「批評」カテゴリーアーカイブ

独善的/書評/シュウ

何の本でもそうだが、この本は特に読者を選ぶナと感じさせた。本書の中でも出てきた、不仲な家族や、子供との関係で悩んでいる親、とりわけ息子との関係に悩む母親には、独善的な著者の物言いは、自分の進む道を指示してくれる、まるで神の啓示であるのようにとることができるだろう。家族の悩みを抱える人にとっては本書は悩みを救うバイブルとなりうるのではないだろうか。

「家族という病」というから、どれほどのものかと身構えてしまったが、取り上げられていることは、よく言われているようなこと(「遺産で家族はこじれる」、「あの人は、身内の話ばかりで面白くない」etc)と、著者の世の傾向に対する主張ばかりであった。拍子抜けした。著者の家族観は、「家族それぞれは家族とは言っても独立した一個人であるのだから、家族というくくりで括られてしまうと、生きにくくなってしまうので、ぶつかるときもあるだろうけど、それは当たり前で、それぞれ好きに生きてなさい」というのだったが、家族とはそんなに割り切ってしまっていいのであろうか。竹を真二つに割るくらいの勢いの良さである。もっとも筆者に言わせると、こうやって家族を大切に考えることこそ「病」にかかっているのだろう。

僕は僕が生きてきた家庭しか知らないし、僕の家族はやたら個人のプライバシーを意識するなと感じるときはあるけれど、僕からしたら、うまくいっている家族だと思う。そんな一般的な家族をばっさりと切り捨てる筆者の主張は爽快ではあるが、いい気分はしない。筆者の子供のころの戦後の民主化から右傾化していく中の父親との関わりから、家族に対する不信の念が生まれてきたのではないかと邪推してしまう。家庭崩壊から得た教訓は、同じく家庭がうまくいっていない人に対しては、救いの一手となるのだろう。そうでない僕ら若い世代には強すぎて押し付けがましい。

読んで何も得ないわけではなかった。「家族のことを本当は知らない」と言われてみてば、確かにそうかなと考えるきっかけになったものも、それだけだった。あまりこういう言い方はしたくはないが、「老人の老人による老人のための」説教本。その域を出ない。家族の話をする人はつまらないと言っていたが、なるほどこの本もつまらないわけだ。彼女の家族の話ばかりであったし。