「大作戦」カテゴリーアーカイブ

いのちだいじに/大作戦/YDK

世は11月24日。1ヶ月後は12月24日、クリスマスである。

ミッション「クリぼっちを回避せよ」

……しかしこれはどう考えても厳しい。あと1ヶ月で仮につきあったとしてもなんとなく気まずいクリスマスになりそう。ギクシャクリスマス。というわけで作戦変更。

ミッション「リア充を破壊せよ」

花火の時にあえて横で炎色反応を大声で叫ぶとかいうあれですね。カップル各パターンに場合分けしてそれぞれの対処法を練っていきましょう。

①イルミネーション系カップル
これは花火の時と近いですね。横で何かを言うことで場を白けさせて行くのが手っ取り早いでしょう。
例:女「わぁ〜〜綺麗〜〜」
男「君の方が
私「電気代無駄遣いすぎるだろ。 世界には毎日のご飯にも困ってる貧しい子供達がいるって言うのに。この光の綺麗さは日本人の心の汚さと反比例してるんだろうな……」

はい。これで恐らくこの2人は世界の子供達への罪悪感に苛まれながら聖夜を過ごすことになるでしょう。

②おしゃれディナー系カップル
いますねぇ。クリスマスだからって少し高めのrestaurantでdinnerしてInstagramにあげちゃうようなカップル。さて、どうしましょうか。
例:男「(店員に向かって)例のアレを」
店員「こちら、当店特製の七面鳥の丸焼きでございます。クリスマス限定且つ予約必須の人気料理となっておりますのでごゆっくり堪能ください」
女「わ〜〜ありがと〜〜、そういえば、なんでクリスマスは七面鳥なんだろ…?」
私「七面鳥はアメリカ原産ですが、16世紀にスペイン人によってヨーロッパにもたらされ、アメリカではヨーロッパから逆輸入された七面鳥が改良されて食用となりました。(中略)
キリスト教徒であった開拓民の人々は、神とネイティブ・アメリカンの人々に感謝する意味合いで、その年の秋に「感謝祭」を催し、お祝いのメニューとして七面鳥を食べました。(後略)」
男・女「……」

うんちく祭りです。興味の無いうんちくほど人の気分を害すものはない気がします。

③聖夜は性夜系カップル
ラスボスです。リア充というよりリア獣みたいなこいつらをどうしてやろうか。ラブホ燃やすことも考えましたが、放火の罪は重いのと自宅でやられたら終わりということでやめました。
例:男「(ホテルに誘いたいな…)
女「(今日の夜どうなるのかな。一応明日の朝は空けてあるから別にどっか止まっても…)」
私「(殺意の波動🔪)」
男「あ、あ、あのさ!!!!」
女「ど、どうしたn
私「ただいま性病防止のキャンペーンを行っておりまして、コンドーム無料配布してるんですけどおひとつどうですか〜〜???」
男・女「あっ…(赤面)」

やったぜ。しかしこの作戦の弱いところは逆に性交の成功へのスタートを切らせてしまうところですね。改善の余地があります。あと生派のクソ野郎には効かないです。難しい。

とまぁ3パターンのクリスマスリア充実をターゲットにして攻略してきたわけなんですが、いかがでしたでしょうか。皆さんのクリスマスが幸せなものになることを願っております。

美学/大作戦/なべしま

大作戦なんてステキでクールでカッコよい言葉は、怪盗、秘密結社のような、同じくハードボイルドでドキドキする組織にのみ許される称号だと思っていましたところ、私の目前では軽薄な男が妙齢の少女を軟派に勧誘しておりました。
暖かい昼下がりに心地好い喫茶店の、いつか座ってみたいと思っていた露天席を満喫中に、面倒くさい騒ぎは御免です。しかし少女も手馴れたもので、男をサラリとかわして大通りへと消えて行きました。普段ならば歯牙にも掛けない私ですが、その男性が懐から取り出した紙に”恋愛大作戦”と書かれているのを見てしまい、これは一つ何か言ってならねばと向かいの席に腰を据えました。どうせ一つ空いた席なのです。

「な、なんですか」
「あ、どうも……一つ言いたいことがありまして。貴方、それがいけないンです」
と言って紙を指さししますと、ハァと気の抜けた返事をするものですからつい力が入ってしまいました。

「大作戦と名付けるならば、まずそれなりの覚悟が必要なのです。そも、このようなステキにクールな言葉は使う者を選ぶのです。すなわち、貴方は大怪盗になるべき!」
「怪盗ですか」
何言ってんだこいつは、と顔が言っていましたが、返事をしてくれましたことに勇気付けられます。

「さっきの方は麗しい人でしたが、つまりは宝、あなたは彼女を法の網に触れ、指名手配されながらも、掴み取らねばならないのです、わかりますか。最初は失敗こそするでしょうが……しかして経験というものはどうしようもありませんからね。次です次。仕事を休んで嫌がる怪盗がありますか」
「まぁないでしょうね」

とまぁ散々好き勝手言いまして、怪盗なら相棒が必要だ、あらまぁその紙を書いたのは友人ですって?なら二人で頑張るのですと締めて私はお店を出ました。店内が混み始めたのです。
それからしばらく経つと、新聞に二人組の怪盗が多々出現するようになりました。私としてはドキドキして楽しいことですが、そんなに素直に人の言うことを聞かなくとも良いのにとは思います。

Homosapiens Experience/大作戦/ほのほ

江戸末期、慶応三年。人里離れて京は山中、或る世捨て人。

風は叫んだ。激情のままに。落ち葉は跳ねた。さっとひるがえる赤、山はたちまち燃え上がる。程なく、曇天の隙間から鉛の空がこぼれ始めた。ぽた、ぽたり、ざあざあ。雨は瞬く間に篠突くと、勢いのまま風に乗り、縦横無尽に山肌を駆けた。ばちばたん、と木々を蹴りながら。空前絶後の大嵐、その中に、ぽつんとひとり彼はいた。

はじめに聞こえたのは耳をつんざくような歪み。まるで鉄砲玉、それは彼の鼓膜を貫くや否や、内から頭を揺さぶった。衝撃。まさに衝撃だった。次の瞬間、彼は地響きのような大きなうねりに飲み込まれた。腹に閉じ込められた息がやっと吐き出されたかと思えば、聞こえてきたのは血眼の駿馬の群れ、その蹄音。そして大砲を撃つ音、刀がぶつかり合う音。その連続だった。最後に耳に届いたものだけは、彼にも聞き覚えがあった。歌だ。

やらねばならぬ。

衝動はふつと湧いた。彼はわけもわからぬまま駆け出した。転がるように山肌を下り、何度もつまずいてもんどり打って、やがて気がつく。いま彼を走らせるものこそがこの嵐の根源、そのものなのだと。笑いが止まらなくなって、声ともならない叫びが溢れた。なおも走り続けて小屋が見えた。雨か涙かでぐしゃぐしゃの体は、勢いよくそこへ飛びこんだ。

弾む息がしぼむにつれて、衝動は少しずつ輪郭を描いた。果たして彼に残ったのは、この激情を拡散したい、もとい発散したいという欲望。そうとわかれば話は早い。折良く彼は天才であった。山籠りにしたって、何をするにも世の目を集めてしまう窮屈さに嫌気がさして、適当に死んだことにしていたのである。

嵐が去ると彼は工房へ帰り、記憶を手繰り始めた。耳にしたものが凡そ楽器の類いであることは直ぐに見当がついた。まずははじめの歪み。三味線に似てこそいるが、よく思い出してみればその深み、広がり、三味線などでは到底及ばぬ。彼は三味線の弦を六つに増やし、胴体には大きな空洞を据えた。

二番目のうねりは琵琶、三番目の蹄音は小鼓、大砲は太鼓、そして最後は鋼の擦り合わせ。歌は自身で歌えばよい。三味線と同様、彼は次々と新しく楽器を作った。鳴らしては壊し、また作りの繰り返し。衝動のまま、日夜も忘れて製作に明け暮れた。

流石は天才である、彼は数ヶ月ですべての楽器を作り上げた。風呂敷で包んだ楽器を荷台に乗せ、かびた大八車を引き引き、実に十年ぶりの山下り。すっかりやつれた彼は、最早誰の目を引くこともなかった。

彼は街へ行き着くと一画を仕切り、楽器を並べた。珍しがって、群衆は集り始める。その中から童を二人つかまえ、それぞれに弾き方を教えた。最後に、俺の拍子に合わせろ、と伝えると彼らはこく、と頷いた。やはり滅茶苦茶を頼むには童に限る。

「刮目!」

それだけ叫んで拍子を四つ、唐突に合奏は始まった。六弦の三味線がかき鳴らし、太弦の琵琶は重く響き、鼓、鋼は跳ね回る。ぶんぶん、どんから、しゃん、ざんざん。旋律はおろか、音のひとつさえてんでばらばらな合奏を、もはや叫びと化した歌が束ねた。

それでも群衆は熱狂した。体はひとりでに揺れ始め、上を下への大騒ぎ。踊り出す者、輪になって駆ける者、それぞれが激情をぶつけ合い、分かち合った。頭のネジが外れるとはこのこと、その場で暴れるには飽き足らず、群衆は街の外へと飛び出した。

行く先などあるはずもない、まさしくかつての彼のように、走り出さずにはいられなかったのである。のちに「ええじゃないか」と歴史に名を残す、お祭り騒ぎがここに湧いた。

平成に名だたる音楽の祭典「京都大作戦」、その起源である。

いち高校教諭の苦心/大作戦/いせ

「さて、センター試験プレテストがいよいよ来週に迫っています!俺から言われるまでもなくちゃんと勉強してると思うが、気ぃ抜くなよ。ここまできたらやるしかないぞ。自分と教科担の先生を信じて、作戦立ててがんばれよ。」

クラス全体に声を届かせる。気を抜いてると心配と不安で顔がこわばるから、いかにも真剣そうな顔を作って言う。

もう11月後半、そろそろセンター本番まで50日をきろうとしている。担任している生徒は、目に見えて焦っているやつ、目が燃えてるやつ、目が死んでるやつ…それぞれが頑張っている。なかには俺の激励なんぞなんの腹の足しにもならんという風に、教科書を無心にめくっているやつもいる。                                                                 まぁ、なんだ。

「今日、放課後が面談最終日な。事前に決めた順番通り職員室来いよ。」

****************************************************

「失礼しました…」

前の順番の子がなんとも頼りない表情で職員室から出てきた。大丈夫?と思わず声をかけたくなる。ま、あたしも人の心配する余裕なんて少しもないんだけどさ。

ガラリ。「失礼します。」

3年ってやたら面談が多い、プレテスト近いっつってたのに。目の前には若くて頼りない 担任の先生。いかにも真剣そうな顔をして彼は言う。

「お、お前で最後だな。どうですか!調子は。」

ええ、そりゃもうずっとローテンションです。これまでの面談であんた知ってんでしょ。でも、流石にもうこの時期だしそんなこと言うわけにゃいかないでしょうが。

「はい、まずまずです。モチベーションにも変化ありません。」

「う〜ん。ま、お前の場合あとは数学だよな。たぶん教科担の先生にも言われてるだろうけど、時間配分をちゃんと自分で決めて、出来そうな問からうんたらかんたら。」

もう耳タコですよ、その戦法。                                              なんとなく上からなこの先生に、あたしの本当の現状を伝えたところで何も変わらないことはもう分かっちゃってんだ、なんとなく。                                              最後に家の机でまともに勉強したのはいつだっけ。

来年の4月にあたしちゃんと生きてんのかな。

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「失礼しました…」ぴしゃり。

最後の面談のやつもまた、何か腑に落ちないような、頼りない面持ちで職員室を後にしていった。                                                                                              あいつ相槌はうってはいたが、俺の話はまるで聞く気がないみたいだ。いや、クラス全体の雰囲気がそうなってる。前々から生徒からあまり尊敬されていないのを感じてる。隣のクラスをもってる先生は生徒からかなり慕われてるのに。

俺が受験生のときはどうだったか…これを言うとまた母校自慢って言われるんだよな…。

「がんばれ」は、すでにこの教室では意味を持たない。何かやつらのためにできる話はないだろうか。田舎育ちで落ちる受験なんて初めてのあいつらにかけてやれる言葉は何だ。

俺に、今できることは―

 

 

….イカン。俺まで不安で胃が痛くなってきた。

 

 

zizozizo7/大作戦/エーオー

1
その日、めじろ区地蔵ホットラインに一本の依頼が入った。
「ちゃんと、おつかいできますように」
依頼主はあらかわひろとくん(6)だ。いつもは幼稚園の送り迎えで母親に手を引かれながらこの道を行き来している。きょうはひとり、エコバックを持って若干あぶなっかしい足取りでやってきた。
なるほど、はじめてのおつかいというわけか。微笑ましい光景も賽銭箱に百円玉が投入された途端、一気に暗雲たちこめた。ひろとくん、君はまだわからないかもしれないがこのご時世主婦はそう簡単に百円を手放しやしないんだぜ。レジにて金額が足りないという事態にならないだろうかと石頭と苔の間にいやな汗をかいた。
さて、こういうことなら受けないわけにはいかない。コードネームMA345(めじろ区あさひな町3丁目45番地の地蔵)は区域一帯に指令を出した。あらかわひろとくん、はじめてのおつかい成功作戦、始動である。

いやべつに、金額に目が眩んだとかでは、決してない。

2
「おいふたりとも、指令が入ったぞ」
こちら、あさひな町1丁目2番地富士坂前三地蔵のその弐。要請が来たことを壱と参にも告げる。
「なるほど。345もずいぶん熱心だね。またはずんでもらったのかな」
壱はいつものように物腰柔らかく言った。参はケッと口を歪める。
「あいつ、公園の前に置かれてやがるからな。小遣いもらってはしゃいだガキが、ぽんぽんぽんぽん遊び半分でけっこうな額入れてくんだろ」
そう、確かに地蔵は立地によって依頼人の層も変われば賽銭の金額も変わる。こちらの三地蔵がご贔屓していただいてるのは主に坂の上に昔から住むご老人だ。
「まあまあ、お互い様だし協力しよう。この前は杖を忘れた高山さんの件で助けてもらったんだから」
壱ははんなりと鼻筋の通った顔で爽やかに言った。ことわっておくと三地蔵も微妙に一人一人顔が違い、おばあさまがたは壱を会いにいけるイケメンと絶賛し賽銭をはずんでくれる。
そうこうしているうちに、ターゲットのあらかわひろとくんが坂の前に現れた。買い物は序盤だが、さっそく不安になってきたのかきょろきょろと辺りを見回しながら歩いていった。参が舌打ちをする。
「あの程度でびびるなんて今時のガキはなってねえな。昔はこの坂超えるのだって命がけだったが、子どもも泣き言言わずに登ってったぞ」
「昔って江戸じゃん。だいぶ遡るじゃん。むしろ今は舗装されて、ここで命を落とす子どもがいなくなってよかったって喜ぶとこだよ」
そう、つまり、地蔵がたてられる1つの理由がそれなのだ。
「ケッ、甘やかしすぎなんだよ」
「まあまあ。僕たちがもうひとり増えないようにみんなを見守っていこう。四じゃあ、数的にも縁起が悪いしね」
ほがらかな陽射しのなか、坂の上から結構なアクセルの音をさせて車が下ってきた。傾斜により油断するとスピードが出てしまうらしい。

3
ていしぼうにゅう
パン、8まいぎり
シーザーサラダドレッシング

……よし、かんぺきだ。おかねもはらって、ポイントカードもだせた。あとは、おうちにかえるまでが、おかいもの。

4
昼過ぎになり、西田さんと廣田さんがここで待ち合わせて近所の集会場へ向かうのを見送った。今日は生花のお稽古のようだ。
「214、この前賽銭箱壊されたらしいぜ」
「えっ、それはまた気の毒に。足を伸ばしにくい場所なのにね」
「人通り少なくて誰かに見られる心配もないからだろ。でも賽銭もそんなに……」
「214にとっちゃ踏んだり蹴ったりだな」
地蔵事情を語らっているとひろとくんの姿が見えてきた。はじめてのおつかいも復路、あと一息である。
あっ。
と思った時には遅かった。坂の目の前でひろとくんは転び、その拍子にがちゃんと何かが割れる音がした。エコバックに滲み出る液体、ドレッシング。見ているこちらさえ胸が痛くなる、おつかいがトラウマになってもおかしくない事態だ。
「試練だな。どう乗り越えるか見ものじゃねえか」
参だけはニヤッと笑っていたが不意にその顔つきがさっと凍った。。
坂の上からトラックが降りてきた。どうやら地面に這いつくばってしまったひろとくんが見えていない。スピードを緩める気配がまるでなかった。
「ど、どうする?!」
「まだ距離はあるけど、」
「いやもう限界だよ、アウトだよ」
「どうしよう、どうしたら止まるんだ」
二人ともパニックになっていたが地蔵は地蔵、それがひろとくんに伝わるわけもない。エコバックの中身をいじるひろとくん、トラック。どうしようもない。だって俺たちは地蔵で、どうにも、
その時、参の舌打ちが聞こえた。次の瞬間、彼の頭はぽーんと、それはそれはけん玉の赤玉のごとく弧を描いてトラックの眼前に躍り出た。
俺たちは声も出なかった。トラックは急ブレーキを掛け必然的にひろとくんの手前で止まることとなった。やっと振り返ったひろとくんの横、参の頭が転がっている。
「もう1つ増えたら、縁起がわりいだろ……」
頭部のかけた参が弱々しく言った。ひろとくんの手がその額に触れ、トラックから運転手が慌てて駆け寄ってきた。

5
『よくやってくれた、MA102の参。これで地蔵ホットラインも益々の発展を見せるだろう』
「あほか。これ以上命はかけられねえからな」
MA345からの伝令に参は不機嫌に返した。あの後、ひろとくんとトラック運転手の一報ですぐに町内会による参の緊急手術の手はずが整った。三地蔵も一躍有名となり「命を助けた地蔵」という新たなる伝承がこの地に生まれた。
「よかったね。こうなれば車の人も気をつけるようにはなるだろうし」
壱は柔和な笑顔を浮かべて言った。町内会の広報誌で「爽やか王子様系地蔵」と称された彼は虜にする年齢層をちゃくちゃくと広げている。
「やってられるか。自分の命は自分で守れっつの」
参は相変わらずだ。顔の傷は残ったが、それが逆に「ワイルドイケメン地蔵」として人気を博している。
さて、俺のことは必要最小限に留めておく。「超地蔵系地蔵」。どういうことやねん。深く考えると悲しくなるが、ひとまずセンターであることに自信を持って行こう。まさかアイドルグループの人気格差問題の葛藤を味わうことになるとは、地蔵人生いろいろである。

これだから嫌だよ/大作戦/θn

その怪物が東京を繭で覆ったのは5年前のこと。

あらゆる都市機能が破壊され、昼か夜かも判別できなくなったその街は絶望し、日本という国家ごと崩壊の一途を辿ってしまうように思われた。

しかし。

「でたなバケモノ!」

怪物の前に現れたのは、鮮やかな衣装を身に着けた5人の若者たち。

そう、俺らはヒーローだった。
それはもうとんでもなく、紛れもなくヒーローだったのだ。

*****

ひょうきんな入店音も生活に根ざしてしまえば案外気にならないように、人間ってのは一度「当たり前」になってしまえば、それになんの疑問も抱かなくなる生き物だ。

手には焼きそばパンと5個入りパックのこしあんパン。
これは習慣だ。朝6時に起きて6時半に家を出る。駅前まで歩いて焼きそばパンとこしあんパンを買う。

店を出ると6時47分。ここから小走りして6時51分の電車に乗る。

この社会でヒーローが現れたのは5年前、巨大な蛾のような怪人の登場によるものだった。

突然振って湧いた非日常に日本が、いや世界がパニックになったことはいうまでもない。しかしその一方で多くの人間が、その非日常を待ち望んでいた自分を認めざるを得なかったのである。

あの怪人は何のために存在するのか、いつの間にか凄惨な被害の賠償や責任、復興の問題はすり替わり、非日常そのものへの興味ばかりが世界に溢れた。某国の兵器だとか、本当の神の姿だとか。

そしてやがてその非日常に慣れ始めるのである。
東京は繭に包まれることが当たり前になり、怪人は兵器でも神でもよくなった。
慣れは怖い。慣れるということは馴染むということだ。

そこに現れたのが新たな非日常、ヒーローだったのである。

*****

「小宮さん、おはようございます」

吊革に捕まってぼんやりしていたら後ろから不意に話しかけられた。

「ああ、弓削ちゃんおはよう」
「いつもこの電車乗ってらっしゃるんですか?」
「そうね」

全身をモノトーンで固めた弓削ちゃんにもそういえば最初は違和感を感じていた。変身後のコスチュームはあんなに派手なピンクなのに意外だなぁ、みたいな。

「今日はでないといいですけどね、なんにも」
「まあそれにこしたこたないよ」

早く怪人がでないかと思っていたこともある。
突如現れた救世主集団はこれまた世界を大いに沸かせた。蛾の怪人を繭ごと焼き払った俺たちは一瞬で英雄になり、喝采を浴びた。

その後も不定期に怪人は現れ、そしてそれを解決すべく俺たちは出動した。

いつの間に戦うことはまるでなんでもないことになってしまったんだったかなあ。

『君たちが世界を救うんだ』

最初に声をかけられたときは子どもの頃の夢を叶えてもらえるようでたまらない気持ちになったわけだけど。よくよく考えれば俺たちはもう子どもじゃない。順応しなきゃ淘汰される。大人になっていたのだ。

あれだけ心踊った作戦会議は毎朝8時に行われる。今やテンプレ化した日常だ。

まあ戦うんだけどね。生活、かかってますから。

大ではないけど/大作戦/味噌の

風が吹いて飛ぶ。宙に踊る。

ここから出てみたかった、大空を舞ってみたかった

 

ふわりふんわり

ふわふわそよそよ

 

わたしをとめる力はタイムリミット

大きくなったわたしを離す

わたしをずっと守ってくれた

わたしをずっと縛り付けてた

離したその先、わたしは知らない

離れたその先、逃れたわたしはどうなるのだろう

 

だけどそれでも広い世界

井の中の目で見たかったの

全身で聞きたかったの

まっさらな手で触れたかったの

抱えきれない腕で抱きしめたかったの

 

どんなにつらくても、それはきっと素敵だ、って

 

ふわりふんわり

ふわふわそよそよ

 

ふわり。

 

宙に踊る夢を見る

まだ見たことのない世界を抱きしめたい

まだ見たことのない世界と戦いたい

 

大きな世界、たくさんの中で

きっと大になんてなれないけれど

大になりたくて生きている

 

どうやって飛んでいこう

何度も昇って何度も沈む太陽と考える

ちいさなわたしの中にある、

せかいにとっては小さくて

わたしにとっての大きな作戦

ディズニーデート大作戦/大作戦/仄塵

一ヶ月後の今日、何の日だと思いますか?そう、クリスマスでございます。今年のクリスマスの過ごし方、何を考えておられますか?

子供の時、イブはお父さんお母さんと家近くのデパートへぶらっと行き、広場の大きいクリスマスツリーとイルミネーションを見て、そのデパートの高級スーパーでおやつを買ってもらった。割と充実した満足感の高いクリスマスの過ごし方だった。

一人暮らしになり、食だけのクリスマスになった。10月のうちに横浜駅の高島屋でホールのクリスマスケーキを予約して、イブの日は学校帰りに受け取ってからスーパーでローストチキンを買う。それもそれで幸せだった。

しかし今年のクリスマスは、ディズニーに行きたいという願望がむやみに心を平穏を乱す。三年目のイブぼっちケーキはもう耐えられない!って心の中の人が抗議してるらしい。

クリスマスのディズニーはよし行こう!って言ったらリュックを背負って舞浜駅で降りられるもんじゃない。絶対条件はなんと言っても、「一緒に行く人がいる」こと。別に女友たちと行っても変ではないが、その肝心の友たちは今年彼氏ができた。クリスマスは彼氏をほったらかしにして自分とディズニーへ行くわけがない。それなら3人で…いや何を考えてるのかお前は。

自然的に一緒に行く彼氏的な存在が必要ということに気づいた。ダブルデートとか最高に浮かれてるじゃん。しかし時限は一ヶ月、12月25日を過ぎたら意味がないんだ。今から作戦をしっかり立て、少しでも成功率を上げたいところ。題して、「クリスマスのディズニーデート大作戦」

 

1st STAGE あの人と出会う

恋愛に踏み出す第一歩である。自然にできないのなら、こっちから積極的に出会いを求めるしかない。その際は勉強でも計算でも何でもする。

(以下ネット記事から抜粋)

  • 自分磨きをする、見られている意識を常に持つ
  • 下向き禁止。常に周りの男をしっかり見る
  • 誘いを断らない、勉強も就活も後回しとりあえず行く

以上の事項を徹底的に守れれば、2週間見込みでディズニーへ行く人に出会い、お互い一目惚れするあの0.1秒が訪れてくるはず。

 

2nd STAGE ディズニーへ行く約束をする

ファーストステージをクリアできればあとは簡単だ。付き合ってから2週間も経っていない二人はまだ一目惚れの感覚が残って、しかも相手のダメなところを発見する時間もないから、ラブラブのピークだと予想できる。ここで「クリスマスどこ行きたい?」と聞かれ、「二人のはじめてのクリスマスだから一生忘れない思い出を作りたい」、「今年まだディズニーに行けてないの」とかで匂わせ、ディズニーデートの約束をする。

 

3rdSTAGE フルな女子力を出す準備

 クリスマスまで2週間切っているので、急いでデートの準備に取り掛かる。

  • ヘアサロン、ネイルサロン、美容エステを通う
  • 黒、灰色、茶を避けて服を選ぶ
  • 揚げ物を避け、早寝を心掛け、ニキビを予防する
  • 「初デートの注意事項」「異性がキュンとする仕草」などのまとめ記事を読み込む

 

Last STAGE 舞浜があなたを待っている

準備万端で迎えるリア充デビューの日。4時に起きてナチュラルメークをしっかりする。そしてバスで家の最寄り駅に着き、ちょっとおしゃれした彼がそこで待っている。実は3日前のラインで

20:12

「当日どこで会う?」

「舞浜駅でも新木場駅でもいいよ」

「そう」

20:17

「でもお互い家近いし、やっぱり俺が仄ちゃんの最寄りで待ってるから一緒に行こう」

「え、いいの?」

「嬉しい❤電車の時間退屈だから」

なんて来ちゃったから、電車で話す話題も一応考えとく。そういえば音楽の趣味が合う人がいいな、そうしたらイヤホン半分こにして音楽を聴くのも◎

いざ夢の王国についたら、もう何も考えず楽しむ。「目標達成おめでとう」のくす玉は、自分の中でこっそり割ることにしよう。

 

 

 

 

……

【現実見るPlan B】その一 レンタル彼氏を借りる

彼氏が出来る目処が全く立たず1週間を切り、それでも「デートらしき」ことがしたい場合は、レンタル彼氏に手を出す。でも時期的には空いている「タレント」がいるかどうかは不明であり、そして繁忙期追加料金が発生する恐れがある。

 

【現実見るPlan B】その二 クリスマスぼっちディズニーを敢行し、有名になる

浮かれたカップルとグループに混ざって堂々と歩き、気分によってミニーちゃんのカチューシャも着用しディズニーを満喫する。終電で帰り、次の日に「一人でクリスマスのディズニー行ってきた」と題するブログを投稿し、一時間で閲覧数2万を超え、ツイッターにもリンクが貼られ、1日経たないうちに超有名人になる。

A作戦/大作戦/峠野颯太

ん、誰だ。こんな朝っぱらからやってくるとは……。アァ君かね。いいぞ、入りたまえ。おっと、ちゃんと靴は揃えてくるんだぞ、いいか。私はそういうところには厳しいからね。



やけに気合の入った顔をしているな。…今回は本気だから例のA作戦を教えて欲しいと?ハハハ、参ったね、君ではなく他の奴にA作戦は遂行してもらおうと思っていたのだが。いやいや、そんなに頭を下げんでくれ。分かった分かった。君の本気をしかと見せてもらったからな、ここまでされたら教えん訳にはいかんだろう。
ただし、だ。これで失敗したら命はないと思え。



ハハハ、そんな硬くならないでくれたまえ。ちょっとプレッシャーがあった方が君も気合が入るだろう?まあ、君の目を見る限りそんな必要もないかもしれんがな。



ではA作戦の内容を大まかに話すぞ。一度しか言わんし、何しろ極秘情報だ。くれぐれも丁重に扱うように。

まずは表情だ。君はさっきからずっと表情が変わらんな。緊張しているのだろうが、それでは標的の警戒心を強めることとなる。もっと柔らかい表情を心がけるんだ。そして標的に安心感を与える。これは基本中の基本だ。

次に視線。標的ばかりを見ていては怪しまれてしまうに決まっている。だからと言って全く見ないというのは、逆に近づくことが難儀となってしまう。程よく標的に視線を送ること。バランスが重要だ。

3つ目は相槌。標的に興味があるということを示さねば、標的は興味をこちらに示す可能性は極めて低くなる。そのためには、一番手っ取り早い方法、つまり相槌を打つことで相手への興味を存分に示すのが大切になるんだ。

次に手拍子。人間とは動くものに反射的に反応する性質がある。それを利用し、会話の最中、ここぞというときに数回ほど小さい音で手拍子を打つ。それによって標的の視線は反射的に君に向くこととなるのである。

そして同意だ。いかに標的を油断させるかが鍵となる。標的に同意を示すこと、つまり標的にとっての味方だと意識させることで、標的の君への信頼度が急上昇する。決して標的を否定してはならん。君の首を絞めることになるぞ。

6つ目は接触。今までに挙げた5つを卒なくこなし、距離が近づいてきたときに絶大な効果を生む。標的にわざと、でも自然に触れること。そうすれば、君に対する標的の認識がより強くなる。

最後に余裕だ。必死になりすぎても駄目、弱気になりすぎても駄目だ。ある程度の余裕を持ち、標的と接する。標的の動きを待ってばかりでなく、こちらから動くことも時には必要となる。そんな時に、余裕を持っていれば、すんなりと動くことができるだろう。終始余裕だけは持ち続けることだ。



A作戦は以上だ。今回の作戦は標的にとっての君への印象をより強いものとすることが目的となっている。これがうまく行ったらB作戦を教えてやらんこともないぞ。どうしたそんな顔をして。まさかA作戦のみで標的を撃ち落とすつもりだったのか?甘いぞ。千里の道も一歩から。まずは相手に近づかねば、何も出来ないに決まっておろう。

さあ、行け。大丈夫だ。君の目には未だ闘志の火が燃えている。私は君のことを信じているからな。








参考サイトhttps://nanapi.com/ja/27261

よろこばせたい/大作戦/フチ子

だんだん ふしぎなよるが きて
あなたと ゆめのなかへ

毛布の争奪戦を繰り返しながら、少しずつお互いのスペースを侵食する。一緒に3つめの季節を迎えようとしている。

「恋人」という関係性は脆い。愛や執着がお互いになかったとしてもなりゆきで始めることはできるが、愛や執着がどちらか一方にないなら近いうちに解散となる。

「ジュディマリ知ってる?」
「知ってるよ、ママがわりと好き」

ベッドの中で好きな曲、思い出の曲を押し付け合う。お互いに知ってる曲だったらふたりで歌うし、知らない曲なら次に会う時までに歌えるように聴きこんでくる。

「YUKIっていい恋もわるい恋もしてそうだよね」
「みんな、いい恋もわるい恋もしてるよ」
「ぼくたちは?」
「どうだろうね」

彼をよろこばせたくて、わたしにもっと惹かれてほしくて、今までたくさんのことを画策した。でもそれはわたしをよろこばせたいからだった。だから、彼を思って何かしているときは期待してしまうし、思ったような反応がもらえなかったら勝手に落ち込んでしまう。

これは、いい恋なのだろうか。

わたしはちゃんと彼のことが好きなのか、それともわたし自身のことが好きなのか。

期待もなにもしてない、わたしの行動や考え方や表情を彼は好きになってくれる。一緒にいておもしろいと言ってくれるけど、少し意味のわからないおかしいことを言うのは彼の方だし、わたしはケタケタ笑ってるだけだ。おもしろがらせようなんて一度もしたことがない。

たくさんの彼のためにしたことは泡となって消えるのに、こうやって何度も夜を迎えられているのは、彼が勝手にわたしのことを好きになって、わたしが勝手に彼のことを好きになったからだろう。

あなたとふたりで このまま ふたりで きえてしまおう

「ほら、これとかいいじゃん」
「lover soul?あぁ聴いたことある」
「ぼくと一緒に消えてしまいたい?」
「lover soulって偽りの恋、とかじゃない?意味」
「え、そうだっけ」

いま あなたのからだにとけて ひとつにかさなろう

「偽りでもいいからさ、チューして」
「よし、寝よう」
「ごまかさない、ほら、してして」

仕方ないと言いたげなキスがわたしは好きなのだ。勝手に。なんでもかんでもわたしは勝手なのだ。それでももっと好きになってほしい。これからもきっと勝手に好きになってねトラップを散りばめてしまう。そのトラップたちをうまくすり抜けてもいいけれど、彼は彼で勝手に用意していないトラップに引っかかり続けてね。

「おやすみ」

そっと目を閉じたころに、わたしの腕を彼の方に引いて、手を繋いでくるそのくせが、とってもとっても、好きなのだ。