縦槍ごめんね のすべての投稿

好きという螺旋/百合/縦槍ごめんね

最近、恵美子が妙に冷たいのです。私と恵美子は親友です。高校に入ってから知り合ったのですが、クラスに馴染むことのできていない私に社交的な彼女は話しかけてきてくれました。私達はすぐに仲良くなりました。休み時間中はずっと一緒にいたし、帰り道も同じだったので、彼女の部活が無いときはよく一緒に帰ったりしていました。お互いの夢についても語り合いました。彼女は美容師になりたいらしく、高校を卒業したら、専門学校に通うそうです。私はこのまま母の実家のある田舎の大学に進学するつもりなので、夢に向かって一直線な彼女のことを羨ましく思います。そんな私ですが、最近うれしいこともありました。なんと、この私に、彼氏ができたのです。彼は智也くんという、三年生になってから、同じクラスになった男の子で、隣の席になってからよく話すようになり、驚くべきことに彼から私に告白をしてきて、付き合うことに、なりました。幸せです。確かに幸せなんですけど、やっぱり恵美子のことが気になって仕方ありません。どうして、こうなってしまったのでしょうか…。

こんにちは。私、恵美子っていいます。最近私の好きな人が寝とらました。私が最初に目をつけていたのに。あの人はきっと、私の苦労なんてしらなかったんでしょう。家の方向が一緒といって嘘をついて、よく家まで送っていくことがあったり、本当は部活に所属していないのに、していると偽って、あの人につく悪い虫を徹底的に排除することを心掛けたりしていました。あの人が東京出身だって、言うから一緒に夢を追いかけられると信じていました。なのに、なんで、なんで…。私はあの人もあの人の恋人も許せそうにないです。どうして、こうなってしまったのでしょうか。

どうも。智也です。最近僕の身の回りでは、なんだか嫌なことが起きています。最近彼女ができたのですが、彼女と家に帰っている途中で奇妙な視線を感じるんです。そして、彼女を送り届けたあともその視線は残り続けるのです。そして、ついこの間は、部屋に戻ると何者かが侵入した形跡が残されていました。幸いなことに、金目の物は盗まれてはいませんでしたが、彼女に送るはずだったはずのプレゼントが盗まれていました。本当に困りました。このままだと僕は純粋な気持ちで、彼女とお付き合いできません。警察に相談したほうがいいのでしょうか。どうすればいいのでしょうか。

どうも警察です。最近、面倒くさい相談が多いです。特に面倒くさかったのが、高校生同士の恋愛のこじれで女の子が男の子の家に不法侵入したという案件でした。どうせしょうもない女の嫉妬が原因ですよ。持てる男は辛いですねぇー。でも、男の子の方は不安でしょうがないらしいです。ほんとどうすればいいんでしょうか。

八方塞がり/嫌い/縦槍ごめんね

「人の汚いところばかり見ていると汚い人間になってしまうわよ。」

それが昔からの母親の教えでした。私は人に合わせて、出来るだけ嫌われないように嫌われないように生きてきました。いわゆる八方美人でした。

その生き方のおかげなのか学生時代は誰にも嫌われることなく、普通に生活を送ることができました。たとえ人の嫌なところが見えたとしても、見えないふりをして決して悪口は言いませんでした。クラスの人達にはなんて人間が出来ているの人なんだろうと思われていたことでしょう。

しかし、社会人になってから私を取り巻く環境は一変したのです。社会という場所は人の汚い部分で溢れかえっていました。皆が皆、無責任で自分勝手。そんな中でも私は生き方を変えることはしませんでした。私は絶対この人達のようにはならないと心に誓ったことを今でも覚えています。まぁ本当のことを言うと今更、この生き方を変えることに恐怖感を抱いていたのです。私は本当に臆病な人間です。

就職してから2ヶ月、私は上手く使われる人間になっていました。学生時代はたくさんいたはずの友達も一人として出来ませんでした。皆が私にいい顔をするのは仕事を頼むときくらいのものでした。これやっといて、あれやっといての大合唱。でも私はそれを断るすべを全く身に付けてはいなかったので、ニコニコしながら全て受け入れてしまうのでした。

ある日、会社で休憩室に行くと先客がいました。それは、今まで全然話したことのない同僚でした。

「峰岸ってさ、本当に都合いい奴だよな。」

「いや、でもいつもニコニコしてて気持ち悪いよな。すごい薄っぺらい感じしてなんか友達とか無理な感じだわー。」

「まぁ、俺もよくわかんねぇけど、ドエムなんじゃね(笑)。」

聞こえてきたのは、私の陰口でした。最初はなんで悪口を言われているのか分かりませんでした。あぁなんだろうこんなに嫌な気持ちになっているはずなのに、まだ私ははむかうことに恐怖を覚えていました。

それ以降、私は会社にいけなくなりました。人を見ると怖くて怖くてたまらなくなったのです。おそらく私は精神を病んでいるんでしょう。でも人に会うのが怖いから病院にも行けません。誰か助けてください。

もう、八方塞がりです。

皆さんも八方美人には気を付けて。

成人式/キャプション/縦槍ごめんね

この写真は姉が成人式の前にある、高校の同窓会に行ったときの写真です。一見楽しげですが、私後にある写真撮影のせいで、元々の予定だった、友達とのスキーを断らなければいけなくなりました。非常に辛い選択でなぜわざわざ姉のために私がこんな目に遭わなければいけないのかと思っていましたが、幸せそうな姉の姿を見て、許す気になりました。これから成人式なので、あまりはめをはずさないように、今時の若者になりすぎないように注意してほしいです。


1451798844352

目か耳/目/縦槍ごめんね

人間、視力もしくは聴力どちらかを失わなければならないという選択を強いられたとき、おそらく大抵の人間は聴力を選択するのではないか。それほど人間は「目」という部位に依存して生きている。それがもし、何かしら外部からの攻撃によって失わされるのであれば、なおさら目は嫌だ。
何故、今こんな話をしているかというと今私はその選択を強いられるという窮地に立たされているからである、私は一介のサラリーマンであったが、道端で拾った封筒のせいで、よからぬ方々につかまり、今尋問を受けている最中なのだ。知らないといっても彼らは私の言うことなど何も聞き入れてくれない。そして、今遂にその尋問は拷問に変わろうとしている。さて、ここで、最初の話だ。彼らは目か耳か私に選べといってきた。私も馬鹿ではないこの一言で大体察しはついた。先ほどは目か耳なら絶対耳のほうがましだといったが、そんなのどっちも嫌だ!大体なぜなんの関係もない私がそんな事強いられなければならないのだ!あまりの恐怖感に私がどちらも選べずにいると、向こうは私の意志など無視して、勝手に目を潰しにきた。いやいやいや、ちょっと待って!目はないでしょ、目は!どう考えても目より耳の方がましだ!あれ?もうさっきと言っていることが違うがとにかく目は嫌だ! 目だけは止めてくれ、心の中で放ったと思われた言葉はどうやら心の中から漏れていたようで、向こうの方々は目を止めて、耳を潰しにきた。徐々にドライバーが耳に近づいてくる。怖い怖い怖い!もうどっちも嫌だよ、なんでもいいから助かりたい。この状況から逃げ出したい。ドライバーが耳の中に入ってきた。そして、鼓膜までもう少しというその瞬間、バン!とドアが開いた。何やってんだ、という怒号と共に5,6人の男達が入ってきた。どうやらその方々は今私の目の前にいる方々と敵対しているグループのメンバーらしかった。そして、私の持っていたものが取引にとても重要なものであったというざっくりとした説明を受け、もう用済みだということで早々と逃がされた。そして、最後にここで見聞きしたことは絶対口外するなと言われた。

それから家路につき、家に着いた瞬間、私はすごい脱力感におそわれ、次の日の会社にいくことも忘れ、ずっと眠っていた。それからしばらくは、あんなことがあったにも関わらず、普通の生活を送っていた。しかし事件から二週間が過ぎた、ある日の帰り道、私はいかにも向こうの方だという、人間を見かけた。その瞬間あの事件のことがフラッシュバックしてきて、ものすごい恐怖感に襲われその場でうずくまり、嘔吐してしまった。それから、徐々に私の生活は瓦解していった。向こうの方々に似た人を見かけたり、似た声を聞くと心拍数が高まり、動けなくなる。毎日それを繰り返していると家からでることもできなくなり、今ではもう家のなかにいても聞こえてくるそとの音とか、ラップ音ですら、あの事件を思い出させるトリガーになりうる。私は思った。いっそのことあの時両目、両耳とも潰されておけばよかったと、そして、私は気がつくと自らの手で自らの視覚と聴力を消していた。

大人計画/初恋/縦槍ごめんね

「私、子供っぽい人って好きになれないんだよね。」
小学校四年生の時、なけなしの勇気を振り絞って放たれた、渾身の告白はその一言によって玉砕した。
いま考えると、その時の女の子の一言はませた女の子の見栄的なものだったのだと(強くそう信じたい)割りきって考えることが出来るが、その当時の僕にはひどく残酷な言葉に聞こえた。
よく、女の子のほうが男の子より精神年齢の成長が早いと言われるが、それは本当のことだと強く思う。しかも女の子のほうが男の子より現実的でよりシビアな目で世の中を見ている。小学生の頃から幾分か成長しても未だに感じることだ。
小学生の頃の僕は、早くその差を埋めたくて、彼女に振り向いてもらいたくて、自分なりには精一杯努力したつもりだった。好きだったゲームの話も彼女の前では出来る限りしないようにしていたし、今までは母親に選んでもらっていた服も自分で選び、かっこよく着飾った。精一杯の背伸びだ。
それでも彼女にはその努力は認めてもらえなかった。おそらくその背伸びを彼女に、見透かされていたのではないかと今になっては思う。
それから彼女には、小学校を卒業するまでその告白をなかったことにされて、そのまま別々の中学校に入学し、疎遠になった。僕もとっくに失恋からは立ち直っていたので、彼女と離れてしまうことにはなにも感じなかった。
そして、月日が流れ、中学2年生の秋になった。僕は成績があまり振るわず、学内でも思った結果が残せなかったことで、母親に塾に通わされることとなった。別に勉強が嫌いということはなかったので、何も考えずに母親に着いていくと、その塾に彼女がいた。彼女は小学校の時に比べると少し大人びてはいたが、身長はもう僕のほうが大きく、何か小学校の時とは違って見えた。僕はその場にいることに耐えられなくなり、忘れ物をしたと母親に告げて、一度その塾を出てしまった。しかし入って一回目の授業をサボるわけにはいかずに出来るだけ息を殺して、静かに授業受けた。
彼女は塾に女の子の友達が数人いるようで、よくその友達と話しているのを見かけた。彼女の口調は昔よりチャラけた雰囲気をまとっており、それがひどく子供じみたものに見え、少しだけ嫌悪感を覚えた。すると突然その友達の一人が僕に話しかけてきた。
「◯◯ってどこ小だったの?」
「…Y小学校。」
「てことは、△△と同小じゃーん!! 知り合いなの?」
この会話は彼女も当然聞いていた。少しまずいかもしれないと私は感じてしまい、とっさに私はこう答えた。
「いや、そこまで仲は良くなかったというか、あんまし関わりなかったよ。」
「へー、そうなんだ。まぁいーや。」
そういって、その友達は去っていった。一体何をしに来たのだろうと思いながらも、僕はまた見栄を張り背伸びをしてしまったことにひどく嫌な気持ちになっていた。そして、1度でも改めて彼女と対峙し体も心も彼女より成長したと思ってしまったことを恥じた。
そして、結局1度も彼女と話すことはないまま、高校へ進み、その塾もやめてしまった。そこで僕の初恋は本当に終わった。
今ではもう僕は大学生だ。でも僕は小学校の頃の僕と比べて少しも賢くない。これが人間性なのだと言ってしまえばそこまでなのだろうが、諦めてしまいたくない。きっと本物になれるとまだ信じているから。

華逆じいさん/華/縦槍ごめんね

もう15回もオーディションを受けているが、決まって言われる事がある。

「君にはさぁ、なんていうか華がないんだよね。」

高校時代は演劇部に所属していた俺はそれなりに楽しい学園生活を送っていた。卒業と同時に舞台俳優の道へと進むことを決意し上京してきたはいいが、どれだけ努力しても現実は甘くなかった。

「華か… 華なんてどうやったら身に付くんだよ…」

そんな独り言とともに家路に着いている最中、見知らぬ男が何かを言いながら近づいてきた。

「あなたに華を授けましょーう。あなたに華を授けましょーう。」

なんだこの気持ち悪い男は、頭がおかしい。とにかくこういう種類の人間には近付かないほうが身のためだ。そう思った俺は、すぐその場を立ち去ろうとした。しかしやばいという気持ちとは裏腹に俺はその場に留まった。彼の言っていることに少し興味が湧いたからだ。どんなに怪しい男でももしかしたら俺に何か好機をあたえてくれるかもしれない。とにかく俺はなんでもいいからすがりたかったのだ。そうして俺はその男に声をかけたのだ。
「その願い、どうやったら叶えられるんですか?」
「どうということもありません。私の持っているこの灰を頭から被れば、あなたの人生が途端に輝きだしますよ。」
尋ねた私に男はにやつきながらそう答えた。怪しいと思いながらも言われるがまま男の持っている瓶の中に入っている灰を頭から被った。その瞬間俺はそこに倒れた…らしい。というのも目が覚めたとき俺は病院のベッドの上だったからだ。倒れている俺を見つけた人が救急車を呼んでくれたそうだ。その場に変な男が居なかったかと聞いても誰もその男のことは見ていないといっていた。1日入院してその次の日無事に家に戻った。

その出来事からしばらくして、少しずつだが俺自身ではなく俺の回りに変化が現れ始めた。まぁ具体的に言うと…急にもて始めた。よく分からないが雰囲気が変わったらしい。髪型や顔立ちが変わったというわけではないのにこれはどういうことだ。これが華というやつなのか?それから徐々にその変化は大きくなっていった。オーディションにも受かるようになり、もらえる役もどんどん大きくなっていった。そして、あの晩から2ヶ月が過ぎる頃には俺は日本を代表するスターになっていた。正直俺は調子にのっていた。だがそれも無理なかった。今や日本で俺のことを知らないものなど誰もいないのだから。

しかしそれから更に1ヶ月が経過し風向きが変わってきた。俺は人気者になりすぎた。家の回りには毎日毎日何十人もの人が取り巻き、家から出ることもできない。何とか変装を施し、家から抜け出すことが出来ても、発見されれば追いかけられる日々。気が付けば方針状態のまま俺はかつて灰を持った男と出会った道をさまよっていた。

「頼む…もう華なんていらない! だから誰でもいい。助けて…」

そう呟くと、前方から前にも聞いたことのあるような声が聞こえてきた。

「あなたの華を奪いましょーう。あなたの華を奪いましょーう。」

あの男だ。そう思った瞬間、私は神にもすがる気持ちでその男のもとに駆け寄った。

「俺に、そ、そ、そ、その灰をくれ!」

「構いませんよ。ですが本当にいいのですね?」

その男はそうにやつきながら言った。

「構わない。とにかく早くしてくれ!」

「了解しました。」

その言葉を聞くとすぐに俺はその男の持っていた瓶を奪い取り、そこに入っている灰を頭から被った。するとまた俺はそこに倒れた。今度は病院ではなくその道の上で俺は目を覚ました。そして、通りかかる人々が俺を追いかけてこないことを確認して、本当に俺からは華がなくなったということに気がついた。少し寂しく感じたが今までのことを思い返し安堵した。

「助かった。本当に良かった…」

あの不思議な男に感謝しながら、俺は呟き、家路に着いた。ところがしばらくして俺はある違和感に気がついた。誰も俺のことを見ない。というか俺という存在が見えていないようなのだ。そして家につきふと鏡を見ると、そこには俺の姿はなかった。そして日本中から俺という人間は消えた。

27の青春、跳躍/青春/縦槍ごめんね

「後、2cm だったんだけどね。」

小学生の頃から 12 年間続けてきた走り幅跳び。最後の大会。私の夢をかけて精一杯の力で地面を蹴った。記録は 5m59cm インターハイ出場まで後 2cm だった。
その最後の大会を機に私はすっかり陸上から足を洗った生活を送っていた。ごく普通の生活を送り、何処にでもいる OL をやっている。ランチには 1200 円から 1500 円くらいの少し良いものを食べ、夜は 1DK のマンションに帰り一人でお酒を飲む。この道を選んだことに対する後悔はない。だけど、あの頃に未練がないといったら嘘になる。
さて、何故いきなり、こんな話になったかというと、路上で私が泣いていたときに、ある女の人が私に話しかけてきた事がきっかけだった。

「私ね、高校時代はね結構、将来を期待されるような選手だったんだ。でもインターハイ予選、結局プレッシャーに負けちゃって、インハイの記録まで 2cm 届かなかったんだ。」

「へー、中々重いお話だこと。」

その女はにやついながら、しかしあまり興味なさげにそう言った。

「それでね、私がなんでね、こんなに泣いているかっていったらね、私さ会社の飲みの席で今まで、話したことなんてなかったんだけど、うっかり高校時代のことしゃべっちゃったの。そしたらその話が広まっちゃって、今ではもう人並べてそこの上を跳ぶなんて宴会芸までさせられんのよ。最近では 9 人くらい跳べるのよ。すごいでしょ。」そんなことを話しながら、また私は訳のわからない涙を流していた。

「それならさ、私が跳ばしてあげるよ。5m61cm。」

その女は唐突にそんなことを言い出した。あまりに突拍子が無さすぎて、どんなに止めようとしても止まらなかった涙が急に止まってしまった。

「1 週間後、神通川の河川敷で待ってるよー。」

そう言い残して、彼女は帰っていった。嵐のような一時だった。それから 2 日間はどうせ冷やかしだと考えて、約束のことなど気にも止めなかったが、約束から 3 日後の仕事を終えて、自然と足は近くの公園に向かっていた。いつ以来だろうしっかりストレッチをして汗を流すのは。それから夜中の秘密特訓は 4 日間続いた。 そして、遂に約束の日。高校の陸上部のジャージに身を包み、私は神通川の河川敷に向かった。

「待ってたよ。さぁ、奇跡でも起こしてみましょうか。」

彼女は私の知らない人間を 5,6 人連れて待っていた。いつ準備したのだろうか。河川敷にはちゃんと走り幅跳びが出来るように掘り起こされ、均された簡易の砂場が作られていた。

「さてと、準備はいい?」
「もちろん。アップも完璧!」
「それは良かった。じゃあいっちょ空まで飛んでいってもらいましょうか。」

彼女がそう言うと、黙って私はスタート位置に着いた。心臓の鼓動が聞こえてくる。しばらく忘れていたこと感覚。ホイッスルがなり全力で走り出した。踏切位置が見えてくる。本能の赴くまま、私は27年間の思いを込めて精一杯の力で地面を蹴った。そのコンマ数秒後、ズシャっと私の体が砂に落下する音が響き渡った。

「記録は…4m32cm」

…当たり前の結果だ。むしろ現役を退いて随分と陸上から離れていたにも関わらず、よくそれだけ跳べたものだと自分を誉めてあげたいくらいだ。

でも、なんでだろう。悔しい。インターハイに進めなかったあの時より、何倍も悔しい。

「どう? 久しぶりに本気になった感想は?」

まだ立ち上がれない私を除きこみながら、そう言った。

「ほんと最悪。何が空まで飛んでいってもらいましょうかよ。全然じゃない…。でもこれが私の精一杯なんだよね。インターハイ予選もあれが私の本当の実力。だからねほんとスッキリした。この年になってまだ夢を見れるなんて思いもしなかったよ。」

「それなら良かった。」

そう言うと、彼女は連れ添いの人々を連れて帰っていった。 本当に夢でも見てるんじゃないかって、そう感じた1日だった。その日の飲み会で私は 10 人を飛び越えていった。

黒い汁/駅/縦槍ごめんね

場所はとある駅前。望は高校時代からの親友である、宏樹と待ち合わせをしていた。その待ち合わせに宏樹は三十分遅刻してくる。

望「 おい、おせーぞ! 待ち合わせに遅れるなら連絡ぐらいよこせよな。」
宏樹「 ごめんごめん! お前の好きなブラックコーヒー買ってきたから許して!」
望「 ・・・俺ブラック飲めねーしよ!」
宏樹「 えー! お前この前ブラック大好きって言ってたじゃん!」
望「 言ってません! 絶対言ってません! もうどうすんだよこのコーヒー。お前が買ってきたんだからお前が責任もって飲めよな!」
宏樹「 やだよ! 俺ブラック飲めねーもん!」
望「 なんなんだよ! じゃーもういーよ・・・。」
宏樹「 はは、ごめんごめん。なんか懐かしいなこの感じ・・・。高校時代はよく俺とお前と百合香の三人でこんなバカな会話したっけな。」
望「 ・・・あー、懐かしいな!」
宏樹「 お前ってさ、百合香と付き合ってるんだろ?」
望「 まぁ、そーだね。」
宏樹「 もう、やった?」
望「 な、な、な、なんでお前にそんなこと言わなきゃいけないんだよ!」
宏樹「 いーじゃーん。減るもんじゃあるまいし。しかも俺たちもう二十四だぜ。今更何が気持ち悪いんだよ。」
望「 それはそうだけどさ・・・。」
宏樹「「で! どーなんだよどーなんだよ!」
望「 ・・・( 黙って頷く)」
宏樹「 ははは、なんだよそれ! 気持ち悪いなー! 」
望「 せっかく答えたのに気持ち悪いはひどいだろ!」
宏樹「 だって実際きもいだろ! まぁそっかそっか。おつかれい!」
望「 なんだよ、おつかれいって! そーいえばさ、お前なんで今日俺のこと呼び出したの?」
宏樹「 あー、はいはい。特にそんな大それた理由はないんだけど。・・・まぁ俺の帰り道
の暇潰しになってもらえればなと。」
望「 お前、そんな理由で俺のこと呼び出したの!? 俺も仕事終わりで疲れてんだぞ~。」
宏樹「 まぁ、そんなカリカリすんなって。ほらブラックコーヒーあるぞ!」
望「 しつこい!」
宏樹「 もー、ノリ悪いなー。」

宏樹「 ところでさ、五年前くらいにさこの駅の線路沿いで爆弾テロが起きたの覚えてる?」
望「 あー、死傷者が二十人以上でた結構ヤバい事件だった気がする。」
宏樹「 そうそう。俺さあの時その爆弾テロがあった駅の近くにいたんだよ。爆発の音とか
も鮮明に聞こえてきてさ。柄にもなくちょっと興奮しちまったよ。」
望「 お前は年中無休で興奮してるだろうが。てか色々不謹慎だろ。時と場所考えろよ!」
宏樹「 わりぃわりぃ。」
望「 後用がないなら帰ろうぜ。俺もそんなに暇じゃないんだよ。家戻って早く明日の会議
の資料作らなきゃいけないんだよ。」
宏樹「 まぁ、それもそだな。そろそろいい時間だし。」
望「 じゃー帰るか。」

宏樹は望より三駅手前で降りる。そのあと宏樹から望の携帯にlineが入る。

望「 なんだ、宏樹からかよ。さっき別れたばっかなのによ。めんどくせーな、あいつ。」
宏樹line 「 おう、望さっき別れたばっかなのにごめんな。実はささっきお前にいい忘れたことがあった。俺さお前と百合香が付き合う前に百合香と付き合ってたんだよね。で、俺が百合香に振られてすぐお前と付き合ったわけだ。でもこれっておかしいことなんだよな。お前と百合香が話したのってさ俺が知る限り俺がお前に百合香を紹介した一度だけなんだよな。後お前ら結婚するらしいじゃん、付き合ってまだ二ヶ月だってのに。俺だけ何も知らない。知ったときにはもう遅い。全て終わりにしような。全てを無にかえそう。」

レポーター「 今日未明、斉京線で爆発事故が起こりました。死傷者は三十名以上。確認
できている死者は川上望さん二十四歳と佐藤百合香さん二十四歳。繰り返し
ます。・・・」

宏樹「 望、知ってるか。百合香の好物はブラックコーヒーなんだ。」

 

https://www.dropbox.com/s/0qpoqgvgbud1l5t/%E9%BB%92%E3%81%84%E6%B1%81-%E7%B8%A6%E6%A7%8D%E3%81%94%E3%82%81%E3%82%93%E3%81%AD.docx?dl=0