「妄想」カテゴリーアーカイブ

おいお前ら、文章書いてる場合か?!/妄想/ばたこ

夏って特別な響きがある。「夏の夜」「積乱雲」「夏の海」「夏の星空・大三角」「夏祭り」「花火大会」「浴衣」「一夏の恋」数えたらきりがない。夏が近づくこの季節。じめじめとしたこの梅雨を越えて、満天の、満点の夏に想いを馳せるこの時期は嫌いじゃない。夏に向けて浮かれてる人間はきっと自分だけじゃない。

でも今年は特別だ。というよりは最後だ。うまくいけば来年になれば就活を控えてる、70%以上留年を控えてる自分にとって、この夏はそんな願望を叶えられる最後の夏だと思う。だったら本気をだそう。全身全霊で最後の特別なこの夏を満喫しよう。この2年間想いを馳せるだけに、妄想にとどまってしまった理想の「夏」。こいつを現実に変えてやろう。そう思い立ってからは早かった。コンビニで初めての夏ぴあを買ってやりたいことをリストアップした。

「花火(手持ちと打ち上げの両方)をしてビールを飲む」
「川でバーベキューして泳いでビールを飲む」
「ディズニーでチュロスとポップコーンを食べる」
「夏服を買いに行く」
「アイマスのライブに行く」
「ちょっと夏期講習に入る」
「夏祭りで屋台でいっぱい食べて飲む」
「温泉で日本酒を飲む」
「いい舞台を作る」
「ちょっと英語の勉強をする」
「4月は君の嘘を見直す」
「とらドラを見直す」
「京都大阪名古屋福岡辺りに旅行する」
「サッカーとフットサルをする」
「免許を取る」
「泣ける小説を三冊読む」
「プール(大きいの)に行く」
「星を観に行く」
「クーラーの効いた部屋でアイス食べる」
「散髪に行く」

これをメモしたノートをTwitterにあげて一緒に行く人を集めたら8割がた埋まった。

これは決して皆を満足させるための課題などではない。皆に見せることで自分の決意を示し、妄想を現実にするための覚悟だ。陰気にスタジオの文章を書いてる場合じゃない。幸せは待っていたって訪れない。自分で歩いて、走って、会いに行くしかない。

この文章に対するコメントは文章の批評なんざ求めません。みんなの思う最高の夏のピースを僕にください。お願いします!

曖昧3次元/妄想/ふとん

今日は新しいエリアに行ってみることになっていた。魔法使い用コメットローブを羽織り、ペンタグラムの盾に、魔骨杖を装備した。飼っているビビリスライムのビビを連れて、洞窟の入口に行くと、僧侶のホノカと戦士のケントが待っていた。合流して、大きなカニや、炎を吐くヤモリを倒しながら奥へ奥へ進むと、真っ赤なドラゴンが現れた。洞窟のボスだ。私たちは目を合わせて頷いた。ケントはひたすら気合拳を打ち、私は光属性の魔法ズバビガンを唱え、杖を振り続けた。さすがに強くて、ダメージを多く受けるけど、ホノカが岩陰からルオナを唱えて回復させてくれる。ケントのクリティカルヒットで、ついにドラゴンは倒れた。やった!ドラゴンは暗黒の翼と、回復薬10個を落とした。250000経験値を手に入れた。少しは見習い魔法使いとして成長できた気がする。

 

 
胸は大きいほうだし、足の綺麗さには自信がある。グラビアアイドルにスカウトされたこともある。毎朝制服を着て電車に乗るとき、席が空いていたらわざと男の向かい側に座る。スマホに夢中になっているように装って、窓の外を見るふりをして男の視線を確認すると、やっぱり、太ももと胸をちらちらと見ていた。興奮する。バレていないとでも思っているのだろうか。どうせバレてるんだからもっと堂々と見ればいい。これだから、スカートを短くするのはやめられないのだ。注意してくる男教師も、こっそり可愛い子の足を見て嬉しそうにしているのを知っている。
もっと見て欲しい。私を見て興奮して欲しい。

 

 

 

ゆっくり起きて、フレンチトーストを作って食べたら、最後の一枚が甘くて気持ちわるくなった。化粧する気も家を出る気もなくなって、意味もなく自主全休して、眠って、起きたら4時で、なにかをしないといけないと思って、エリンギにパスタをさして茹でた。大好きなお寿司のぬいぐるみはいつでもやさしく微笑んでくれるし、やわらかくて癒される。冷蔵庫をあけると、彼氏が買ったキレートレモンサワーがあって、飲みたくなって、勝手にあけた。キュンとくる酸っぱさと若干のアルコールが、寝すぎただるさと、久しぶりの自主全休への罪悪感をリセットしてくれるような気がしたけど、してくれなかった。肩こりを感じて、ベッドのふちによっかかって、天井を見上げていると、チャイムが鳴った。

保守的妄想/妄想/ネズミ

 

自分の翼で大空を自由に飛び回る。海の深くまで潜って深海の世界を冒険する。はたまた地球から飛び出してまだ見ぬ星を見つけに行く。こんな妄想をしていて楽しいのだろうか?

 

僕は妄想に耽るのが好きだし、自分でもよくしている方だと思っている。授業が退屈になったときとか、携帯をいじるのにも飽きて何もすることがなくなったときとか、寝る前なんてほぼ毎日のように妄想しているような気がする。

だが最初に挙げたような妄想は絶対にしない。していても楽しくない。僕は全くもって起きそうもないことを考えるよりも、ある程度現実味を帯びていることを妄想する方が断然楽しい。近い未来にもしかしたら起きるかもしれない、けどやっぱりそれは妄想に過ぎないのかもしれないというギリギリのラインを攻めるのが好きだ。

異性の妄想を例に挙げるとわかりやすいかもしれない。手を伸ばしても絶対に届かない高嶺の花みたいな人と付き合っている自分を想像しても何も楽しくない。妄想が深いところまで行く前に、どうせこんなこと現実には起こらないからという気持ちが押し勝ってしまう。逆にちょっとでも上手くいきそうかもという女の子との理想のデートというテーマで妄想を開始すると、次から次へと考えが浮かんでくる。このときはものすごく楽しい。実際に起きるかもしれないからこそ妄想がはかどるのであり、それが現実になったときの嬉しさといったら半端じゃない。

 

昔からこんな夢のない妄想をしていたわけではない。小さい頃は、それこそ子どもがよくするように仮面ライダーになってこういうシチュエーションでこうやって敵を倒すんだ、みたいな非現実的な妄想をしょっちゅうしていた。いつからだろう、妄想までが現実味を帯びてきたのは。

 

大人になる内にいつまで経っても非現実は非現実のままという認識が妄想にまで反映され始めたのだろう。それはここというタイミングはきっとない。本当に大人になる内にだ。

そんな大人になるまでに形成された価値観が今の保守的な妄想をさせているのだとしても、僕自身それが悪いことだとは思ってない。楽しいから。あと暇なときに頭の中ですることといえば、過去の栄光に浸ること。こっちはなんだか前に進めなくなりそうだから少し控えたい。

ゆめみがち/妄想/みくじ

肩を過ぎるくらいの真っ直ぐで柔らかい黒髪、身長は平均くらいで僕と並ぶと目線がわずかに上を向く、運動は得意ではないけど中学の頃はバドミントン部に入ったりしていて高校からは写真部という名の帰宅部。
実は自転車に乗れない。赤ちゃんが食べるような味がないお菓子が好きでわさびと青魚が嫌い。中学の途中までは髪はずっと短かった。猫アレルギーの動物好きで、小学校の頃はペットショップで働きたいと言っていた。

僕らの関係はいわゆる幼なじみだ。家が隣で窓越しに行き来する、なんてベタなことはないけど徒歩5分で行ける距離。
小学校2年の時から一緒に遊ぶ仲になって、中学ではたまに帰り道に話すくらいになった。

そして別々の高校に通うようになって半年と少し。
顔を合わせたのは7月以来だ。最後にちゃんと話したのは4月の終わりとかそのへん。

「帰りに会うの、珍しいね」
「そりゃ通学時間が違うし…」

少しの沈黙。

「背、伸びたね。中学の時はそんな変わらなかったのに」
「そう?」
隣を見ると、光がさしてわずかに茶色く見える瞳がこっちをのぞき込んでいた。

肩が、触れる。
目を開けると天井があった。
転勤族の僕には幼なじみなんていないし、高校を卒業して1年以上経っている。
夢オチだ。夢の中で幼なじみだった女の子の顔が思い出せない。夢でもいいから可愛い幼なじみのことをもっと覚えていたかった。
俺の息子さ、今年で結婚するんだけど大学から8年もそのコと付き合ってるの。
高校まではそれなりだったみたいだけど、それから一人だけなんて勿体ないよね。

いや、どうせアナタの息子なんだから上手いこと遊んでるわよ。絶対モテるでしょ。
君もさ、若いんだからイロイロ経験しとかないと。たくさん女の子と遊んだりした方がいいわよ。
先日ご飯に連れていってもらった父の友人とその彼女。人生経験豊富な2人の話は僕の理解の遥か彼方だった。
パリピ怖い。バブル怖い。
ずっと両片想いの幼なじみと高校卒業と同時に付き合ってラブラブセックスする童貞の夢を詰め込んだラノベとエロ同人の世界に閉じこもろう。

妄想評論家/妄想/エーオー

白い壁の静かな個室で男2人は向かい合う。ナフキンを広げシャンパンの泡を嗜み、しばし待てば給仕は皿に乗った紫陽花を運んできた。
「さあ、では早速頂くとしようか」
「そうしよう」
チン、とナイフが僅かに皿に当たる。青と紅のまだらな斑点模様の鞠を小さく切った。口に運ぶ。
「なかなかだね」
「うむ。ぬばたまの瞳を持った女人だ」
「確かに。どうもこの舌触り、待ってと願って死んでしまったようだね」
「余韻はその百年後に咲いた百合かな」
目の前の男はナフキンで口元を拭った。給仕はまた次の紫陽花を運んでくる。今度は切手を貼り合わせて作ったような花弁だ。
「おや。すこしちりりとくるね」
「ふむ、風呂場にいた百足がかわいくなってしまったんだね」
「でも水を張ってしまった。百足は溺れてしまったんだ」
「随分ちっぽけな感傷だなあ。後味が妙ににがい」
「でも僕は好きだよ、こういう味も」
紡がれる言葉。金属がちいさく擦れる音。細切れになる群青。運ばれてきたメインディッシュは血も滴るような。舌鼓を打ちソースまで綺麗に平らげて、ふわふわとした気持ちでグラスを傾け合う。泡が煌めいた。
ふと、腹の中でしゅわしゅわと溶ける心地がした。
「ねえ、きみ」
目の前の男がこちらを見た。底知れぬ黒に黒を重ねたような瞳だった。
「僕たちは、こんなものを食べてしまっていいのだろうか」
グラスをまた傾ける。彼の表情は変わらない。
「なんだい? こんな幸福には見合わないって?」
「いや、そうではないよ。違う、もっと違う」
ふと、1枚の藍が白いテーブルクロスに落ちていた。それはまるでインク溜まりのように、毒々しい光沢に輝きながら染み出してきた。

しんじゃえ、しんじゃえ、しんじゃえ

ナイフが鋭い音を立てて床に落ちた。立ち上がっても泡の音が耳にこびりつく。震えるリキュールが鳴り響く。しんじゃえ、しんじゃえしんじゃえ。終いには同じ音、死体に溜まったガスが昇る音が自分の胃の中からも聞こえて、耳を塞いでも隙間から入り込む。そうして舌に鮮烈に蘇ったのは、あのメインディッシュ。噛み締めた、男に捨てられて狂った女の味。青紫のぶちが広がっていく。熟れた肉が除くまで歯磨きを延々と繰り返し口の中を血だまりにして死んだ女のーー

「大丈夫かい、君」
ナフキンを差し出された。震える手でそれを受け取り鼻をかんだ。
「あ、」
紫紺が、ひとひらふたひら白布にこびりついていた。

*************

突っ伏した目の前の男を見た。鼻をかんだナフキンには青い染み。銀のナイフでこめかみに歯を入れて一周する。象牙色の頭蓋骨を叩けば、しゃなりしゃなりと花びらのこすれる音がする。
ベルを鳴らす。給仕が現れた。
「次はこれにしよう」
「畏まりました」
一礼して手際良く布を広げ始めた。口の中に唾液が溢れ、食べたばかりなのにちいさくぐるると胃が鳴った。

妄想三番勝負/妄想/ノルニル

 

妄想ライフハック

 

     妄想は世界をすこしだけ生きやすくする。

 

     慣れないスーツに身を包み、ターミナル駅で行列に並んで電車に乗り込む。運よく座席を確保したものの、目の前には二人の夫婦。
     どうやら他の人と争って席を取り合って、結果負けてしまったらしい。自分の隣の席がひとつ空いているけど、これじゃ片方しか座れない。遠慮がちに妻の方が自分の隣に座る。
     これから40分ほど電車に乗るけど、黙って席を立った。妻のほうが目を丸くしているのを横目に、すこし距離をとってみる。すると夫の方が、横柄な態度で譲った席に座った。

     つり革を握って、人垣の間からちらりと夫婦の様子を見る。夫の方はずっと憮然とした様子だ。見たところ特に荷物もないし。自然と自分の抱えた荷物や、揉まれて乱れたスーツに視線が向かう。こんなことなら譲るんじゃなかったかも。
     いやいや、とかぶりを振った。もしかしたら夫婦のどちらかは、身体が弱くて電車で立っているのが辛いのかも、とか、長らくデートしてなくて今日は久しぶりのデートなのかも、とか。そういう風に思えば気はいくらか楽になる。

     自分勝手な思考や願望に他人を当てはめ、自分の心のなかだけの物語にすることで自分がしたことをを正当化する。そこに理由が生まれれば不満の溜飲も下がる。妄想することで、世界はすこしちがってみえるのだ。

 

     手持ち無沙汰な移動中、スマートフォンに「Ingress(イングレス)」というアプリをインストールした。
     イングレスは言ってみれば、リアル空間を舞台とした陣取りゲームだ。プレイヤーはエンライテンド(緑)とレジスタンス(青)に分かれて、それぞれの領土の拡大を目指す。青が好きだし、抵抗勢力はロマンあふれるからレジスタンスを選んだ。

     さてこのゲーム。面白いのが、ポータルと呼ばれる拠点が現実世界でのランドマークだとか、彫刻や看板とかいった目印になっているということだ。プレイヤーは自らのスマートフォンをレーダーにしながら、GPSを利用してポータルを探して起動し、他のポータルとリンクを確立して領土を広げていく。
     それらのポータルは非常に数多くのユニークな場所に配置されている。というのも、もともとイングレスはGoogleの研究の一環だったため、Googleマップの情報を利用しながら現実世界と仮想空間の繋がりを可能にしているというわけだ。

     そして、イングレス最大の魅力はここにある。ポータルとして設定された場所を訪れることで、プレイヤーは今まで現実で見向きもしなかったものに目を向けることになる。仮想空間から現実世界へと飛び出すような、新たな発見があるのだ。
     また、ポータルとポータル、つまり場所と場所をリンクさせることで、世界を繋げていくような高揚感が生まれるのも大きな魅力のひとつだ。思い出は場所に固定されるというのが持論だが、これは他の人と自分の思いを繋げていくような感覚を与えてくれる。

     こうした付加情報の技術、ARは近年次第に浸透している。妄想するとはすなわち、世界に情報を付加することだ。それにより、時に世界はいつもと異なる姿を見せる。そうして少し、世界は生きやすくなる。

 

     イングレスのチームは来月、任天堂と共同のプロジェクトとして現実世界でのポケモンゲット&バトルを可能にするアプリ、「Pokémon Go」を配信するそうだ。プレイヤーはトレーナーとしてポケモンを持ち歩き、野生のポケモンにモンスターボールを投げ、時には他のトレーナーとバトルする。
     「かがくの ちからって すげー!!」多くのゲーマーが思い描いた世界が、現実のものになるときが来た。こうしていつの日か、少年の妄想は現実になるのかもしれない。

 

とりあえずは挨拶を/妄想/やきさば

例えば、星がきれいだとか、晩御飯何作ろうとか、この映画面白いだとか。そういうとき、僕は泣きそうになる。

 

疲れた。もうなんのやる気のない足をゆらゆらと動かしながら岐路につく。特に今日も疲れること何もやってないけれど、なんだか大学に行くだけで、どっと体力が奪われるんだよなあ。やっぱり知らない人がいっぱい集まる空間そのものが苦手なのか。

家に入って時計を見れば、もう夜の10時を回っていた。もうそんな時間か。この時間から一から料理を作る気力なんてわかなくて、そういやおととい買ったであろうカップラーメンをすする。

ずるずる。ずるずるずる。別に特に美味しいわけでも、特にまずいものでもない。無心になって箸を進めているといつの間にかカップの中は空っぽになっていた。

 

はあ、疲れた。今日も特に大した事やってないけど。これから、洗濯して、風呂入って、課題やらなきゃ…。

ああ、もうやる気が出ない、こうしてベッドの上に転がってしまったらもう起きれるわけがない。今日はもうこれにて終了だ、お疲れ自分、おやすみ自分。

 

「あのー、これあなたの?」

突然誰かに話しかけられた。誰だ、大学で僕に話しかけてくる奴なんていないのに。顔を上げるとそこには知らない顔。手には僕のシャープペン。

「っっあ!僕のです僕の!すみません拾ってもらっちゃって」

「いえいえ」

 

にこっと僕に笑いかけてくる。優しい人だな。そんな笑顔を向けられたのなんて久しぶりだ。きっと周りのいろんな人から好かれていて、課題もサークルもバイトもいい感じにやれてて、人生楽しい!!みたいな、羨ましい。前世でどんな徳をつんだらそうなれるんだろう。僕とは正反対だ。

 

「何学部?」

 

はっとして話しかけられ続けていたことやっと気づいた。すぐさま思考の旅から戻って答える。まさかまだ続いていたとは。

 

「え!?俺と一緒じゃん!!」

まじかよ、もっと聞けば学科も一緒だっていうじゃないか。まじかよ。なんで僕この人のこと知らなかったんだ?誰とも話さないのはともかく、同じ学科の人の顔くらいほとんど把握していると思ってたのに。

 

「まじかよーっ!俺、話したことなくても同じ学科の人の顔くらいだいたい把握してると思ったのに、知らなかったよ、うわーなんか悔しいな」

いや、そりゃそうだろうね…、こっちは誰とも話すことなくひっそり生きてるんだから。そんな僕と正反対のあなたが僕のこと知ってるわけないじゃないか。というか僕と同じような思考しないでくれ。

 

「っていうのは冗談で」

 

は?

「俺、知ってるよ、あなたのこと。いつも泣きそうな顔して授業うけてるでしょ。なんでだろうなってずっと思ってた。お昼食べるときも、キャンパス内を歩いているときも。そんな泣きそうな顔してたら誰だって気になるよ。

ねえ、なんでそんな顔してるの?」

 

 

びくっとしてベッドから飛び起きた。なんだ、夢か……。にしても妙にリアルだったな。変なこと聞いていきやがったし。でも誰だあの人、見たことない。なんであの人が出てきたんだ。誰だあの人。

 

「あのー、これあなたの?」

 

びくっとした。起きた時と同じ感覚だ。どこかで聞いたことある言葉、どこかで聞いたことある声。顔を上げると、どこかで見たことがある顔。

なんだこれ、夢か?さっき見たのと同じ夢をまた見てるのか?え、どうなってんのこれ。

 

「お、おはよう」

 

でも、また会えたことが嬉しくて。もう夢でも何でもいいからとりあえずは挨拶を。多分これ、返事としては間違えてるけど。

見たな。/妄想/三水

例えば、シャワーを浴びているとき。
寝坊して、身支度もそこそこに家を飛び出たとき。
あられもない格好で、寝っころがったり、くつろいでいるとき。
ちょっと人目を憚るような、サイトや本を捲っているとき。

ふいに、そいつは訪れる。

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【Case.1 羽虫の目】

唐突に悪寒がして振り返る。
背面の扉はきっちり締まり、横の窓には分厚いカーテンが掛かっている。
何度確かめようと同じ、文字通り一分の隙もない景色がそこにあった。

自室は三階にあるし、二つある窓からはそれぞれ、私道を挟んだ背の高い建物(正確には室内墓地。当然人はあまり来ない)と隣家の壁しか見えない。
もうずっとそうだし、これからもそうだろうと漠然と思っている。
墓地ほど永久を感じるものはないし、揃いで建てられた隣家が取り壊される時には、きっとこの部屋もないだろう。

それなのに、いつからか、触れるほど確かに、何かの視線を感じている時がある。

部屋だけではなかった。
ふとした瞬間、リビングの窓から、風呂の換気扇から、時にはカーテンのわずかな隙間からさえも、なんとも言えない不気味な存在感を覚えることがある。

自意識過剰、それはわかっている。
そう笑い飛ばしてもらうために招いた友人は目の前の建物を指して
「ホントになんかいるんじゃない?」
と言った。
かわいらしいことだ。死して後あれだけの手間と費用をかけてもらっておいてなお、こんな小娘にちょっかいをかけるとは思えない。

現代のピラミッドに見守られながら、玄関のポーチの、半ば野生化したローズマリーを適当に間引きする。日毎蒸し暑くなる今時分には、放っておくと見る間に伸びて、そのうち隣家を侵食したり、何かと手がつけられなくなってしまう。
花鋏なんて洒落たものはないから、使い古して、赤錆びて、もはや本来の用途では使えなくなった裁ち鋏でざくざくと、容赦なく作業する。
そんなときは、背後からも、どこからも、あの不快な視線は感じない。

けれど家の内側に踏み込んだ瞬間、扉を閉めるその隙間に突き刺さるように、そいつの目はじっと、こちらをねめつけてくるのだ。

幽霊とか、そういう形而上的な怖さは微塵も感じていなかった。
もっと物質的な、生理的な、グロテスクな、
何を思ってるかも知れない、それ自体が堪らなく恐ろしかった。

いくら気のせいと思っても、日に日に質量を増していくソレにとうとう耐えきれずに、ある日思いきってカーテンを開けた。
抑え込まれていた光が一斉に目を刺して、思わず顔を背ける。
薄目で見た向こうには当然、のっぺりとした、いつもの風景がある。
墓石そのもののような、コンクリート色の四角い建物。
生き物の視界を遮ってくれる優しい無機物に勇気をもらって、数年ぶりに窓を開け、首だけを表にそうっと出してみる。

と、唐突に一点の黒い小さな塊が、頬を掠めて飛んできた。

何も考える間もなくその場に突っ伏す。頭上で支えのなくなったカーテンが、派手な音をたてて落ち切って、後ろ髪を浮かした。
 
それきり部屋は、普段の暗さと静けさを取り戻す。

小さく何かの音が響いて、上げかけた頭をまた抱えた。
不愉快な音。まるで羽虫のような。
時折かつかつと、堅い何かがぶつかるような音もする。ますますもって、羽虫のようだ。
あのいやらしい、気味の悪い、得たいの知れない小さな生き物。

風がカーテンを膨らませて、その隙間から光がもれる。

これではいけないと、踞ったままにじり寄って、指だけで窓を閉めようとする。と、一際大きく、外の景色が膨らんだ。

その中に私は、ようやく、自分を脅かしていたものの顔を見た。
はっきりと、形を取って…… それはヒトの形をしていたが…… とても人の道理が通じるものとは思えなかった。

音が立つほど思いきり窓を閉めて、鍵をかけ、一目散に部屋の奥へと逃げ込む。
今まで妄想だ、幻覚だと言い聞かせてきた悪夢が、現実になってしまった。

もう何も見たくない、聞きたくない、見られたくない。
なるべく体を小さくして、呼吸の続く限りごめんなさいと、何に何を謝っているかも定かでないまま呟き続ける。

このまま夢落ちや気絶なんかで状況が変わってくれればよかったのだけど、現実は現実だった。

牧歌的なチャイムの音が、空気を通して部屋に押し入ってくる。

背筋の凍るような、まさにそれ以外いいようもない感覚の中で、頭の中だけは別の生き物のように回り始めた。

相手の正体や思惑など既にどうでもよく、ただひたすら、どうすれば、この状況を打破できるのか、
それだけを考えて、考えて、考えて。

二度目のチャイムが聞こえた時、答えはもう出ていた。

「あ、どうもーーー」

今ここで終わらせなくては、私は一生、この理不尽に脅かされることになる。
ありふれた裁縫鋏をかざして、私は真っ先に、総ての元凶たるその両眼を

『ーー神奈川県横浜市の女子大生が、自宅で訪問販売員を刺したという事件でーー』

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やつらはふいに、そこに現れる。
確かに存在して、日常の隙間から、じっと、こちらを見つめているのだ。

数学を教える私/妄想/猫背脱却物語

ある人の夢で、私は知り合いを集め数学を教えていた、らしい。

 夢に私が出てきた。相手がどうであれ、そう言う話になるとドキッとする。「へえ、なになに?」とそのドキッを悟られないように詳しく尋ねてしまう。別に大した話ではないのに異様に食いついてしまい、結局相手もおぼろげにしか覚えていない夢の中の自分の様子を聞く。で、大抵そういう時私は大したことしていない。

 なんでドキッとするのかといえば、人の夢という、自分のあずかり知らぬ場所で自分が何かをしていた、ということが怖いのである。何せ自分の所有者である私が知らないで、周りしか知らない自分がいるという状態には違和感を感じる。「誰かの夢の中で」というお触れ書きがあったとしても「この前数学レクチャーしてましたよね?」なんて自覚ない行動を指摘されたら焦る。飲み会で記憶をすっ飛ばすほど飲むことができないのだが、多分それに近いのかもしれない。

 その感覚がそもそも「怖い」であっているのか。むしろ「自分のことは自分がよくわかってるんだよ」「みんな本当のオレのことなんて分かりっこないんだよ」みたいな、軋むベッドの上で盗んだバイクが支配から卒業しそうな反骨的な気持ちの裏返しの防衛本能としてドキッとしているのかもしれない。他人が語る私は、あたりまえだけど他人の目を通して見ている姿であって、自分が考えている自分の姿とは違う。その誤差自体にはいいか悪いかではなく、自覚している自己と周りから見た自己が「違う」或いは「どうやら違いそう」という、ズレがあること自体が個人的に認められないのだ。他でもない自分なのだから、周りの視線で定義されるのはなぁ。主人公だけど所詮作者に描かれるキャラクターに過ぎない、みたいな感じがして気味が悪い。

 数学をレクチャーするという、そこそこリアルな夢だからこんなビミョーな問題になるのだ。それならもっとイカしたぶっ飛び方をしてほしい。「メジャーリーガーになってましたよ」とか「広瀬すずと付き合ってましたよ」とか「飛行石と共に空から降ってきてなんやかんやあってバルスしてましたよ」とか誇大妄想されている分にはいい。自分の思う自分の姿と離れすぎていれば、遠すぎてズレ云々感じさえしない。フィクションのキャストを埋めるに偶々起用されただけだろうって。

 夢オチが漫画でタブー視されるように、夢は妄想の場として大いに活躍するフィールドで、なんでもありなはずだ。そもそも妄想はぶっ飛んでるからこそ妄想になるのであって「数学を教える私」のようなリアルな妄想は、妄想の意義とリアリティという点であんまり意味がないような気がする。

 それが妄想だと分かっていても楽しむことができる「妄想的な妄想」には需要がある。二十歳そこらのイケメン俳優と美人女優の出る学園ラブコメが常に映画館でやってることから、それはなんとなく分かる。現実なのにリアリティが欠如している、「妄想的な現実」にも需要がある。”幻想的〜”っていいながら、ウユニ塩湖みたいなウィンドウズのデスクトップにありそうな風景を見に行く女子大生が後を絶たないのってそういうことだろう。

 他方、「現実的な幻想」には需要はあるのかと考えると、そりゃ現実チックがいいなら実際生きてればいいだろうという話になってくる。「現実的な現実」なんて言わずもがな。でも一定数現実的な理想話ってある。ただ「安定した結婚生活がいい」「やっぱり我が家が一番」みたいな「現実的な幻想」は、結局のところ、んな容易に平和な家庭は持てないという結論に至る。現実的な幻想より現実は厳しいのだ。

 とすれば、ごくまれに見る、すげえリアルだけどリアルなだけな夢も、実は何かの妄想だったのか。私の夢を見た彼奴は、「人文に属している私が数学を教えているだって!?」ということに妄想すべき価値を見出していたのか。なんじゃそれ。

 そんなことを考えた夜見た夢も、大したことはなかった。大入り袋の柿の種をあけてばらまく夢。これも何か、大事な妄想なのか…?変な気分で起きたら、床に柿の種が散らばっていた。現実だった。

転生願望/妄想/Gioru

嫌なことがあった時、悲しいことがあった時、辛いことがあった時、上手くいかないなぁ、と思った時など、とにかく自分に都合の悪い時(そうじゃない時もあるけど)、よく思うのだ。

 

記憶を持ったまま転生できたらなぁって。

よく小説に出てくるあれである。

 

記憶をもったまま、っていう所がポイントだ。そうじゃなければ転生した意味がない。今までやってきた記憶があれば同じような間違いをしない……かもしれない。今までより上手くやりたい、っていうのが大事なんじゃないかな。

 

転生先の世界はアニメや漫画のような世界なら、それはそれで楽しいかもしれない。ファンタジーの世界であれば不思議な力を持てるかもしれない。そういうのがない世界でも原作キャラクターと関われるような世界なら、それだけでも自分の好きな作品なら大歓迎である。まぁ、主人公の近くで問題が起こりまくるのは、作品の都合上仕方のないことで、そこに居合わせるのは、面倒を通り越して苦痛になるかもしれないけど。

そんなデメリットを通り越しても、アニメや漫画の世界の主役たちは大概にして完璧超人たち(あるいはそれに類する何かを持っている)人たちである。可愛い女の子たちといっしょに生活できたりなんかできたら、眼福である。仲良くできるのなら、もう最高だ。普段笑わないようなあの子が目の前で笑ってくれたりしたらたまったもんじゃない。

 

ん? 今のお前がそのまま転生したなら、そんなことはあり得ないって? そんなことはないさ! きっと頑張れる、そうに違いない! たぶん。 うん、たぶん。

 

そういう不思議な世界に転生しなくても、それこそ自分の小さい頃に戻ったとしても、それはそれでアリだと思う。今の自分からしてみれば、昔の自分はなんてもったいないことをしていたんだ、と思う場面がいくらもある。今でさえコミュ障なのである(自認)、昔は本当に狭いコミュニティーの中で暮らしていたように思う。時間は一杯あったはずなのに、そこで自分は一体何をしていたのか。あまり覚えていないけど、嫌々やっていたことも多いような気がする。本気で取り組めば、楽しくなりそうなことはいくらでもあったのに。和太鼓であったり勉強であったり、スポーツであったり。どれも嫌々だった。

一体小さい頃の自分は何が好きだったんだ? あぁ、ゲームしてた気がする。今と変わんないや。

もっと頑張れよ、昔の自分! その時のうちにたくさんの女の子と仲良くなってたら、今頃どうなってたか分からんぞ! 男女の垣根がそれほどない時間なんて、小学生の低学年までなんだからな。おい、そこの俺。寝ながらポテチ食べてるんじゃない。ただでさえ太っているお前がもっと太るぞ。あれ、結局女の子と仲良くなりたいのかな? スポーツできれば色々アピールできるし勉強も同じ。和太鼓は別枠。今の自分は、純粋に音楽系は大好きだし。

 

それなら今を頑張ればいいのかもしれない。けど上手くなんていかないことの方が多いしね。やってられない時も多い。

妄想の中だったら、ああすればこうなるかも、というifの連続である。悪い方向に行っちゃったらまたifを増やせばいい。いくらでも可能性広がるし。

 

うん、妄想最高である。さぁ、妄想の中の俺。今ここにいる俺を強くしてくれ! それか転生させて!

ぇ?

妄想だから無理だって? うん、知ってた。