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散骨宣言~願望~/遺書(曲)/ととのえ

俺があの世に飛び立つ前に 話しておきたい事がある

かなりきびしい話もするが  俺の想いを聞いておけ

俺を忘れて楽しむはだめ 俺を憶えて悲しむもだめ

墓は物で満たせ いつも笑顔で会え  出来る範囲で 構わないから

忘れてくれるな もう仕事もできない俺だが 死ぬ気で頑張ったんだよ その恩に 報いろよ

お前だけお前にだけ できる事しかないけど 俺のこと忘れずに 常々俺を見守れよ

 

男と結び 子が生まれても 俺より愛を 注ぎはするな

どれだけ他人を 好きになったとしても 俺をより愛せ 少しだけでも

何もいらない 俺の墓を撫で 思いに耽り 愛を注いでくれ

お前のお陰で いい人生だったと 俺には言える 何時でも言えるさ

忘れてくれるな 俺の愛せる女は 愛せる女は 生涯お前ひとり

忘れてくれるな 俺の愛せる女は 愛せる女は 生涯お前ただひとり

 

元ネタ

 

 

儚いプリン/遺書/なべしま

ポムポムプリン…サンリオの有名なキャラクター


遺書というものについて書けというので一考、そういえばと思いついたのはポムポムプリンであった。遺すものとしてこれはどうかと思わないでもないが、最後である、与太話も許されたい。要は誰か賛同する者がいるかどうかなのだ。
私はポムポムプリンを見ると苦しくなってくる。


古典には諸行無常という言葉があるが、強いていうならばポムポムプリンはこれに似ている。だがポムポムプリンはそのような快い広大な世界ではない。
諸行無常というのは、季節の移り変わりのようなものであろう。花が萌え、雪が降り、そして呆気なくそれらが移り変わるのは淋しいものだ。だがそうした過程は過ぎ去るのみでなく、巨大な輪廻の輪の中にある。それは人のものでなく、世界の理だ。


だがポムポムプリンは違う。
奴は人の身において、人の領分で、そうした滅びゆくものをまざまざと見せつけてくるのだ。ただ今ある一瞬のみを切り取るために、この一瞬が意味するものは滅びしかない。後世に残るものではなく、ただ単に過ぎ去るのみである今の時間を残酷にも突きつける。その滅びとは、私の若さであり、財産であり、毎日を重ねる中で当たり前にように存在し、失くなるということを意識しないものだ。意識昏睡に陥り、50年後に目が覚める感覚が近いだろうか。心臓が締め付けられるようだ。この感覚は、相手を愛するあまり壊してしまいそうな感覚とはまるで違う。こっちが死にそうなのである。


勘違いしないでほしいのだが、私はポムポムプリンのことが好きなのだ。愛らしいむちむちと太ったフォルムに、実は犬であるという驚き。抱きしめたい。離れた、つぶらな瞳は無垢な印象を受ける。
愛おしい。だがその可愛らしさは虚しさと表裏一体なのである。


なぜこのような感情を抱くのか、その理由としては、失われた子供時代、黄金時代を思い起こさせるためかもしれない。喪失感がポムポムプリンの根底にあるのだろう。
余りに単純すぎる答えかもしれない。だがオッカムの剃刀よろしく、意外と答えはそんなものかもしれない。


こんな考えを一人で抱え込んでいたが、心当たりのあれば是非ともお聞かせ願いたい。身近にいる無邪気なキャラクター、奴らは何かを訴えかけてはこないだろうか。

書こうとしたけど/遺書/waku

さっきまでノリノリで手書きの遺書を書いて、封筒に入れるところまでやろうと思っていたのに、いざ書こうとすると怖いですね。遺書を書くことで本当に死んでしまうような気がしてくるし、もしほんとに死んでしまって親に見つかりでもしたら私が病んでたみたいに思われそうで、書くのをためらってしまいます。親に怒られた後に、嫌われてるんだと思って、死んだら少しは悲しんでくれるかなとか思ったりしたこともあったくせに何言ってるんだこいつって自分で思います。でもまあこれだけ前置きがあれば親も勘違いはしないだろうから、せっかくの機会だし伝えたいことだけは書いておきましょう。

 

黄色いファイルの中は絶対に見ないでそのまま捨ててください。ほんとのほんとに見ないでよ。

葬式には彼氏とサークル関係の人とバスケ関係の人を呼んでください。(あれ?常に部活関係しか深くかかわってる友達がいないぞ??)

お父さんとお母さんともえとロビンと家族でほんとによかったです。お金かかるのに下宿もさせてくれて感謝してます。大好き。ありがとう。

 

こんなもんか?案外伝えたいこと少なかったです。薄っぺらい人生しか生きてないからかな?まだまだ死にたくないです。すべて(レポートとかテストとかレポートとか)から逃げ出したいと思うことはあるけれど、死んだらすべてから逃げ出せるけれど、死ぬのは嫌だなとすごく感じました。

夢の棺がめらめらバーニング/遺書/ノルニル

◆クランク・イン

     野菜はハリがあるものを、お肉は汁が出ていないものを。家庭科で習う、あたりまえの常識。そんなルールに歯向かうのが、近ごろ全わたしの間でちょっとしたブームだ。
     たとえばさっき仕事帰りに買った牛乳の紙パック、棚の奥を検めましたところ消費期限が二日ほど長いものが隠れてござった。でもそこであえて短いほうを選ぶ。余ったらオムレツに混ぜて火を通せばいいか、なんて考えながら、小ぶりで傷んだトマトのパックに手を伸ばす。

     見栄えも品質も、どうでもよかった。どうせ帰っても誰にみせるわけでもない。なにより、わたしが買わないことで売れ残り、捨てられてしまうかもしれない野菜やお肉、魚がなんだかかわいそうで、見ていられなかったのだ。

◆タングステン・デイライト

「やる人がいないならやるよ。私暇だし」
「まじ、助かる!いやあ、宮辻ちゃんいつもありがとね!」

     さっきまで人事部長についての愚痴で固まっていた莉央の表情がぱあっと明るくなった。浪人と留学で2年ほど年上だからか、同期のはずなのに何かと上からプレッシャーで押さえつけてくる。きょうだって結局のところ、仕事を体良く押し付けられた形だ。「もし宮辻ちゃんが困った時は任せてね」、それ何度目ですか?
     でも慣れとは恐ろしいもので、今では少しも心が動かない。もしかしたら、きょうはお店に行こうと決めていたから特に気が滅入らなかったのかも。なんにせよ諦めが肝心だと、年をとるごといやおうなしに実感させられている。

     退社する途中、ひとりデスクに向かう同期の鴻原くんを見かけた。どうやらまたお残りさせられているみたいだ。「おつかれ」と声だけかけて、返事を待たずにそのまま足を前へ運ぶ。エレベーターのドアが閉まる寸前でようやくおつかれ、と遠慮がちな山びこが肩にぶつかった。

◆クローム・ミッドナイト

     くらくらするほどに甘い香の薫りが脳を刺激する。落ち着いた内装に、グロテスクな調度品。例えようもなく異様なはずの空間は不思議と居心地がよくて、サトミ店長の趣味はわたしに合っている。その旨を伝えると店長は大きな目をさらに見開いて、それは結構、と大声をあげて、それから早口で続けた。

「お客さんにはコレを用意しておきました。なんでも、家出してきた女の子がしまっていったブツでして。若いほど感情の鮮度も高いと言いますし、オススメです」

     「いやなことを忘れさせてくれる店がある」、そんな噂がこの街ではまことしやかに囁かれていた。最初は全く興味を持てなかったが、あるとき閃いたのだ。すなわち、忘れさせることができれば逆に植え付けることもできるのでは、ということ。
     そうしてこの店を突き止め、月に数度ほど通うようになってしばらくになる。名前も意味もなくした記憶、忘れてしまいたいほどに辛い悲しみや苦しみは凝り固まったわたしの心を動かしてくれ、次第により強い刺激を求めるようになった。何にだって振り回されないほど揺るぎない、そんな絶対的な感情がほしかった。
     結局、まるでDVDでも借りるように家出少女の記憶を手に入れて、わたしは家に帰ることにした。

◆フェード・アウト

     危うい蜘蛛の糸に縋りながらの生活、当然転機は急に訪れた。自分の感情の在り処がはっきりしない。きっと悪いものでも食べたのだ。原因はわかっている、この間買った若い男性の記憶だ。それは夢を失う痛みを人形に託したものだった。自分をしっかり持ち、他人を幸せにする正義の味方になる。そんな希望に満ちた夢は、やがて現実と直面し、毒となってその身を蝕んだ。
     他人の夢を食べて生きながらえる、バクのような魔物になったわたしは、その毒をそのまま受けてしまった。なにより、この人が抱えていた痛みがわたし自身にも染み渡って、どうしてかと理由を考えたけど、きっとこれはわたしの夢だった。わたしがなくした夢だった。

     もしもこの身が他人の感情の容れ物なら、「わたし」なんていなければいい。もう無理だと悟ったその日、わたしはわたしの感情をしまった。サトミ店長の術式によって薄れゆく意識のなかで、ふと記憶の持ち主を身近に感じ、そしてわたしは、夢を追いかける痛みを失った。

◆レンズ・フレア

     きょうも会社でミスをした。莉央はなにやってんの、と言いながら残業に付き合ってくれた。申し訳ないけど、感謝の気持ちでいっぱいだ。きょうはお酒でも買って、明日お礼を言おう。そう思いスーパーに立ち寄ると、目の前でおじさんが缶チューハイを取り落とした。
     おじさんは潰れた飲み口をじっと見つめると、元あった棚に缶を戻した。同じ棚から代わりのチューハイを持って立ち去るおじさんの背中を見ながらわたしは迷う。なぜ迷うのか、何に対して迷っているのか、自分でもわからなかった。するとそこへくたびれたスーツの男の人がやってくるとへこんだ缶をつかんで、

「あ、」

     鴻原くんだった。彼はすこし驚いた顔を見せて、宮辻さんおつかれ、というとすこし寂しそうに笑った。

「あー、この缶?いや、なんかさ、このまま俺が買わなかったらこれ売れないままかもなーって。そう思ったらなんかかわいそうになっちゃって」

     なにか、大切にしていたはずのものを思い出せるような気がした。どこかから、もう自分のために戦えないから人のために生きるよと、そんな声が聞こえた。

◆リ・テイク

     夢をみた。誰のものかわからない、でもきっと自分のものではない宝物を、ずっと大事そうに抱えてわたしはひとり立っている。時が経ち、宝物はきんいろの砂になって、指の間からこぼれていく。なくすまいと必死になるけれど、みんなまっくらな底に落ちて、みえなくなってしまった。
     涙がとまらなかった。自分のものなら諦めもついた、でも違ったのだ。誰かからもらった大切なものだった。やがてどろり、となにかが落ちる音がした。それはきっと、わたしの目玉が溶け出したのにちがいなかった。

◆クランク・アップ

     わたしも鴻原くんも、きょうも今日とて残業だ。なにか変わったことがあるとすれば、お互い「おつかれ」に加えて、一言二言、三言ぐらい交わす言葉が増えたことだろうか。ふと思い立って、聞いてみた。

「鴻原くんはさ、なんか夢とかあるの?」
「ん?強いて言えば、まあ、人に認められたい、とかはあるかも。でも微妙」
「えっとね、君の本当の夢。わたし、知ってるよ」

     これでいい。もし誰かが夢を棺にしまうというのなら、いっそのこと火葬してしまえ。終わりぐらいは派手にいこうぜ、燃やせ、燃やせ。ちゃんとお別れができるように。そしてもし奇跡が起こったら、いつかまた会えるように。わたしはその輝きを、ずっと待っている。

すずめちゃんが死ぬことになったら/遺書/やきさば

遺書って書いたことないから、どうすればいいかわかんないです。はは。なんか恥ずかしいというか、こんなことするためにわたし死のうとしてるわけじゃないっていうか。そもそも何も言いたくないから、何も残したくないから、投げ出そうとしてるわけで、死のうとしてるわけで、そんな状況で言葉綴ろうなんて考えおかしいですよね?

 

 

みぞみぞしてきました。なんで死のうと思ったとかそういうのを書くつもりは全然ないんですけど、みぞみぞしてきました。見下ろすと車がびゅんびゅんびゅんびゅん、まるで滝を落ちていくかのように走ってる、気持ちいいです。ここは風当たりがいい。いつもの牛乳も美味しい。

 

 

人を騙したんです私。ある人から頼まれて、写真を見せられて。そこに映る女の人と友達になってくれって。お金は渡すから、そして最後は裏切ってくれって。私その時お金に困ってたから、怪しかったけどお金受け取りました。そんなことで大金がもらえるならいいかなと思って。それで、その女の人と共同生活を始めました。彼女とはすぐに仲良くなれました。5歳くらい年上の、ヴァイオリン奏者なんですけど、あ、わたしはチェロ奏者で、一緒にコンビ組もうって。楽しいでしょ。すごい声が小さくて、聞き取るのがむずかしいくらいの人なんですけど、いつでもわたしに優しかったです。ショートカットで、年上のくせにチャーミングで、演奏前はいつも不安になるんですけど、弾き始めたらびっくりするくらい美しい演奏をするんです。彼女はわたしが彼女を騙してるなんて1ミリも疑わなかった。すごく音楽性が合って、一緒に演奏にしていて本当に幸せでした。

 

 

やだなぁ、またみぞみぞしてきました。このみぞみぞは嫌です。死にたくなくなってしまう。

 

そういえば好きな人にも気持ち伝えてなかったです。その人はわたしが騙していた彼女のことが好きなんです。そしてわたしはその人にとって別の男性が好きだという設定になってる。だからずっと伝えられなかったんです。その人は表情が顔に出なくて。いつも細い目と細い唇でたくさんしゃべってました。

 

好きだったなぁ。夜2人でコンビニに行ったことがあったんです。寒い寒い冬の夜で。ダウン着て、その下にもいっぱい着込んで。コンビニ行きました。2人で歩いて。彼が行くって言うからついて行きました。はじめは明日の朝ごはんのパンを買うっていう予定だったんですけど、そしたら彼、ベンチで待ってるわたしにアイス買ってきて。え、なんで?こんなに寒いのに?って。聞いたら、冬のアイスっていいじゃないですか、って。僕は好きです、なんて言うから、そんなこと言われたら、わたしも好きです、しか言えなくて。2人で寒い中、コンビニの前の外のベンチで並んで食べました。蓋とか上にかぶさってるビニールとかのゴミを彼は自分の分と一緒に捨てに行ってくれました。だからわたしも食べ終わりのゴミは捨ててあげました。そんな夜でした。それだけでした。でもそのときでした。好きになったのは。

 

 

好きだったなぁ。彼も彼女も。大好きでした。だからごめんなさいをしなくてはいけません。わたしの大好きなこの牛乳、買ってきてくれたとき嬉しかったです。どこでも寝てしまうわたしを、いつも机の下で寝ていたわたしを、起こしてくれるのが嬉しかったです。さようなら。

 

 

 

※「カルテット」というドラマに登場するすずめちゃんという架空の女性がもし遺書を書いたら、という設定でかきました。わからない人はごめんなさい。

[新編]叛逆の物語/遺書/みかん

片翼を失ったのは、これで三度目だった。初めて失ったのは、私がまだ小学生だった頃のことだ。その頃は今とは違って、まだ新人類に対しての差別や排斥が極めて盛んな時期だった。それ故、四歳のころから両の肩に翼が生えてきた私のことを、同じ小学校の同級生やその両親、先生や私の家族でさえも、ひどく忌み嫌い、大きな壁を隔てていた。忌み嫌う、という表現を多少誇張に思うかもしれないが、それは私たち新人類の苦しみを全く理解していないからだろう。私たちは旧人類と比べて、ただ翼が生えていて、ただ高い知能と身体能力を持ち、ただ端麗な容姿をしている、ただそれだけの陳腐な違いで、私たちは嫌われ、疎まれるのだ。新人類という呼び名が気に食わないのであれば、違う名で呼べばいい。私たちだって、好きでこの名で呼ばれている訳ではないし、「新」だと思っている訳でもない。名前はただのラベルに過ぎず、本質とは程遠いのである。しかし、みすぼらしいプライドを持った人たちは、そこに劣等感を覚えるのか、とにかく私たちを排斥しようとしていたのだ。

このような風潮の中、雪が降っていたある日、私はある男子生徒に片翼をもがれた。その日は体育でサッカーを行う筈だったのだが、雪の影響で急遽体育館でバスケットボールをやることになった。試合中、背後から急に私は蹴り飛ばされ、うつ伏せに倒れた。そして痛がる暇もなく、私は片翼をもがれたのだ。もがれた後のことは正直あまり覚えていない。ただ、背中を走り回る激痛と、クラスメイトの甲高い笑い声だけは、はっきりと覚えている。何故こんなことが起きたのか。当時の私は、沢山点を決めたことが周りを苛立たせてしまったからだと考えていた。しかし、今になってみると、ある程度計画的なものだったのかもしれない。客観的な証拠があるわけではないが、準備運動の段階でクラスメイトたちは妙にニヤニヤしながら私のことを見ていたのだ。

この事件については、一度は学校で問題になったが、被害者が新人類ということで無理矢理もみ消されてしまった。両親もあまり大事にしたくないのか、警察には届は出さなかった。その頃から、私は手放しに人間を信用しなくなった。人間というものは余りにも下劣な憎悪で汚れいている生き物だと私は悟ったのだ。

二度目は大学生の時だ。丁度新人類基本法が制定された頃で、新人類は世間に認められ始めた頃だった。当初は私も、この素早い掌返しに嫌悪を感じたが、生活しやすくなったという面においては確かだったので、すぐにその嫌悪は消え去った。

片翼を引きちぎったのは私の恋人だった。同じ研究室に所属していた彼女は、人当たりが良く、とても優しい女性だった。そして、何より彼女は私と同じ新人類だったのだ。新人類として痛みを共有できる彼女に、私は一瞬で恋に落ちた。その頃の私の幸福といったら途轍もないものだった。ずっと孤独に生きてきた私にやっと寄る辺ができたのだ。私は彼女以外の他に何もいらなかった。彼女さえいてくれればいいと本当にそう思っていた。

しかし、ある冬の日に、その祈りはいとも簡単に崩れ落ちた。本当はその日、私は彼女と旅行に行く予定だったのだが、生憎外は雪が降っていて、仕方なく私の家でゆっくり映画を見ることになった。あの時、途中で寝てしまったのがいけなかった。彼女は私が寝ている中、あっさりと翼を引きちぎり、どこかへ去ってしまったのだ。

痛みで私は気絶してしまい、目覚めると病院のベッドにいた。彼女が翼を引きちぎった理由を探すのは容易だった。新人類の翼は高値で売買されていて、翼目当ての新人類への暴行事件はよくある話だったのだ。

私は悲しみに暮れた。やっと孤独でなくなったと思ったら、それはただの幻だったのだ。なら、最初からずっと孤独でいたかった。何も失いたくないから、何も求めなかったのに、気が付けば全てを喪失していた。悲哀は雪のように積り、私の身体を冷やしていく。もう、私には限界だった。

そして、大人になった私は今しがた片翼をもがれた。もいだのは、私自身だった。これは、世界に対するささやかな叛逆である。片翼を失った私は、規則が支配するこの世界で異質な存在になる。シンメトリーは崩壊した。私は、私自身を不条理として、この世界における身振りの断面に差し込んだのだ。私にはもう怖い物などない。世界の法則は既に壊れている。私は、身体から分離して段々と壊死していく片翼に血の涙をやって、赤黒い彼岸花を咲かした。そして、空中に落とした。花は世界を嘲笑うように空を昇っていく。これでいい。これこそが私だけの癒しだ。もう充分だ。そろそろ死のう。この遺書を見つけた人は、どうかお願いだから、誰にも見せずに、ひっそりと燃やしてほしい。私の最後の言葉を、灰にしてほしい。このくらい、許しておくれよ。

雪の夢/ぜんぶ雪のせいだ/ねおき

 
初雪が降った夜

しんしんと雪は降り積もり
あたり一面真白になった
 
 
 
ぼてっとした大きい雪の粒
こんなに降った雪に嬉しくなって
早くに目が覚めた朝
僕は厚いコート着込んで
外へ出た
 
 
 
 
頭の上には
青く澄んだ空が広がっていて
凛とした空気が心地よかった
 
大きく息を吸い込んだ
 
 
 
 
 
 
ふと 白銀の世界のなか
僕は君を見つけた
君に出会った
 
 
 
朝の光を反射する
真白な雪は
君を照らすために
あるようだった
幻想的な世界のなかで
ふわふわの雪に触れて
無邪気に笑い喜ぶ君は
妖精のようで
とても眩しかった
儚げで 夢のような光景だった
 
 
君と出会ったあとの僕は
あの澄んだ空のように
ただまっすぐ 素直で
初めて誰かを愛せた
 
 
 
 
 
だけど
 
 
始まりがあれば
終わりは必ずくるもので
早すぎる終わりは僕らにも訪れた
 
 
 
 
冬が終わる少し前
君はいなくなってしまった
僕は空っぽな気持ちを抱えたまま
春を迎えたんだ
 
 
 
 
 
あの日君に出会ってしまった
冬が 雪が 僕らを出会わせた
こんな想いを
知ってしまった
 
 
 
 
どうしようもなく君に会いたい
 
 
 
 
ああ、ぜんぶ雪のせいだ
 
 

これを書くためにあえて提出遅らせました(嘘)/ぜんぶ雪のせいだ。/オレオ

あ、そういえば何も書いてない。って締め切りもう過ぎてるじゃん!!!

 

大体決まって最初の投稿になってしまうのには理由がある。単純に早めに課題をやっておかないと忘れてしまうからである。帰ってその日にはパソコンでとりあえずWordファイルを開いてテーマを書いて保存しとく、そうすればパソコンを開く度にそのテーマが書かれたWordファイルが目に映る訳で、絶対に忘れることがないということだ。

 

今回はそれを怠った。というよりその作業すらし忘れた。そう、これはすべて雪のせいである。去年に一度だけ雪が降った。その日からすでに私が課題をやり忘れることになる伏線は張られていたのだ。

 

雪が積もるほど降り続けた冬の日、私は行くはずだったインターンの選考会をサボった。もしかするとインターンがその日決まっていたかも知れない、しかし、私は行かなかった。行かなかったことによって冬にやるはずだったインターンに行かぬまま時は過ぎた。これはヤバイと思い、必至にインターン活を積極的に行った甲斐あり、つい最近インターンの面接にまでこじつけた。その後、面接の結果が届き一次は無事に通過したのだが、最終面接の前にSPIの試験を受けて欲しいと言われた。それがつい1週間前、そう、ちょうどスタジオがある日の前後だった。その日の週末は友人の誕生会があってそのまま泊まったり、会社を紹介してくれた知人と食事に行ったりと、割とやることが多く課題に頭を割く余裕など微塵も無かった。

 

その後も、期末レポートなどに追われ、他の課題には時間を割かれていたのだが、如何せん冒頭に書いたようにWordファイルを作っていなかったため、スタジオの課題など頭に無かった。そして先ほど、シャワーを浴びながら明日の授業のことを考えているとあら不思議。スタジオやん。そいやスタジオの課題やってないやん。という具合。

 

これはどう考えても雪のせいだよね?

じんましん/ぜんぶ雪のせいだ/フチ子

「赤くなってる」
「あ、ほんとだ」

じんましんに悩まされたのはいつからだろうか。たしか、すごくすごく寒くて、しもやけになるくらいに、足先が冷たかったあのとき。

もういいや、と思えた、あの日。

こんな無意味で、搾取されるだけの関係やめたい、この日常から救い出してくれる人いないかな、たらたらと考え続けていた。年齢だけが進んでいって、自分の価値がただただ下落する。この人よりもいい人なんて、沢山いる、いたはずだ。

たいした快楽もない。本当に相性がいいの、私もこの人じゃないと満足できないから、仕方ないのよね、と友達には説明しているけれど、ちがう。虚しさと、期待を持ちながらのセックスなんて汚い。気持ち良いとさえ思えないならば、自分が惨めで、耐えられない。

3年間。お相手には彼女ができたり別れたりしていた。その過程を私はぜんぶ、知っている。それは脈ありだとか、脈なしだとかそんな話をしていた。別れるたびに、次こそは私かと期待をしなかったわけではなかったけれど、そのたびに丁寧に期待をへし折ってくれた。「真紀とはこのままがいいね、居心地が最高」そうやって私の元に甘えられると、もうだめだった。

「真紀はいい人いないの」
「さあ、いたり、いなかったり」

勘違いさせないために、一定の距離を取るために、律儀にこの質問を繰り返す。いてもいなくても彼にとって私は重荷だ。いたらいたで、彼から私が離れたら離れたで、彼は責任を負わなくてもいい楽ちんな女を失うし、いなかったらいなかったで、罪悪感を覚える、存在が重たい。どちらとも取れないような返答で濁すことで、この関係性に責任を取らずに続行可能の許可を出す。

寒かったのだ。凍える足を温めたかったのだ。しもやけの足で、一人だけの家に帰りたくなかったのだ。

「ぷっくりしてる、痒いの?」
「ちょっとだけね、薬を飲めば治る」

本当は、すごく痒い。あの日のじんましんは慢性で、毎日薬を飲んで抑えている。少しでも油断して、薬を飲み忘れたら、途端に痒くなって、赤くなって、悲鳴をあげる。油断してはだめだ、治ってると勘違いして、飲み忘れてはだめだ、ポツポツと赤く膨れ上がって、なおさらに醜く、汚い自分になってしまう。

「あ、薬の殻、持ち帰ってね」

わかってる。証拠隠滅も、何年やってると思ってるの。一度だってミス、したことがないでしょう。ミスしなかったらあなたのそばに居られるのだから、ミスするはずが、ないでしょう。