

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