合法二股!/クリスマス/YDK

クリスマス

すっかり季節外れになってしまったけども、今年のクリスマスについて振り返ってみることにする。クリスマスと言えば24.25の二日間が恋人と会う日になるのが一般的だが、今年は25日が平日ということもあって多くの人が24にクリスマスらしいことを済ませたのではないか。かくいう私も24はしっかり恋人と過ごしたわけなのだけど。集中講義と恋人を天秤にかけて後者をとってしまったのだから今年も堕落した大学生をしっかりこなしてしまったと言える。悲しい話だ。

ところで、私には恋人といえる人が2人いる。あたまの中に疑問符が無数に浮かぶだろうか。しかしそれ以外に表現のしようがなく、私には愛する人が2人いるのだ。しかも2人とも違う年齢、違う性別の。だからこういう恋人と過ごす系のイベント(誕生日も含め)は、毎回シフトのようにどちらかにどちらかを割り振る、という形を取らせてもらっている。もらっている、という言い方をしたのは、その点について2人からは合意を得ているからだ。そう、わたしの彼氏も彼女もお互いを認知した上で、この関係を認めてくれている。ありがたいような、申し訳ないようなこの「合法二股」とでもいうような関係を築いてから、そろそろ半年が経つ。

この事実を、友人に打ち明けてみたところ、驚きとともにこう言われた。
「えっ…それってこれからどうすんのよ?ずーっと2人ともと一緒にいるのは無理じゃん。彼氏には結婚してほしいっていつか言われちゃうし、そうしたらさすがにどっちか選ぶ必要が生まれるわけでしょ?」
確かに、わたしももう大学3年生で、彼は4年生…そうなると必然的に将来のことをしっかり考え始めなければならないし、彼にもそういう風なことは言われている。さっき合法二股とは言ったものの、彼氏の方はあんまりわたしが彼女もいることにはいい顔をしていないのも事実で、なかなか難しい状態である。
「んー、そうねぇ。確かにこの前彼氏に言われたわ。『お前が彼女と俺のどっちか選ばない限りは結婚、っていう風にはなれないかもしれない』とか、『やっぱどうしてもお前の彼女さんに嫉妬してしまうのはどうしようもない』とかなんとか。申し訳ないけど、それに関しては謝るしかないし、謝ったところでどっちか選べるはずもなく、とりあえず現状維持で、とは伝えてあるんだよねぇ」
「うわぁ…彼氏さんかわいそうすぎないか…」
友人の心からの彼氏への同情を受けながらその日のおしゃべりは終わった。

「とは言っても……はぁ。」
そう、わたしとてちゃんと悩んではいる。このまんまではいられないことも、いつか来るこの状態の終わりのことも。しかし、本当に2人のことを愛している。できることなら2人ともと結婚したいし、2人ともと一緒にいたい。
「体が2つになったらいいのになぁ」
そんなありえないことを真面目に考えてしまうくらいには、だいぶ参っていた。だからってこんなこと、おいそれと誰にでも相談できることではないし、大抵の場合は「えっ二股最悪」みたいな反応をされて終わり。わたしだって最低だってわかってるのになぁ、でもやっぱ好きだし、どっちも選べないんだよ…の、堂々巡り。そもそもどっちか選べたらこんなことになってないわ!!行き場のないモヤモヤを煙と共に吐き出してみても、そこに煙は残っている。まるで、見て見ぬフリをしてなんとかやり過ごそうとするわたしを咎めているみたいに感じてしまうのは、勘違いなのだろうか。それとも。

そんなこんなで24日。イブは彼女とだった。中目黒のディナーを予約して、プレゼントを持って待ち合わせである。これだけ見れば普通のカップルのようなのに、どうして同性というだけで、はたからは「男がいない女同士の寂しいクリスマス会」みたいに見られちゃうんだろうなぁ、なんて思っちゃう自分に少し嫌な気持ちになる。自分がバイだとかレズだとか見られることには抵抗がないのに、彼女がそう見られるのが嫌なわたしが、もしかしたら一番セクシャルマイノリティへの偏見を持ってるのかもしれんな。
美味しいご飯を食べて、プレゼントも手紙も交換して、イルミネーションを見ているとき、ふと彼女が言った。
「私は貴女とずっと一緒にいられればいいの。男とか女じゃない。だって今幸せだから。」
泣きそうだった。でも泣く資格もなかった。彼女と一緒にいるということは、彼氏を捨てるということだ。そして何より、彼女の「女としての幸せ」を奪うことになる。結婚して子供を産むことだけが女の幸せではない事は百も承知なのに、社会的にはそれが当たり前のように幸せとされている。彼女の両親も、私の両親も、私たちの結婚式を心から祝福できるだろうか。私たちが愛されているからこそ、きっと一筋縄ではいかないし、苦しい部分もある。
「まーた、私の幸せを勝手に決めようとしてるでしょ。私の幸せは、私が決めるから貴女は口出さないでよね!」
わたしが返事に困ってるのを見かねたのかわからないけど、わざと明るい感じで彼女はそう言った。その真っ直ぐさが、愛しいのに怖いのは、女同士だからなのか。いつか彼女が、わたしの知らない男の横でウェディングドレスを着てこちらに手を振っている未来がやってきてしまう気がして、怖い。
「ねぇ、返事はー?」
何も考えてなさそうな瞳で彼女がこっちを見てくる。イルミネーションが映るせいでいつもに増してキラキラしていて、まるで子供だ。そんな風に見られたら、こうやってぐるぐる考えてるのが馬鹿らしいなと、思わず笑ってしまう。
「わたしも幸せだよ、本当に。ありがとう。愛してる。」
今伝えられるのはここまで。これからのことはまた一緒に考えられたらいいよね、っていう逃げ。

そして余韻に浸ってる暇もなく、25日は彼氏と過ごす。江の島で昼からデートして、関内でご飯を食べるっていう、クリスマスデートとしては申し分ないプランだ。昨日の彼女の話も彼氏にしながら楽しく過ごし、プレゼントをお互いに渡すタイミングで、彼が言った。
「来年とか再来年に、このまんま俺らの関係が続いていたら、その時は結婚してほしい。」
「…うん。」
「お前が彼女のことも好きなのはよくわかる。だからこそちゃんと伝えとかなきゃ、と思って。別に今すぐどっちか選べとは言わない、俺だって捨てられるの怖いしな!」
明るく伝えてくれる彼の内心を想うと、どうしてもいたたまれない気持ちになる。正直、彼女持ちの彼女…なんで意味がわからない。よく付き合ってるな、と自分のことながら彼氏に関心してしまう。それでもいいくらい好きとも言えるし好きじゃないとも言えるのかもしれないが、自惚れじゃなければきっと前者なのだろう。そして、こんないい人にそんな発言をさせなければいけない自分を恨めしく思うけど、そうさせる以外どうしたらいいかわからないのもまた事実だった。だからわたしは、彼にこう伝えるしかない。
「ありがとう。貴方のこと”も”愛してる。」

あーあ…なんで2人ともと幸せになる未来は選べないんだろうなぁ。前は、2人と関係を持てば間違いなく幸せになれると思ってた。男女両方好きなんだから、1人ずつ付き合えばいいんた!って。それが単純で浅はかな考えだったことを、今更になって痛感する。2人と付き合うということは、片方に割ける時間が半分になるのは当たり前で、2人がわたしのことを本当に好きであればあるほど、それは彼・彼女にとってつらいものになるのに。
「馬鹿だなぁ、わたし。」
2人からのプレゼントに囲まれながら静かに呟いた独り言に、答えをくれる人間なんているわけもなかった。そんなクリスマス。

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