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君が駆け上がる上り坂/昨日、髪を切った。/みくじ

 

昨日、髪を切った。
スタンプで鼻から下が隠された美容室での画像ツイートには5桁のいいねが付いている。橋本〇奈のちょっとした自撮りを超える数だ。

こんな所まできたのか。随分と長い道のりだった気もするし、でも最初からこんな予感がしていたようにも思う。

メディア欄を遡ると、ライブの写真で着た衣装やライブのグッズ、メンバーとの自撮りが並んでいる。
初めてライブをしたときは新幹線の切符も買えなかった彼が、上京して一人暮らししている。

自分でたしか私の6つ年上で、どこか抜けていて放っておけない、周りに世話を焼かせるのがうまい末っ子気質。
前髪の隙間から覗く丸い目はくるくると映すものを変え、マスクで隠された口から発される声は落ち着いていて、少し掠れた柔らかいテノール。

「顔も歌もダンスもまだまだだけど、声だけは誰よりもかっこいい自信がある」おちゃらけた態度から覗く卑屈さと、一欠片の自信。

たしかに顔はすごく整っている訳では無いし、生歌は音程もリズムも歌詞も飛ぶ。
それでも試行錯誤して何十回もリテイクした音源を上げること、配信中は一人ひとりのリスナーに言葉を返すこと、一生懸命かっこよく見える角度を探していること、そんなところが何より眩しい。

私が彼に出会ったのは7年前、動画投稿サイト。アニメキャラクターの声を真似てアテレコした動画がその頃は人気で、その中でも一際注目を集めていたのが彼だった。
つまるところ人気アニメの人気キャラクターを演じる人気声優に声が激似だった。

こんなに声も演技も似せられて、いかにもキャラクターの言いそうなアテレコ台詞も考えられるんだ。
きっと私と同じでその作品やキャラクターが好きで、でもって投稿ばっかりしているから学生なのかな、どんな人かな。

彼のコミュニティページを開くと、実はメインは動画投稿ではなく音声配信だったことが分かった。
この時中学生だった私のインターネット接続手段らガラケーか実家のリビングにあるパソコンだけで、SNSもよく分かっていなかった。コミュニティの履歴を見ると夜に配信していることが多かったので、とりあえず夜は極力投稿サイトに張り付くことにした。

数日後、両手の指では足りないくらい見た動画をリピートしていたところ、リアルタイムの音声配信をしている通知が流れた。

コメントの流れるゲーム画面と、イヤホンからは何人かの声がする。呼び合う名前とつけられたタグからよく一緒に投稿しているメンツだと分かった。
たしか、銃を持ってフィールドを駆け回るようなゲームだったと思う。その時はまだ6人の男の声を判別なんて出来ず、ゲームもし慣れないしコメントのリアルタイム感にも付いていけなくてぼんやり見ていた。

友達同士でゲームをして盛り上がる楽しげな空気は、ずっと手の届かない憧れだった。
自分もその中に入れる、入りたい。

「これ終わったらまた枠取ろうかなあ」

わっとコメントが盛り上がる。
そろそろ寝る人、別の放送に呼ばれる人もいて、お目当ての彼の一人喋りがついに聞ける。

「えー、聞こえてるー?
おっ シアン また1コメじゃん早いなー
夜猫 さっきぶり、
姫いちご*さん こんばんは、
†黒絽 †?なんて読むのかな?はじめまして~、
田辺ゅぅき :さっきの放送めっちゃウケましたw   ね!?すごかったよね○○くん雑魚過ぎてめっちゃおもろかった~……」

それまで動画につけるコメントは一方通行な言葉だったのに、ここでしたコメントは彼の声で読み上げられるかもしれない。返事が来るかもしれない。ここに流れるコメントはみんな彼と会話するためのもの。
何もかもが新しくて、画面の向こうにいたのにこんなにすぐそばに居ることにぼんやりと高揚感を感じた。

「あ、そうそう先週ね○○くんまたやってたよねー、
月琉@なめこ:○○くんとまたふたり放送やらないんですか!? やるやるやる多分あした
ミルキー☆彡.。:今なに飲んでるんの? これはねー、オレンジジュース
最近いつもオレンジジュースですね そうだね美味しいから好き」

柚花?読み方なんだっけ 違ったらごめんね~ 明日の体育やです~(><) 俺は球技以外ならわりと好きかな~
サカナふぃっしゅ☆ いや魚魚ってなんだよ 好きな季節ってありますか? うーん、前も言ったけど夏が好き ベタだけど花火大会とか」

ああ、毎日ここに来て彼のことを知れる、彼に覚えられることだってある。彼の知り合いのことだってもっと分かりたい。

そこから私の生活の中心はこの放送になった。

夜のリビングでパソコンを使えるように、母が作っていった料理を早めに温めて食事を取り、さっさと洗い物をしてそれとなく父と弟を自室に行かせる。
放送を1分1秒でも逃さないように勉強道具もリビングに持ってくる。

彼のコミュニティで放送していなくても、彼がコメントしたり一緒に放送する可能性のある配信者をチェックする。彼の好きな歌を聴いて彼の面白いと言っていたアニメを見て。

今思い出すと健全な中学生だったとは言い難いが、いやむしろ本気で友達のいなかったからこそ彼に出会ったのか。
まあともかく、私の青春は一介のアニメ声優好き大学生の音声配信に捧げられた。

針のむしろのような教室も、怒鳴り声が満ちる家にも無かった温もりが、ネット上のあの空間にはあった。
オタクだから、とか根暗だからって友達が出来ないわけじゃないんだ。社会人と学生でも友達になれるんだ。年が離れていても仲良く出来るんだ。好きな人の真似をして、人に認められることがあるんだ。

私は何も知らなかった。ここで知ることが出来た。同じ時間を共有して、バーチャル空間でずっと一緒に居てくれる。いつでもそこに行けば声が聴ける。
なかなか出来ないことだと思う。

彼の周りにいた配信者たちは次第に就職活動や仕事で配信を辞めた人もいた。ふらりと戻ってくる人も、極たまにだけ配信する人もいたけれど。
毎日のように何年も配信し続けた彼はずっとずっと人気者になって、私が彼に出会ったのと同じくらいの年の子だって彼を知っている。

本屋のコミックコーナーで流れてきた歌声が、もう何年も聞き続けた声で、初めて聞いたあの声は私と同じ大学生だった。
通販でしか買えなかったCDだって、タワレコにびっしり並べられている。
やっぱりそれでも、マスクを着けた斜め上からの自撮りの向こうの声が私だけに届いたような、そんな夢をいつまでも見続けたい。

バタフライエフェクト/みくじ

 

作中で大きな変化があった過去の改変だけまとめて、以下の5つは番号で表記する。

改編1ケイリーをペド父から救う。

結果:エヴァンとケイリーが恋人。トミーが虐待されてぐれ、エヴァンを襲い反撃され死。

改編2トミー更生のため交渉。しかしレニーがトミーを刺す。

結果:レニーが病む。

改編3ダイナマイトのいたずらを阻止。

結果:エヴァンの身体欠損。トミーとケイリーが恋人。トミー更生。エヴァン母肺がん。

改編4ダイナマイトを先に使う。

結果:ケイリーが死ぬ。

改編5初対面のケイリーを遠ざける。

結果:ケイリーとは赤の他人。エヴァンの横にはレニー。

 

最後にエヴァンが人生を共にすることとなったのがまさかのレニー。見てすぐは意外に思ったが、案外エヴァンとレニーの接点は多い。というより、エヴァンとレニー、ケイリーとトミーの関係は相補的とみることができる。

というのも、エヴァンとレニーはどちらかが病院にいることが多い。さらに一方が病んでどん底にいるとき、もう一方は大学生活をエンジョイする。またこの二人はどちらもケイリーの恋人になる展開がある。(まあ4人グループのうち2人は兄妹だから当然かもしれないが、エヴァンとレニー以外の恋人候補は出てこなかった。)

またトミーとケイリーは、どちらかが死ぬ展開がある。また父からの虐待も、どちらかがされなければもう一方に行くようだ。

 

こうしてみると、確かにエヴァンはケイリーの自殺をきっかけに過去をやり直し始めたが、ケイリーよりもレニーとつながりがあるのもうなずける。サンパーとレニーの体系が似ていて最初は勘違いしたが、最後の描きかえられた現実でサンパーは登場せずルームメイトがレニーになっているところを見ると、サンパーはレニーの代わりだったんじゃないかとすら思える。レニーが出てくる改編1の後にはレニーがおらずサンパーがいたが、その後はレニーがいてサンパーはいない。こう見るとエヴァンはふくよかな男性と縁があるのか何なのか。

話が進むごとに薄れるトミーもなかなか気になったところではある。犬を燃やしたり映画館で暴れたり、ディ〇・ブランド―を連想させるような悪魔のようなガキだったのに改編3以降は誰だお前というくらいのおとなしさだ。改編1でもみじめさは漂っていたし、幼いころぶっ飛んでイカレていても大物にはなれないやつだったといいうことだろうか。

商品企画/みくじ

【商品スケッチ】

【ネーミング】
カクテルのようなハーブティー
~ルイボス・マティーニ~

【コンセプト】
カクテルのようなハーブティー
自動販売機やキオスクで気軽に買える、ちょっと特別な飲み物。

【ターゲット】
お酒が好きな人も、飲めない人も。頑張った日、疲れた日に気分を変えたい人に。
またルイボスティーはノンカフェインで女性に人気があるので、美容や健康に関心の高い女性に。

【訴求ポイント】
ペットボトル飲料の手軽さとラグジュアリーなイメージ。
パッケージにはカクテルグラスをイメージさせる細めのボトル、繊細で可愛らしいエルダーフラワーとウサギをラベルに印刷。

【内容・価格】
ルイボスティーをベースに白ブドウの果汁とエルダーフラワーの風味をつける。
(マティーニはジンとベルモットがベーシックなレシピで、ジンの代わりに様々な蒸留酒を使うバリエーションがある。ベルモットはニガヨモギなどの香草で香り付けした白ワイン主体のフレーバードワイン。エルダーフラワーはニガヨモギと同じキク類だが、マスカットのような甘く爽やかな香りでヨーロッパではシロップにされる)
甘さは無糖~微糖
450ml 170円 程度

 

【着想・きっかけ】

カクテル風のペットボトル飲料というのは夏に飲んだティーズ〇ィーの緑茶モヒートをふと思い出して、どこか惜しい商品だったなとなったからだ。

バイト退勤時にキオスクで買ったのだが、その時私はバイト先でクレームがあったか何かで疲れていて、普段買わないような新商品でも買って気分転換したかった。とはいえ自炊もあまりしていないし、気分だけでも体によさげなものが欲しいのでチョコラテなんかは控えたい。でもスムージーや野菜ジュースより滑らかで飲みやすいものがいい、ぐったりで心が赤ちゃんまで退行しているのでもっとソフトなのがいい。などくどくど考えた末の緑茶モヒートだった。

ちょうどミントブームに乗じて私もモヒートやチョコミントにはまっていたし、ミントの清涼感は気分転換にちょうどよさそうだった。結論としては、癖になるようなミント感はあるが、味はまずいとも美味しいとも言えなかった。

学校とバイト先を往復する毎日で、連勤で疲れていて自炊も崩壊気味なとき、寄り道できるのがコンビニやキオスクくらいでも自分に優しくしたい。こんな気持ちの時にちょうどいいものが欲しい。ちょっと珍しくて、さわやかさがある、かつちょっとおしゃれっぽい飲み物が欲しい。これが最初の着想だった。

 

あと、最近ちょっとした健康ブームというか、いい加減コンプレックスの肌荒れを改善しようと試行錯誤しているのだが、カフェインも砂糖も乳化剤も入っていない飲み物が案外売っていないと思ったのがある。特にホットドリンクだとほぼ無い。ホルモンバランスの乱れ、PMS、冷え症、肩こり、頭痛などなどだいたいカフェインと乳脂肪と砂糖は取らない方がいいとか。スター〇ックスに行けば行くほど生理前のもろもろの身体のバグが重症化するとな。何もこれらだけが原因ではなく、睡眠やストレスなどもあるんでしょうが、避けられるなら避けておきたい。

別段人より忙しくない、むしろ暇な方であろう大学生でも日常生活にコンビニは不可欠なのだから、コンビニや自販機に夏の麦茶以外でもカフェインも砂糖も乳化剤も入っていない飲み物を置いてほしい。水以外で。水は常温でも販売してほしい。という気持ちがあったのでルイボスがベースのハーブティーを考えました。

 

そこでルイボスと合うハーブで、なるべく飲みやすく、珍しく、イメージの良いものを探した結果がエルダーフラワーです。マスカットのような香りでリラックス効果が高く、白くて小さな花。よくウサギが下に隠れているとか。日本ではあまり聞かないし、西洋では古くは魔除けとして用いられたミステリアスさがありながら、飲みやすさや可愛らしいイメージもあります。完璧じゃないでしょうか。

さらに効果も 抗アレルギー、抗酸化、抗ストレス、抗炎症、抗菌、発汗促進、保温、鬱滞除去(循環刺激)、利尿、解熱、免疫賦活、鎮静 と幅が広い。インフルエンザ予防にもなるそうです。すごい!

 

というわけでエルダーフラワーのハーブティーをポチりました。早くコンビニ自販機でも買いたいなー。

ES/みくじ

【素敵な人生を送る十カ条】

1、朝起きたらあたたかい飲み物を飲む。目も覚めるし腹痛になると楽しくないから。

2、暗い気持ちになったら迅速に寝る。駄目なら1分間目をつむって何も考えない。

3、欲しいものは紙に書く。買える者でも買えないものでも。

4、きれいだと思ったものは紙に描く。後で思い出せるから。

5、文庫本を常に1冊は持ち歩く。紙の本をいつでも読める安心感が得られる。

6、熱中できるものが無い時は流行っているものを片端からする、見る。

7、思いついたらすぐに行動できるように事前に予定を詰め過ぎない。

8、面倒なことは起きてすぐ片付ける。

9、直感を理屈で否定しない。直感はまだ言語化されていない思考だから。

10、これから見つけていきます。

 

 

【将来、自分の子供が大学に進学するにあたってアドバイスするとしたら】

将来自分が子供を持つか、また持ったとして大学に進学するのかは分からないが、大学進学を控えた親しい人に助言するならこうだ。あなたが大学で学ぶことが、本当に好きで四六時中そのことばかりを考えてしまうくらいでないのなら、大学には働くとき役立つ知識と学位をもらい友好関係を広げに行くと思った方がいい。そして後者ならできるだけ効率よく楽しくしたらいい。前者なら私が助言せずともどうにでもなる。

あと、できるなら大学生のうちに一人暮らしはして欲しい。大学生はある程度時間に融通が利くし、自分の家がある楽しみも自分の家を管理する面倒も覚えるのにはいい機会だから。

 

【立方体を使って新しいスポーツを作ります。ルールを考え、そのスポーツの醍醐味を教えてください】

1辺50センチの立方体の上に乗ります。膝を付けた状態でスタートからゴールに向かって直進します。立方体から降りなければ何をしてもかまいません。他の人と競って先にゴールしたら勝ちです。

このスポーツの醍醐味は不毛さです。立方体の素材やフィールドによって多少異なりますが、基本的に立方体はほとんど動きません。ここで人に勝とうと懸命に少しでも進むか、誰かがゴールするまで立方体の上でのんびりするか、立方体から降りて棄権するか、不毛な条件下ではどの選択もプレイヤーの個性が出ます。

 

【あなたを物に例えると何ですか。その名称と理由】

とろけるプリンです。容器から取り出せず、やわらかいけれど液体ではない点が自分に似ていると思います。自分の考えや好みはなかなか変わりませんが、行動はすぐに変えられます。

 

【今までで忘れられない味は】

初めての飲んだ“桃の天然水”です。

初めて飲んだのは小学校4年生の時。それまでジュースなどは家庭の方針で買ってもらえなかったのですが、塾に通いだしてから塾に設置されている自動販売機でジュースを購入するようになりました。

そこで桃の天然水を買ったわけですが、一口口にして、人知を超えた力が働いているのではないかとすら思いました。聖水だとか、ファンタジーに出てくるような。天然水と言うだけあって、無色透明でさらりと水のような舌ざわり、甘酸っぱい桃の香り。最近は日本でもフレーバーウォーターも増えましたが、当時は魔法のように思いました。

また、純粋に甘さだけを伝えて来る味が舌に刺さりました。要は砂糖と果糖とわずかな酸味料の味なのですが、それまで白い砂糖が使われた食べ物を制限されて生きていたので、不死の妙薬と言われても信じるくらいの衝撃でした。桃は古来中国では不老不死をもたらすなど神聖視されていたと言いますが、それも大いにうなずけます。砂糖をめぐり航海技術が発達し戦争が起こるのも仕方がないでしょう。それくらい、黒糖やブラウンシュガーとは別格の味がしたのです。

それから、桃の天然水は特別なものだと確信した私は、なにか嫌なことがあった日やめでたいことがあった日だけ桃の天然水を飲むことにし、父の意ごとが傾いて引っ越しが決まるまでその習慣は続きました。

今では市販のお菓子もジャンクフードも食べ慣れてしまい、久しぶりに買った桃の天然水はあの時のような神聖さを感じられませんでしたが、10年前、私の舌と脳を揺すぶった衝撃は今でも忘れられません。

 

【3000万円あったら何をしますか】

郊外で自分の好きな本や漫画と家具をそろえてブックカフェを開きたいです。書店でも、カフェでもバイトしたことがあるのですが、もっと落ち着いた雰囲気で本を見られる場所があったら、という思いがありました。図書館というよりは気心知れた友人宅のようにくつろいで本が読めて、ネットカフェよりも非日常的な雰囲気のスペースがあるような。もちろんカフェ経営の知識が足りないので、しばらくは個人経営のカフェで雇ってもらって勉強してから、という感じになるでしょうが。

それか、奨学金を返済して残りは貯金して、アンティークショップなどの趣味を仕事にしてフリーターになるのもいいですね。バイトしながら画塾に通って、専門学校に行って、日本画かデザインもやってみたいです。

3000万円あったら趣味で生きていきたいです。

3000万円、欲しいです。

ダンサー イン ザ ダーク/みくじ

 

全体を通して虚構っぽさが強かったことは指摘されていたが、ストーリー本筋の虚構感、ミュージカルパートの虚構としての虚構は繋がるものと考えられる。セルマがダンサーであることは虚構の中だけのことで、虚構を生きることを描いた作品だった。
意見が分かれたセルマへの印象は、ストーリー本筋が誰の虚構かが鍵になるのではないか。

遺伝性の弱視、失明。不自然なほどセルマに好意的なキャシー、ジェフ、サミュエル、看守。金に困っていると話したビルに貯金があることを打ち明けるセルマ。
この虚構はセルマのナルシズムを満たすような悲劇と取れる。しかしミュージカルパートでそれは捕捉されている。母の悲劇でナルシズムが満たされるのはジーンなのではないか。
ジーンは後半のストーリー本筋にほとんど出てこない。冒頭でクラスメイトとの関係で悩んでいたジーンと、ビルを殺して逃げる前のミュージカルで登場した母を肯定するジーンは全く別人だ。ジーンはストーリーの進行に伴い母の虚構の中の存在になっていく。ではセルマの投獄後にキャシーが語ったジーンはやはり母の虚構になったジーンだろう。

母・セルマの悲劇でナルシズムが満たされるのはジーンと言ったが、厳密にはジーンの視点から物語を見る息子たちだ。自分の母も独善的なまでの激しい愛を持って、自分には秘密の自分のための苦労を背負っている、そんな妄想を与える作品だったのではないか。そしてそんな母はもういなくなっている。そこまで含めて息子にとっての幸せな幻想を与える物語だったのではないか。

にしても釈然としなかったのは男女差もそんなに無かったようだったからこの結論は的外れなのかもしれない。

渦/台風/みくじ

 

 

布団の中でぼんやりと目を擦ると、右目の目尻に異様なざらつきがあった。少しびっくりしたが、起き抜けの頭ではどうにも大したことでは無いように思えた。手探りでつかんだコードを引っ張って薄目でホーム画面の時計を確認すれば、外の暗さに反して遅い朝だったが休日なので起きることもないだろう。

そうして体を横に向けて目をつむったり薄目を開けたりを繰り返すうちに、半開きの右目からぽたりと温かい液体が流れ落ちた。目が乾いていたり疲れていたりするとたまにこうなるのだが、今日のはそれにしても止まらない。

まだ体を起こすのもひんやりとした床を踏むのもまっぴらごめんだったのだが、枕が湿ってうっとうしいので、なんとか姿見の前まで這いずると、重たい瞼を持ち上げて目を開いた。目が黒い。目と言っても瞳が黒いのは通常のことだが、そうではなく、白目の部分がぼんやりと黒っぽく見えたのだ。ぼんやりというのは僕がかなりの近眼だからであって、さらに近寄ってみるとこれはまつ毛が束になって三本も入っていた。さすがにこれでは二度寝もできない。

電気をつけてひとさし指の腹で眼球をすくうとひじきが乗った。たかがまつげも三本が束になっていればいまだかつて感じたことのないような違和感があるのも当たり前だ。眼球へのやさしさを一切感じさせないタッチをしたことで、二度寝も億劫なほどに目が覚めてしまった。

目が覚めたとは言ってもこれといって家事をしようとも思えないので、電気を消して布団に入るとなんだか考え事をしてしまうような気分だ。

 

外は台風が来ている。ざあざあと長らく雨を降らし、風も吹かせていたが、あのあなぐらのように風の音がごうごうと地面までゆらすということもなく、家の中は静かなものだった。窓の向こうで風に吹かれてあばれる木々を見てふと、あの化け物はこんな風だったと思った。

台風というのは、なんでも南の海の上でできるらしい。温まった海水は蒸発して昇っては冷たい空に突き落とされ、繰り返すうちに渦を巻いて大きくなる。人の名前を付けられるが人の手にはどうしようもできず、ただその勢いが果てるまで渦を巻き続けるだけのただの気象現象。条件がそろってしまえば勝手に渦巻いてしまう、ただの現象だったのだ。

 

「今までにあったやつとそう変わらないじゃないか」

「いっそのこと、化け物をやっつけてしまえばよかったんだ」

僕が大仰に語ったことは、誰の目にも甚だ期待外れだったらしい。まさか期待されていたなんて思いもしなかったが、ここまで平坦な反応をされるとも思っていなかったのだ。思っていなかった。思い違っていた。勘違いしていたのだ。

それまで僕は僕なりに、かつてそれなりの時間を過ごしたあの化け物について語ることは、何かのためになると思っていた。何かというのは判然としないが、例えばこれから化け物にあってしまう人や、今までにあった人、さらに言えば自分が助かるような気がしていたのだ。そうして誰のためにもならず、自分のためにもならないということを知るためだけの徒労が終わった。

 

ところで、僕は事が起こってからそこに感情が追いつくまでに、人よりも長い時間がかかるらしい。具体的に言えば、その当時は自分に非があるのか飲み込んだことが、二晩寝て改めて振り返ったとき相手を徹底して批判してやろうという気になってしまうのだ。そうしてあの徒労を終えて数日後にやってきた台風は、今更とくに役にも立たない閃きと、遅れてきた不満への追い風を与えてくれる。

よく考えれば、化け物に向けた全ては渦巻く風に巻き上げられるビニール袋のように無力だった。無意味だった。何を変えることもできなかった。そのことを僕は、あのありふれた、つまらない言葉の羅列に詰め込んでたはずだ。化け物をやっつけてしまえなんて言ったやつはそのありふれたことすら分かっていない。つまらないから分かられなかった点は僕に非があるにしたって、例えば誰でも知っている暴風雨を伴う発達した熱帯低気圧をつまらなく説明した人に、じゃあ爆撃機でそれに突っ込んでみてはどうかなんて言うようなものだ。

いつも僕らのすぐそばに隠れているあの化け物のことは、しかし実際にあった人しか知らない。知ろうともされていないのだ。僕はそれを知らしめたかったのだろうが、誰も知りたくもないことを知らしめようとしたことは結局のところ、やっぱり徒労にすぎないのだ。

 

足音がする。擦れるような、それでいて叩きつけるような音だ。タオルケットを頭までかぶり息を殺すと、じんわりと埃がしみ込んでくるような感じがして鼻がむず痒い。くしゃみなんてしたら気づかれてしまう。鼻がぺらぺらになるくらい強く摘んで、音を立てずにゆっくりと口から息を吐く。

今日こそは完璧だ。食事の痕跡だってきっちりしたし、子どものにおいがしないよう換気したし、髪の毛の一本だって残していない。こうやって死体か人形のふりをして、気づかれなければ。大丈夫。きっと大丈夫だ。死体は息をしないし、人形に鼻腔はない。

何とかむず痒さをやり過ごして耳を澄ましていると、足音が物音に変わった。パタ、冷蔵庫を開く音。駄目だ。こぷり、ワインを注ぐ音。足音。ソファのきしむ音。ああ、もう駄目だ。テーブルとリモコンの擦れる音。テレビのうそ笑いに交じって、太く汚れた喉笛の鳴る音がする。

今日もまた眠れない。これは笑い声がうるさいからではない、壁の向こうにいるからだ。

しばらくしたら、どうせあの真っ赤に血走ったぎょろ目で、本当に死んでいるか確認しに来る。そして死んでいるとわかったら、今度は黒と紫でまだらに染まる口で臭い息を吐きかけて、媚びる様に擦りつき、かと思えば地を這うように唸り、吠え立てて暴れる。それが終わる頃には、この国の北の端ではもう朝日が昇っているのかもしれない。

それだって死んだふりがばれてしまうよりずっと良い。食事の跡やにおいや髪の毛を見つけられた日には、まず何回も殺されるところから始まる。子どものにおいに敏感だから、咳を漏らしたり汗をかいたらすぐにばれてしまう。だからって身を固くしすぎてもいけない。ぐにゃりと力を抜ききって、触られてもただの肉として振る舞う。光なんて眼に入らないし、吐きかけられた息の温度もにおいだって感じない。

こんな暮らしを何年もやっているはずなのに、死体のふりはたいして上手じゃない。何もできないから死んだことにしたのに、それだって満足に出来やしない。

 

起きたらまた枕が濡れていた。目尻には結晶のように固いやにがたまっている。雨の日の薄暗い微妙な明るさは変わっていなくて、ふて寝に失敗したと分かった。夢で見た血のような液体は、コップに入れてから半日ほど放置されている。合法的に飲める年になっても、これだけは避け(・・)ていた。酒だけに。

 

今のは忘よう。何でもない。僕は何も言ってない。

大人になって1年と数日がすぎて、よくわからない祝いの言葉と一緒にもらって、1口でリタイアした。においでイメージした通りに舌にも喉にも引っかかる苦みで、やっぱり人間の口には合わないものだと分かった。唇も目も赤くして、臭い息を吐くのはあの化け物だけで結構だ。

コップはこのままだと色が残ったりするかもしれないのでとりあえず片付けるとして、一度抜いたコルクがはめられなくて代わりに丸めたティッシュを詰めた瓶はどうしようか。せっかくもらったものを捨てるのは忍びない。ジュースに混ぜて少しずつ減らそう。よく考えると僕は砂糖味の飲み物はあまり飲み慣れないから、それだって本当に少ししか飲めない。

横たわったまま考えだけが先走るが、どうせ今はコップを洗ったりジュースを買いに行く気にはならない。もっとハードルを下げよう。

まず顔を洗う。涙に含まれるたんぱく質か何かの感触がいつまでも顔にあるから気持ちよく眠れないのだろう。そのついでにあの嫌なにおいの液体をシンクに流してしまおう。

 

じっとりした床は冷たく、ついつま先立ちになる。そうすると足音を立てずにフローリングを歩いて、夢の続きのような気持ちになった。冷たいのにも静かにするにもうんざりしたので、お湯の蛇口を思い切りひねって本当にお湯になるまでを観察した。

湯気が上がって鏡が曇って、少し晴れてまた曇るのを見届けて顔を洗う。化け物の目を盗んでひそひそと暮らしていたあの頃から考えれば、なんとも贅沢だ。蛇口から好きなだけお湯が出せる。お湯は顔の表面の気持ち悪さをすぐに忘れさせた。

せっかくお湯を出したのだから、茶でも飲むとしよう。蛇口から出たお湯とティーバッグをマグカップに入れ、少し電子レンジで温めるとすぐに紅茶が飲める算段だ。

40度くらいのお湯でも紅茶が少し出るらしく、ティーバッグの角をつたって赤茶の液体が細く落ちていく。お湯に流されながらも紅茶はあくまで紅茶として落下していく。小さい時に見ていたアニメのヒーローが魔法陣の周りに起こしていた風も、こんな風にくっきりとしていて、動きだけは柔らかかった。

落ちていく紅茶をじっと見ていると、足が冷たい床と一体化していた。さすがに紅茶の魔法も解けて、600W1分30秒を選択して布団に帰った。1分間、落下のことばかりが頭を占めていた。

 

 

 

 

【感想】

これまでのスタジオの文章に比べて、かない長い。それがここまでやりづらいものになるとは思わなかった。楽観視しすぎていた。小説ともエッセイともつかないような、やり方で書いているのは以前からだが、もう少しスタンスをはっきりさせないとこの長さで文体などが維持できない。計画性を持ちたい。

今までにないこと(字数が)だったので縛りを緩くしたのは正解だったと思う。それぞれ個性のある文章で長くても読んでいて飽きなかった。ただ、提出や評価などのルールは少人数だと曖昧になりやすかったので、次のグループワークではもう少しスムーズに進めたい。

今回の形式でよかったのは、グループ内でのコミュニケーションがしっかり取れたこと、人数が少ない分全員が運営に参加したことだ。メンバーが固定されることで書いているものについての変化や考えもわかり、グループとしての意識が持てた。

恋愛相談というかキャラテコ入れ/ネット記事/みくじ

 

アルテイシアの恋愛デスマッチ
この連載に最近めちゃくちゃハマっています。
今回取り上げるのは
「ハイスペ婚したけど幸せじゃない」自分がわからない女子にカウンセリング①
「新婚時代なんて思い出したくもない」自分がわからない女子にカウンセリング②
(①が2週間以上なのは許して欲しい)
https://am-our.com/love/218/14333/
https://am-our.com/love/218/14362/

筆者のアルテイシアさんは毒親持ち女子高育ちバリキャリ歴戦の恋愛傭兵でガンダムオタク、既婚者という私が求めていた人生の先輩。もっと早く出会いたかった、

それはともかく今回の相談者がすごい。何がすごいってまあとりあえず見てくれ。

 

相談に来たんだよね…?とそれはもう混乱させてくれる。ちんぷんかんぷんってこういうことか。
脳内でめちゃくちゃ猫なで声の頭の弱いギャルで再生されるのは私だけだろうか。(※相談者はそこそこ育ちのいい32歳派遣社員既婚)
この時点でかなり不安定な気持ちになってくる。

しかしここからが本番である。

 

怒涛の煽り!どこを見てもイラッとくる!
これで天然なら記念物クラス!

とまあ見てるこっちも怒りで知能が下がってきましたが一旦落ち着いてよっいせ。

逆にいるんですか?周りは~と小賢しい小学生のような言い方。
内容も、びっくりするほど浅はかだ。ドン引き。
なんでそんな何も考えず結婚してしまったん…?
し、しびあ…?意味分かってる?

また頭が悪くなってきましたので、ふぅ…
お局=40代独身って見方もなんというか、まあ私もこの人には意地悪()する自信がある。

ここで急ぎ足になって申し訳ないがラストのところ。

 

急に聞き分けが良くなる相談者。
スピードラーニングの皮肉も痛快だったけど、突然にいい子になるこの相談者は一体なんなんだ…。

果たして本気で言っているのか、面倒になってとりあえずYesにしてるんじゃと疑う気持ちがある一方で、あんなにでもでもだってだった相談者の吹っ切れにこちらも清々しい気持ちになってきた。オリジナルストーリーが暴走して散々文句を言っていた深夜アニメの最終回のような切なさがある。

ここまで読むと、能天気で考えなしで優柔不断なこの相談者が一周まわって可愛く思えてこないだろうか?
愛されるおバカとはこういう路線もありなのかもしれない。

それでも私は/物申す!/みくじ

 

最近、空前の筋トレブームだ。特にネット民はそごって筋肉を賞賛し、何かあるとすぐ筋肉で解決しようとする。
「オンナは細マッチョ好きとか言うけど、私に言わせればそれただのもやしだから」と言う女はすぐネットで持ち上げられる。ジム通いのツイッター女がやたら偉そうな顔するのは一体何なのか。

 

ネットとは古来よりホモソーシャル。ホモソーシャルに媚びた女が持ち上げられる社会。
ホモソーシャルの価値観に従った女は男にも女にも偉そうにしやがるのです。

 

あらゆる調査で女性が魅力的に思う男性は女顔で長身細身、男性が魅力的に思う男性はゴリゴリに筋肉質で短髪が似合うような人と出ている。
これは逆も言えることで、女性の体型やメイクの好みには男女で差が出る。

筋トレとゴリマッチョを賛美して、巨乳の女の子を褒めちぎって、ネットで「こいつは分かってる」と扱われる女性はいても逆はあまりいない。

女顔のスレンダーなメンズ、モデル体型のショートカットイケメン女子は最高だぜと叫んで注目された男性なんてそういない。
特に前者は本人がそういう人になることでしか表現されない。
そう、キッついサブカル界隈では男性もそういう、奇抜なお洒落とほっそい身体の男性を認めている人はいる。しかしそれは本人がそうであり、明言はしないが似たような人とつるんでいる場合にのみ発動する。

 

え?そこまで振り切れないと女性が思うイケメン像って男性は肯定できないの?
自分がそうでなくたって、別に認めたっていいよね?
男性のライトな同性愛はいわゆるホモソーシャルにしかないのか?
いや、そんなことないはずだ。だって隠れジャニオタ男性は割といる(ネット配信者でしか見たことないけどそこには沢山いた)。

 

ネットがどんなに筋肉に傾いたって、それでも私は骨が最推し。男女を問わずスレンダーは最高。
筋肉教徒を恐れるな!声を上げろ!スレンダー万歳!!!!

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本が読めなくなる

あなたが言う通り、同年代の登場人物があなたの体感した実際のものより大人びていることに抵抗を感じているのなら解決法はいくつかあります。

ひとつめは、若い作家の本を読むこと。20代の作家は探せばわりといます。どういうジャンルの本を読んでいるのか分からないですが、簡単に調べられます。
ふたつめは、処女作だけ読むこと。ひとつめと大差はないですが、往年の作家でも何十年か前は20歳だったのです。作者も歳を重ね、成長し変化しますから、若い頃に描いた文章はありのままの若者が描かれているかもしれません。

ここまでの方法は対処療法で、根本的に登場人物の年齢と自分の年齢に関係なく読書を楽しむとなるとあなたの問題になります。
また、人間の脳の発達は20歳ごろまで続き、それまでは脳みそが不完全なんだそうです。脳みそのつくりが違うなら、大人の書いた未成年は不自然なのも当然かも知れません。

まあ小説の登場人婦なんて年齢に限らず不自然なものだと思って割り切れたら楽なんでしょうね。

 

そんなこともあった/絶食系男子/みくじ

 

Aセクシャル(アセクシャル、エイセクシャル)
無性愛者ともいう。他人に恋愛感情や性的欲求を抱かない人のこと。

 

私は2年くらい前、自分がそうなんじゃないかとちょっと疑っていたことがある。ちょっとというか割と疑っていた。

 

県内では勉強する学校だったし恋人がいたことがない人も珍しくなかったが、大学生になった途端そんな友人達もみんな彼氏が出来始めた。

1年生の5月、片道1時間半かかるにも関わらず隔週で会っていた地元の友達に初めての彼氏が出来た。
彼氏のクズっぷりをネタにしつつ幸せそうな彼女は今まで見たことないくらい可愛かった。

「彼氏いいよ。暇な時気軽に遊んでもらえるし。」

それはいい。めちゃくちゃいい。
一人暮らしで友達を作るのが苦手な私は、それはもう暇を持て余していた。隔週で多摩に出向くくらいには。
今まで、いたら楽しいかなくらいで必要性は感じていなかったが、初めてここで彼氏が欲しいと思った。

「みくじが誰が好きになるのは難しそうだけど、告白されたらとりあえず付き合いなよ。」

さすが私のことを分かりすぎている。

とりあえず告白されたら付き合う。片っ端から異性(に関わらず人間を)をブロックするのを辞める。オッケー任せろ。
1歩先輩となった友人の簡潔なアドバイスをスッカスカの頭に入れて横浜に帰った。

 

そこから7月までに何故だか3人くらいの男性と1度ずつ出かけたが、その3人とは別の人に「なんか好きになれそうな気がするから付き合って」と言わた。
今思えばこれで付き合うは流石にないのだが、告白されたらとりあえず付き合うと条件付けしたし、18年されなかった訳だから次がいつか分からないので合意してしまった。

しかし元々親しかったわけでもない先輩に対人恐怖症のコミュ障だった私が心を開ける訳もなく、またそんなクソな告白をする先輩が私を恋に落としてくれるはずも無く。

金無しバイト無し単位無しのその先輩はどこかデートに連れて行ってくれるでも無く、ご飯に誘ってくれるでもなく。
ただ私の部屋で何度か飯をたからせたある日、帰るのだるい(いや徒歩15分やろ)と言うので仕方なく泊めた。
その後は簡潔にまとめると、迫られ拒んで音信不通、自然消滅。

 

そこから冒頭に繋がるのだが、その一件が夏休み前くらいだったこともあり、暇で暇で仕方ない夏の間「私ってやっぱりちゃんと恋愛できない欠陥人間だあああ」と凹んだ。

今となってはちょっとした黒歴史だが、両親に「その歳で恋愛したことないなんて頭おかしい、人間じゃない」的なことを(今のでもだいぶオブラートに包んだ)言われまくっていた身としてはかなり深刻に悩んだ。
一人暮らしは寂しいから将来は似たような状況の人と偽装結婚でもしようかと考えた。

 

記憶の彼方に追いやっていたが、絶食系といえばそんなこともあったなあ。そんな呑気になるくらい今は楽しくしているので、あの時の追い詰められていた私にタッパーいっぱいのクッキーをプレゼントしてあげたい。