五目いなり のすべての投稿

真剣勝負/共作/サラダ寿司

手加減無用/Side1/生野菜

祖父母の家が近所だったもので、昔はよく遊びに行っていた。家に行けば、おはじきやら、トランプやら、パズルやらで遊んでいたのだが、中でも私が好んでやっていたのは将棋だった。
将棋とはいえ、きちんとした対局ができるほど、まだ頭が出来上がってなかったもので、私がやっていたのは、はさみ将棋というやつだった。

両陣の端の筋に歩兵だけを並べて、自分の番が来たら駒を上下左右のいずれか一マスずつ動かす。それから、相手の駒を自分の駒で縦か横かで挟んだら、その相手の駒を取り去る。先に駒が無くなった方が負け、無くならなかった方が勝ちという、わりと単純なゲームだ。

私がはさみ将棋の対局を頼むのは決まって祖父の方。日頃、父や祖母なんかから、「じいちゃんは将棋強いんよ」なんて聞かされていたものだから、負けず嫌いな心が黙ってられなかった。

対局はなかなかいい勝負だった。
どちらも順調に駒を取っていき、どちらが勝つとも言えぬまま、勝負が続いていく。しかし、じわじわと戦局が変わってきた。祖父の駒が逃げ始めたのだ。待てい、捕まえてやる!と言わんばかりに私は駒を動かし、祖父を追い詰める。そこからは私のフィーバータイム。一方的に私が祖父を攻めて、祖父の駒を取っていく。最後、どうしようもないまま一駒だけ残った祖父の駒を、私の駒で囲んで取り上げた。

こんなふうにして、私は毎度祖父に勝っていた。「じいちゃんは将棋強いんよ」なんて言われてた祖父を負かして、ただただ私は誇らしかった。

だけど、そうもいかなくなってきたのが、私が小学校中学年になったくらいの頃。ある程度思慮分別ができるようになって、私は気づいたのだ。祖父は、わざと私に負けている。本当は強いのに、私を勝たせるためにわざと弱くなってるんだって。
そんなの、今まで勝って喜んでいた私が馬鹿みたいじゃないか。勝たせてもらう勝負なんて嫌だ。私はじいちゃんと正々堂々真剣勝負で戦いたい。

私は祖父に手加減なしの勝負を挑んだ。いいの?と、あんまり祖父の方は進んだ感じではなかったが、意地でも真剣勝負をお願いした。

対局は祖父の攻撃一辺倒だった。
手も足も出ないまま、みるみるうちに私の駒は取られていき、結果は私の大敗。私の思ってた以上の結果に堪らなくなって泣き出した。もうじいちゃん嫌いー!なんて、身勝手なセリフを吐いて、私は父に泣きついた。じいちゃんの将棋は強い。だけど、ただただ悔しかった。

それからは、また前のように祖父にわざと勝たせてもらい、たまにだけ真剣勝負をして、こてんぱんに負かされた。誰かに泣きつくことはなくなったが、負けたらやっぱり悔しかった。

未だに祖父との真剣勝負には勝ったことがない。これからも勝つことはできない。
今もたまに祖父の話が出てきたら、決まって父に将棋の話をされる。その度、今更になって祖父の優しさを感じて、やっぱり少しだけ悔しくなる。

制限時間/Side2/五目いなり

子供達が家を出て早幾年、以前よりも広くなった私の家のほど近くに、息子一家が越してまいりました。

わんぱくだった子供たちもいつの間にかに立派に育ち、気が付けば私もじじい、子供が生まれた時の感動はいつまで経っても色褪せないものですが、孫の顔を見ると息子がまだ幼かったころや先の苦労や幸せが一度に押し寄せて、一層顔が綻んでしまうのは仕方がないことでしょう。
これもじじいの特権だ、と思いながら孫の顔を覗きこめば、キャッキャと笑うのが愛らしくて、孫にとって良い祖父で居続けようと決心したのは、忘れもしない、生まれたばかりの孫の顔を間近で見た、その時です。

家が近かったせいでしょう、孫は私のことをいい祖父だと思っていてくれていたようで、度々遊びに来てくれました。
我が家にはおはじきや札遊びといった様な遊び道具しかなく、今時の子どもが欲しがるようなゲーム機の類はなかったのですが、それでも孫はよく私と遊んでくれたものです。
中でも一等将棋を気に入っていたようで、いつの間にかに中学校の制服に身を包んだ彼女は父親に手を引かれることもなく私の家に遊びに来ては、決まって私に「将棋をしよう」というのでした。

孫娘がまだほんの小さかった頃から妻や息子が言い聞かせるように「じいちゃんは将棋がとっても強いんだぞ」なんていうものだから、きっと興味をそそられたのでしょう、小さな両手いっぱいに駒を並べて、遊ぼう遊ぼうとせがむのです。
遊び方なんて教えたって分かりっこありませんし、それに私も可愛い孫娘と遊ぶのが楽しみで勝敗やルールなんてこれっぽっちも気になんてなりませんから、その日から私と孫は、はさみ将棋をして遊ぶことが日課になりました。

それは彼女が中学校に入学してからも変わらず続いていたのですが、中学生になってからでしょうか、彼女は私に「真剣勝負をして欲しい」と頼みだすようになりました。
どうやら孫娘は私がいつも本気を出していないと思っていたらしく、手加減をされていたら勝ったって悔しいと鋭い目で言われてしまいましたが、そんな提案、いえ、挑戦を受けて、私は困り果ててしまいました。
何故って、もちろん、私はいつだって孫娘とのはさみ将棋に、真剣勝負で挑んでいたのですから。

もちろん、それは対局に本気を出すという意味ではありません。
孫娘と遊ぶとという意味において、私は常に本気だったのです。
少しでも良い祖父として、孫娘の笑顔を見るために、わざとちょっとした手加減をして、真剣勝負をしてきたつもりでした。

けれども、私の手加減は、もう孫娘に笑顔を運ばないようでした。
そのくらい、長い年月をかけて見守ってきた孫娘の顔を見れば、じじいにだって、じじいだからこそ、分かります。
赤くてふくふくした顔で泣いたり笑ったり忙しい赤ん坊だった孫娘は、いつの間にかに息子、いえ、彼女の父親の手を離れ、今では私の目の前、将棋盤の前で真剣な目をして正座をしている、その成長ぶりに、私は圧倒されたのです。
熱くなる目頭を押さえながら、「いいのかい」と問いかけると、彼女は自信と喜びにあふれた笑顔で、「お願いします」と、頭を下げたのでした。

―――……結果は、私の圧勝です。
将棋クラブでも敵無といわれる私です、たとえはさみ将棋であろうとも、孫娘に負ける実力ではありません。
私の駒に囲まれた孫娘の最後の歩兵を摘みあげ、対局は終了しました。
指先で最後の駒を持て余しながら彼女を見ると、孫娘は下瞼にぼろぼろと大きな涙の粒を幾つも湛えておりました。
驚いて歩兵を盤の上へとり落とすと孫娘は堰を切ったように泣き出しまして、慌ててそれをあやそうとすると、きっと私が自尊心を傷つけてしまったのでしょう、「じいちゃん大っ嫌い~!」とより激しく泣くものだから、一緒に来ていた息子が飛んできました。
そのあとは泣きじゃくる孫娘を苦笑いを浮かべた息子があやすのを見ながらおろおろし、大雨の様に泣いたからでしょう、泣きつかれた孫娘は意気消沈といった様な顔をして帰っていきました。

孫たちが帰った後、私は、孫に嫌われてやいないだろうか、やっぱり少し手加減をしてあげるべきだっただろうか、もう遊んではくれないのだろうか、と寂しい気持ちを隠す様に、将棋盤を押し入れの中にしまいました。
よい祖父で居たいと願っていたのにあんなに大泣きさせてしまい、その成長に感動するあまりに楽しい時間を過ごすという目的を忘れてしまったというのなら、それは私にとっての真剣勝負ではありません。
私は初めて孫との真剣勝負を全うできなかった自分自身を、酷く責めました。

もうしばらくはこの将棋盤を使うこともなくなってしまうだろうか、と私は暗い押し入れに仕舞い込まれた盤を最後にそっと撫でましたが、案外、その将棋盤は早いうちに日の目を見ることになりました。
なんと翌日、孫娘はまた私の家へやってきたのです。

泣きはらしたのか少し赤い目をした孫娘は、それでも以前と変わらない明るい顔をして私の家にやってきました。
彼女ももう中学生、半分は子供ですが、半分は大人、きっと気を使われているのだなと思いつつも迎え入れると、驚いたことに、彼女はおやつのまんじゅうを頬張ったまま、「将棋をしよう」と言ってきました。
なんと言ってよいのか分からずにまたもおろおろしていると、彼女は照れたようにそっぽを向いて、小さな声で言いました。
「今日は、楽しく遊ぼう」と。

私たちの真剣勝負は、それからも続きました。
時折孫が「今日は本気ね!」と頼んでくることもありましたので、その時は私も、もう遠慮は致しません、本気で相手をするのですが、結果はいつも私の圧勝、それは最後まで変わることはありませんでした。
以前は孫娘の悔しさをかみしめた顔に罪悪感を抱いていたものですが、時折なら、きっとこれから彼女は色々な局面で強くなっていくのだろう、という期待を込めて、その泣きそうな顔を見ることができる様になっていました。

今でも時折孫娘達は私の話をしてくれている様で、「じいちゃんは勝ち逃げでずるいよ」なんて言われますが、勝ち逃げだなんて、滅相もないことです。
私はいつも、孫娘との真剣勝負を、全力で楽しませてもらっていたのですから。

ひとつ、知人の話を聞いておくれよ/自分大好き!/五目いなり

やれ、聞いてくれるかい、そこの方。
なあに、ちょっくら知人の愚痴を聞いて欲しいだけですよ、他の誰にも言えやしない、愚痴なんで。
え、本当ですかい、聞いてくださるたァ有難い。
いやあ、あいつ、本当にいやァ〜な奴なんですよ。
できる限りそばには寄りたくないと思っちゃいるけども、どうにもそうもいかなくてね。

まずは、外見。
いつもヨレヨレのジーンズと、ぶかぶかな黒いTシャツを着てるんです。
本人曰くどこかの観光地やらレストランのシャツだそうで、よく着るシャツは「一軍Tシャツ」だなんて言っているんですけど、そいつの格好の悪いことといったら、もう!
貴方も、見たことありますでしょう、御当地Tシャツなんてありゃあ、土産物屋の空きスペースを殺すためのペナントみたいなもんじゃあありませんか、そいつはそれを着てるんです。
歯磨き粉のパッケージのほうがまだマシな柄がついてるぞ、と言っても本人はどこ吹く風、嬉しそうにニューヨークの路線図が描かれたぶかぶかのTシャツを着て街を闊歩しているのだからどうしようもありゃしません。
流石に街を出るときは少しまともな格好をするらしいが、その格好とTシャツの区別もついちゃいませんでしょうよ。
噂によれば、冬でもTシャツで外をうろついていることがあるらしくてね、いくら人々に奇怪な目で見られようとも「時代が私のセンスに追いつかないだけだ」と言い張るのだから、最早手の施しようもない阿呆、阿呆なのです。
ああでも、センス自体は壊滅的でも、洒落っ気はあるみたいでね。
化粧の類は一切施そうたァしないくせに、いつも耳にピアスを三つもはめてやがる。
工具やら我楽多を模した珍妙な耳飾りは一等気に入りの品らしくてね、褒める喜ぶが、気持ちが悪いと貶すと更に喜ぶという不可解さ!
「ピアスは威嚇の為にしてるから、恐がって貰えたら本望だ」とか言っちゃあいたけど、こいつは本当にどうかしてるお思いませんかい?
人嫌いとは聞いていたが、一体何処へ向かっているのやら、きっと本人にしか分からないし、こちらも変人の仲間入りは願い下げ、分かりたくもないってもんです。
最近では「なんかもっと神聖な感じにしたい」とかなんとか嘯いて、ピカピカに磨いた五円玉を片耳にぶら下げようと算段をつけていやがるが、そんな事をされたら数少ない友人が可哀想だろう?
だから止めておけ、とは言うだけ言ってみたんですがね、まあ、そんなの聞くわけもないんですわ。
まあ初めから分かっていたから、別段怒りも湧きませんて、今更ですから。

いやあ、すいませんね、貴方、愚痴なんか聞いてもらって。
一応友人なもんで、悪いようには言えんのですよ、忌々しいことに。
ん、なんですって?
そいつは普通が嫌いなだけな天邪鬼なんじゃああないのか、って?
はあ、いえね、外見の事だけ普通が嫌なだけだろう、で済むんですがね、問題はそれだけじゃあなくってね。
奴の自分なりのこだわりが外見だけならまだしもね、あいつ、内面も相当ひねくれているんでね、それが全く困りモンで。

まずはなあ、どうしようもないくらいに自信家なところに腹が立つ。
小説を書くのがどうやら趣味の一つらしいが、面白いと感想を言えば「当然だろ」と鼻高々に返されるし、つまらないといってやれば「お前にセンスがないんだよ」と嘲笑わらってくるんだから、いやはやこれにはむかっときてね。
そのくせあいつ、自分が納得しないもんは、何処の誰に褒められようとも「こんなものを生み出しちまった自分自身に絶望だ」と唾を吐くから、人の事を不快にさせることにかけては天才的だと言わざるを得えねえっつうもんです。
料理や裁縫にもそれなりに嗜みはあるんだけんども、誰の評価を聞いたところで自分の判断とそっくりぴったりあわねえモンは「審美眼のない奴め」とその細い目で睨みつけるというのだから、面倒くさいったらありゃしない。
せっかくそれなりにいいもん作っても、ありゃあ性格のせいでだいぶ損しているところがあるなあと、常々思っちゃいるんですがね。
まあ、一通り褒めておいたり、ひたすら相槌打ってりゃあ勝手に機嫌も良くなるから、楽といえば楽ですけれど。
ああ、他にもあるんですよ、嫌なところが。
先ほども申した様に、どうにもあいつは人のことを不快にさせる物言いを躊躇わないところがありましてね。
嘘を付くのが嫌いだと言えば聞こえはいいんですけども、実情はそんなにいいもんじゃあないですわ。
どうも奴は自分の考えを秘めておいたり誤魔化すのが苦手なようで、普通人が言わない一言を躊躇いなく口にしちまう阿呆みたいで。
ああいや、まあ確かにあいつに悪意があるわけじゃあないんですよ、嫌な奴だが悪い奴ではないんでね。
ただ本当に、奴は他人の言われたくないことをズバッと言っちまうところがあって、なんというか、すぐに人を傷付けちまうんですわ。
その点のついては本人も一応反省はしているみたいなんですがね、やっぱり嫌な奴なんですよ。
何て言うと思います?
「こっちは嘘を言ってないのに相手が勝手に傷つくだけだから、面倒見切れるわけがない」って言うんですわ。
頬まで膨らましやがって、改善させる意思なんて、これっぽっちもありゃしねえ。
友達が減るぞ、と脅してみても「それくらいで離れるやつは別に良い、勝手に離れていったらいいさ」と笑っていうのだから、まったく嫌な性格をしている奴もいたもんだ。
その上どうにも常識も持ち合わせちゃないようで、社会のうちの了解ごとも下らないと切り捨てる程の自分勝手な面もありやがる。
他人と行動することが苦痛で仕方ねえみたいですけども、その根本には「自分の責任は自分で取るから、お前もお前の責任取れよ」という冷酷極まりない信念があるんでしょうよ、基本的に他人の失態、成功については一切の興味を持たねえ。
例え他人の失敗が自分に影響を与えようとも「まあ、関わると決めたの自分だしな」と、当人の気持ちには一切の配慮をせずに他者の想いを拒絶しやがるんでございます。
かく言う私もあいつの頼まれごとを何度か間違ってしまったことがあったんですが、あいつその時「あんたに頼んだ自分の責任だからな」とかなんとか言って、謝罪も受け入れやしねえのです。
全く、嫌な奴でしょう?
例え誰かが困っていたとしても「手の届かんところはどうしようもないでしょうよ」とか言って、手の届く範囲よりも外の人には手を伸ばやしないし、内の人にも求められるまで助けは出さないのだから、これこそ冷酷非道というやつだ。
最近では人嫌いが過ぎて山奥に籠ろうと狩猟の免状まで取ってきたが、確かにこんな奴は人里よりも一人寂しく山奥に暮らすがいいに違いない。

こんな輩が今までよく生きてこれたなあとは、私も常々思っているんですけどね、貴方もお思いになるでしょう?
だからね、聞いてやったんですよ、これから社会に出なきゃならんというのにお前は一体どうするつもりだ、ってね。
そしたらあいつ、ニヤッと笑って言いやがった。
「成る様にしか成らんだろうし、今まで生きてきたのなら死ぬ迄は生きてられるさ」
ってね。
いやあもう、屁理屈ばかりで嫌な奴だと、私は改めて思い知らされちまったね!
まあ、なあに、私も本人にもっと生きやすく生きればいいのにとは常々思っているからね、本人にも言うんですよ、色々と。
けんどもあいつは私の批判を聞いてもこれっぽっちも気にかける素振りがないときた。
どうにもあいつ、今の生活を大層気に入っている様で、何ひとつ不自由も覚えてはいないんだとよ。
成る程これだけの自信があるならさぞ人生も楽しいのだろうなと、嫌な奴だけど思っちまうことが多くてね。
たまに私も、あいつの生き方が少し、すこーし羨ましくなってしまうんでさ。
ま、そんなことを言うとあいつは「自分で勝手に幸せになったらいいのに、馬鹿だねあんた」なんていうんですがね。

はーあ、話したら少し、すっきりしました。
これからそいつとちょいと出かける用事があるんで、また何かあったら聞いてくだせえ、次は貴方さんの愚痴も聞かせてもらおうかな。

カエルたちはよく眠る/あったかい/五目いなり

……ん?
あれ?
あちゃあー、やっちゃったよ、もう10時だ。
アラーム、6時からずっと鳴りっぱなしだったのかな、全然聞こえなかったけど。
あーあ、一限どころか二限もこれじゃあ間に合わないね。
夜更かしすると、外が明るくなるまで起きれないから嫌だよね、そのせいでカーテンも閉められないし、寝坊助には困ったもんだよ。
……え?
だから無理だって言ったんだ、って?
んー、いや、まあ、言われたけどさ、仕方ないでしょ、美味しい朝ごはん作ってあげたかったんだから、そんなに怒らないでってば。
ま、でも起きれなかったもんは仕方ない。
仕方ないから、今日の朝ごはんは適当に昨日の残りでいいよね?
そう、春雨スープ。
すぐ食べれるし、きっと体も温まるよ。
つるっと食べれちゃうから、食欲ないとか言わずにさ。
朝寝坊した奴がいうのもあれだけど、朝はしっかり食べた方が良いって。
だから、いつまでも布団に入ってないで、早く起きなよ。
ほら、ご飯の準備してくるから、窓開けて換気しておいて。
どうせなら朝の綺麗な空気を暖房に掛けて、温まった方が心地良いでしょ。
……あれ、そういえばゴミ、捨てておいてくれたんだっけ?
ああ、ありがとう、通りでシンクが綺麗だと思ったよ。
やっぱり朝早く起きてゴミ捨てるの、難しいよね……夜更かしの良いところって、夜の内にゴミ捨て忘れないことだね、あんまり早すぎると、怒られそうだけど。
いやー、それにしても、寒い、寒い。
換気したいとは言ったけど、やっぱり外の空気は冷たいね……って、何布団入ってんの。
いやまあ、寒いけど。
……。
……もうちょっと向こう寄って。
……ふはあー、やっぱり布団はいいわ……。
ぐあー、これは起きれない……子供体温に捕まって起きれない……なんで君そんなにあったかいのさ……。
……って、やばいやばい、鍋煮えちゃってる、火掛けっ放しだった!
うわー、スープ蒸発しちゃってるわ……まあ、食える食える、大丈夫。
ちょっと、テーブルの上片付けておいてくれないかな、昨日の空き缶とか瓶とか、おつまみとか。
うん、コップも。
全部こっち持ってきて、テーブル綺麗に拭いといて。
あとついでに、もう窓も閉めちゃっていいよ、どうせあとで洗濯もの干す時に開けるし。
あ、お箸置いといてくれたんだ、ありがとう。
早速、食べようか。

いただきます。

……ん、食べないの?
調子悪い?
え、あんまりお腹減ってない?
……でも食べた方がいいよ、胃の中アルコールとおつまみだけで学校行くのはあんまりお勧めしない、いやこれほんと。
美味しいのになあ……じゃあ置いといてくれたら、食べるから。
あ、そう言えば、昨日見たやつ、今日返さなきゃいけないんだっけ?
続き早く観たいな、今日、ついでに続きも借りちゃおうか。
……あ、そうだったっけ、今日出掛けるのか。
うん、いいよいいよ、行ってらっしゃい、DVDは返しておくから、うん。
とりあえず続きは明日にしようかな、どうせなら一緒に観たいしね。
……ふー、温まってきた!
あれ、食べないの?
……ああ、そっか、お腹減ってないんだっけ、要らないなら食べちゃうよ。
うん、ちょっとでも食べといた方がいいって。
……ほら見ろ、美味しいだろ!
へっへっへ、じゃあお皿洗ってくるから、それ食べちゃってね。
終わったら、洗濯と掃除、頼んだよ。
三限は行くんだからね。

孤独(物理)のグルメ〜五目いなり、鹿を獲る編〜/食レポ/五目いなり

生まれてこの方21年、人間嫌いを拗らせて、食事とはコミュニケーションの一環ではなく純然たる生命活動を保持する為の義務と成り下がっているこの私、日々の食事情にはそこそここだわっているつもりがあるにも関わらず、気が付けば怠惰が過ぎて1日を3粒のぷっちょで過ごすことも少なくはない今日この頃。
なにぶん食には気を使っているが故にコンビニ弁当や菓子パン、カップ麺の類を食事と認めず、また金の無い出不精に外食はハードルが高すぎて、結果スーパーで買ってきた何時ぞやの萎びた芋を煮付けるしか無い貧乏学生の鑑のような生活をしばし送っていたのだが、
肉が食いたい。
一袋21円のもやしでも命は食いつなげるものの、料理スキルに定評をつけたいこの私、味気ないのはいやなのだ。
やっぱりそこに、肉、肉が欲しい。
しかし現実は非情である、給料日の数日後には財布の中身と口座の中身が3桁を切る私の手は、滅多に肉には届かない。
スーパーに陳列される牛、豚、鶏は財布の敵だ、もっと財布に優しい肉はいないのか……

と、いうことで狩って参りました、鹿。

昨年夏に「人間と関わりたくないから山に住もう」思い立ち狩猟免許を取っていたことが幸いし、居酒屋で偶然知り合ったワイルドな狩猟系おじさまと意気投合、丹沢のお山の一角に狩猟へ行って参りました。
人間と関わらないために取った資格で人間と関わるとは奇ッ怪極まりないのだけれども、まあそれも人生、多少のことは諦めなければやってけません。
狩猟と言っても私は銃を持ってはいないので、ベテランのおじさまたちの後をてくてくついて行くだけだったのですが、人嫌いが過ぎて予定が決まった直後に体調を崩したり、本気で狩猟をするとは思っていなかったらしい両親に呼び出されたり、前日は緊張のしすぎで眠れなかったりと人間とのコミュニケーションが極めて下手なことを再確認させるような様々なエピソードを乗り越えて、やっとこさなんとか山へと漕ぎ着けて、結果、鹿を一頭仕留めることが出来ました。
仕留めたのはもちろん私、ではなく川まで鹿を追い詰めた猟犬らしいのですが、どうやら半矢の鹿だったらしく、少々血が回っている模様。
それでもうまく血抜きをして、今や肉の塊となった鹿肉が、ごろごろごろり、冷蔵庫に七つほど転がっているのが現状です。
鹿肉は獣臭さがあると聞くのでオリーブオイル、赤ワイン、ヨーグルトに漬け込んで臭みを抜こうとしてはいますが、いやはやどんな味になるのやら。
今や肉となった尊き一頭の鹿の命、この五目いなりは誠心誠意美味しく食べると誓ったわけではありますが、いや本当にどうすれば良いのでしょう。
なんせ鹿肉なんて調理したことはおろかきちんと食べたことだってありません、何をしたら美味しいのかなど知る由もなく、ただただ戸惑いに暮れるばかりが人生です。

……え?結局ここまで来て、食レポをしていない、ですって?
ちょっとちょっと、そこの哀れな人間さんよ、どうやったって一日二日で週末まで生きていた獣の臭みが抜けるわけがないでしょう。
本来食事とは自分が生きるために他の命を頂く神聖な行為です、人間が取り決めたルールなどに従って命を最善の状態でいただかないなど、あってはならんのですよ。
け、決して締め切りを過ぎた言い訳などでは断じてなく!

……と、いうことで、まだ食してはいませんがこれが私の食レポでありました。
もちろん下準備だけして食わないなんて愚かなことはするつもりもありませんので、本日大学から帰ったら、早速調理を開始する予定であります。
美味しくできたら、スタジオへ鹿肉料理を持っていっても良いやもな、と考えていたりなかったり、結果は明日の発表です。

果たして私は命を調理し、食すことができるのか。
財布が空っぽでも肉にありつくことはできるのか。

鹿に恥じない料理が!
この、五目いなりに!
できるのか!?

神のみぞ知る驚きの調理編、実食編、このあとすぐ!?
(…to be continued?)

清田スタジオ男子受け攻め診断/気になるあの子/五目いなり

※この診断はあくまでジョークです。気を悪くしないでください。
※独断と偏見による【文章特徴の擬人BLキャラ化】です。決して【作者本人】の診断結果ではありません。
※便宜上先週のグループ分けに名前の載っている受けさん(仮)・攻めさん(仮)のみを対象としています。
診断結果はあいうえお順です。(現在診断途中のため、三年生のみ作成)

気を悪くしないと約束して頂けた方は、続きをご覧ください。

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